『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

追放後

俺達はゴウキ・ファミリー

「本当に全部入りやがった・・・」


ゴウキは収納魔法によって宝物が全て姿を消したのを見届けて、呆れ顔で呟いた。


「それって魔物の素材とかってのも入るのかよ？」


「宝物が無くなるとここも随分広くなった・・・」


スミレ達はゴウキと違って既に「そういうものだ」と完全に受け入れた態度だ。元々の性格のせいだろうか。
「あれ？俺が気にし過ぎなのか？」とゴウキは首を傾げたが、これはある意味正しかった。今後彼らとやっていく中で、ゴウキは今起きていることなど気にもならないほどいろいろなものを見させられ、経験していくのである。



「宝物をこれだけ手に入れれば収穫としては十分すぎるだろ。今日は腕試しだったし、そろそろ帰るか？」


多少素材を持ち帰って路銀程度になればと思ったが、想定の数十倍、あるいは数百倍の収益となりそうなので、ゴウキはこれで十分だろとダンジョンアタックの終了を提案する。内心は自分はあまり活躍できなかったなと少し肩身の狭い思いをしていたが。


「だな。宝物の換金も収納魔法とやらで収納されてるんなら、明日でもいいってことだし。今日は帰ってそのまま飲み行こうぜ」


スミレがそう答え、他の二人も頷いた。その時であった。






「おや、人の気配がしますね」


レーダーで気配を検知したらしいリノアがモンスターホーム跡地の一角に目を向けた。
そこは穴倉のようになっておりリノアはそこに人がいる気配を感じ取った。


「魔物の死体に気を取られていて気が付くのが遅れました。私のレーダーもまだまだ精度が悪いですね・・・」


リノアは申し訳なさそうに言うが、それでも他の誰も気が付かなかった気配に気が付くだけでも大したものである。


「あっ・・・」


ゴウキ達がリノアが検知したというポイントまで向かうと、そこには頭を抱えてうずくまっている冒険者数人がそこにいた。


「何してんだ？」


ゴウキが声をかけると、冒険者達は弾かれたようにハッとして驚愕に目を見開く。


「人間・・・？いや、ま、魔物か？」


冒険者の一人の男がゴウキの顔を見てそういう言うと、スミレがクスッと笑い、ゴウキは少しだけ傷ついた。暗闇ではたまに鬼系の魔物に間違えたられたこともあるからだ。



「俺は人間だよ。で、あんたら何してんだ」


ゴウキがもう一度問うと、冒険者達はワッと半泣きになりながら歓声を上げた。


「「「た、助かった～～！」」」



彼らはこのダンジョンを攻略中、転移魔法の発動するトラップに引っかかり、このモンスターホームに飛ばされてしまったという者達であった。
圧倒的な魔物の数に戦う意志を失い、穴倉に飛び込んで気配を殺し、救助が来るのを待っていたらしい。話に聞くとダンジョンの入口で待ちぼうけをくらっていた猫耳の女は、どうやら彼らの仲間のようだ。

「あんなに数多くの魔物を倒すなんて凄いですね！」

「これ全部皆さんがやったんですか！？」

冒険者達はモンスターホームの魔物が全滅している様を見て驚愕の声を上げる。恐怖のあまり魔物達がいつの間にか死んでいたことに気が付かなかったようだ。


「本当にすごい。まさか、今有名になってる勇者パーティーの方々では？」


「いや、違う」


少しだけ気まずそうにゴウキが答える。勇者パーティーかを問われて否定するという立場になったことに、まだ少し思うところがあった。


「俺達はゴウキ・ファミリーってんだ。ま、気が向いたら覚えておいてくれや」


ゴウキはそんなわだかまりを取り除いて捨てるように、そう名乗った。