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追放後
損得
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モンスターホームの宝物を取り尽くし、ついでに遭難していた冒険者達の救助を終えたゴウキ達は今度こそダンジョンから出ることに決めた。
「あの、すみませんがどうかよろしくお願いします・・・」
モンスターホームですっかり怯え切ってしまったのか、戦う気力を無くしゴウキ達頼みの冒険者達が頭を下げる。
「気にするな」
そう口にして、ゴウキはハッとした。
今、自分は自然にこれを口にしていたのか?と。
ダンジョンの遭難者を救助すること自体は、ゴウキが勇者パーティーにいたときにもしばしば似たようなことはあったので、慣れているといえば慣れていることであった。ダンジョンアタックをするのは勇者パーティーだけではない。力ある者が潜れば、力の及ばぬ者が潜ることもあるのだ。
だが基本的には力の及ばぬ者が遭難した時、そこに出くわした半数以上の他冒険者はそれを救ってはくれないという。
何故なら大多数の場合はそんな余裕などないからだ。冒険者は向上心の高い者が多い。故に挑むダンジョンも自分に見合ったレベルのものをギリギリまで選定する。「自分達が潜って戻ってくるだけなら問題ないレベル」というのが基本的な安全マージンを取ったレベルの選定とされている。そこに『他人の救助ができる余裕』は計算されていない。
だから、ダンジョン半ばで遭難した他パーティーを見返り無く助ける冒険者は中々いないのだ。相場以上の金と引き換えで回復アイテムを恵む、回復魔法をかける、もしくは痛くも痒くもない程度の回復アイテムを渡す程度に留めるということもあれば、中には遭難者が女性なら体の関係を迫ることで救助する、そんな例も少なからずあった。
後は数こそ少ないが、そういった遭難者向けに救助したり支援することを生業としている冒険者もいる。彼らダンジョン内で高額で回復アイテムを売ったり、ダンジョンの出口までエスコートする短期的な用心棒をこなす。
つまり、基本的にダンジョン内で持ちつ持たれつという考えで行動する冒険者は稀なのだ。良くて利害が一致すれば助けて貰える・・・そう考えるのが普通であるし、そういう考えで望めと冒険者志望の者は口酸っぱく教育される。
だがダンジョン内に置けるそんな常識の中で、勇者クレアは遭難者を決して見捨てることはなく、必ず例外なく無報酬で救出してみせていた。
「それが私の使命だから」
クレアはいつも言っていた。実際勇者として活動するならば彼女の言葉が正しいだろう、そう思われがちであるが、実のところ勇者に下されている王命では特にそういった救助活動についての直接的な義務は含まれてはいない。
ただ「魔王復活に備え力をつけ、王都の平和を守る力となれ」といった程度のものである。
しかしクレアは人助けこそが自分の使命、目の前で苦しんでいる人がいるのならば、何があっても助けたい。そう本心から願う人間だった。
結果として何か得になることはほとんどなかったが、それでもクレアは人助けをやめることはなかった。
中には助けられるだけ助けられておいて、ろくに礼も言わずに去った冒険者もいたというのに、クレアは彼らを責めることもしなかったのである。
「甘ったるい考えだ」ゴウキはそう思っていた。
時に救助される身でありながら、あまりに横柄な態度を取る冒険者だっていた。見捨ててしまえとゴウキは言ったが、クレアは聞き入れなかった。
赤の他人に対し、損得抜きでそういった助け合いの精神でいられるクレアのことをまるで自分とは違う異物だとすらゴウキは感じた。
だが、今実際に特に利があるわけではないこの状況で、こうして人に助けを乞われる状況になり「特にこちらも逼迫している状況じゃないから」という理由以外で人助けしてもいいかなと考えている自分に、ゴウキは少し戸惑っていた。
宝物がたくさん手に入って、心に余裕があるからか?と最後は自分で納得してみせる。
しかし、なんだかんだ言いつつ勇者クレアの精神が少し移っていたのかもしれない。ゴウキは心のどこかでそんなことを考えていた。
「あの、すみませんがどうかよろしくお願いします・・・」
モンスターホームですっかり怯え切ってしまったのか、戦う気力を無くしゴウキ達頼みの冒険者達が頭を下げる。
「気にするな」
そう口にして、ゴウキはハッとした。
今、自分は自然にこれを口にしていたのか?と。
ダンジョンの遭難者を救助すること自体は、ゴウキが勇者パーティーにいたときにもしばしば似たようなことはあったので、慣れているといえば慣れていることであった。ダンジョンアタックをするのは勇者パーティーだけではない。力ある者が潜れば、力の及ばぬ者が潜ることもあるのだ。
だが基本的には力の及ばぬ者が遭難した時、そこに出くわした半数以上の他冒険者はそれを救ってはくれないという。
何故なら大多数の場合はそんな余裕などないからだ。冒険者は向上心の高い者が多い。故に挑むダンジョンも自分に見合ったレベルのものをギリギリまで選定する。「自分達が潜って戻ってくるだけなら問題ないレベル」というのが基本的な安全マージンを取ったレベルの選定とされている。そこに『他人の救助ができる余裕』は計算されていない。
だから、ダンジョン半ばで遭難した他パーティーを見返り無く助ける冒険者は中々いないのだ。相場以上の金と引き換えで回復アイテムを恵む、回復魔法をかける、もしくは痛くも痒くもない程度の回復アイテムを渡す程度に留めるということもあれば、中には遭難者が女性なら体の関係を迫ることで救助する、そんな例も少なからずあった。
後は数こそ少ないが、そういった遭難者向けに救助したり支援することを生業としている冒険者もいる。彼らダンジョン内で高額で回復アイテムを売ったり、ダンジョンの出口までエスコートする短期的な用心棒をこなす。
つまり、基本的にダンジョン内で持ちつ持たれつという考えで行動する冒険者は稀なのだ。良くて利害が一致すれば助けて貰える・・・そう考えるのが普通であるし、そういう考えで望めと冒険者志望の者は口酸っぱく教育される。
だがダンジョン内に置けるそんな常識の中で、勇者クレアは遭難者を決して見捨てることはなく、必ず例外なく無報酬で救出してみせていた。
「それが私の使命だから」
クレアはいつも言っていた。実際勇者として活動するならば彼女の言葉が正しいだろう、そう思われがちであるが、実のところ勇者に下されている王命では特にそういった救助活動についての直接的な義務は含まれてはいない。
ただ「魔王復活に備え力をつけ、王都の平和を守る力となれ」といった程度のものである。
しかしクレアは人助けこそが自分の使命、目の前で苦しんでいる人がいるのならば、何があっても助けたい。そう本心から願う人間だった。
結果として何か得になることはほとんどなかったが、それでもクレアは人助けをやめることはなかった。
中には助けられるだけ助けられておいて、ろくに礼も言わずに去った冒険者もいたというのに、クレアは彼らを責めることもしなかったのである。
「甘ったるい考えだ」ゴウキはそう思っていた。
時に救助される身でありながら、あまりに横柄な態度を取る冒険者だっていた。見捨ててしまえとゴウキは言ったが、クレアは聞き入れなかった。
赤の他人に対し、損得抜きでそういった助け合いの精神でいられるクレアのことをまるで自分とは違う異物だとすらゴウキは感じた。
だが、今実際に特に利があるわけではないこの状況で、こうして人に助けを乞われる状況になり「特にこちらも逼迫している状況じゃないから」という理由以外で人助けしてもいいかなと考えている自分に、ゴウキは少し戸惑っていた。
宝物がたくさん手に入って、心に余裕があるからか?と最後は自分で納得してみせる。
しかし、なんだかんだ言いつつ勇者クレアの精神が少し移っていたのかもしれない。ゴウキは心のどこかでそんなことを考えていた。
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