『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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追放後

異様に頼もしい女、スミレ

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「この辺、落とし穴があるから迂回すること。多分落ちた先で竹やり生えてる。あ、あとそこの壁には隠しスイッチがあるっぽい。触ったら大岩が転がってくると思うから触るなよ?絶対触るなよ?」


(そこまで言われると触りたくなるな・・・フリか?)


先頭を歩くスミレは歩行スピードを緩めることなく、驚異的な検知能力でダンジョンの罠を見抜いていく。黒鉄のダンジョンは魔物も強敵だが、罠も周到に設置されていて油断がならない。魔物をあしらえるほどの実力のある冒険者でも時に罠にひっかかり、呆気なく命を落とす。
むしろ気配もなく唐突に発動する罠は魔物よりも危険対処が困難であるため、実は冒険者の死因の三分の一くらいを占有しているほどだ。だからパーティーには罠に精通した者、トレジャーハンター、シーフ、工兵など斥候を務められる者を置く者達が多い。
クレア達は様々な事情があり、あえてそういった専門職を置かなかったが、斥候はゴウキが担当していた。専門職ではないが、学生時代に冒険者から教えを請うたり、持前の野性的勘も手伝ってそれなりに成果は出していた。

しかしスミレによる罠の検知はゴウキのそれとは比較にならぬほど早く正確であった。
僅かな凹み、変色、足音の反響の違い、そして何より勘。それらを総動員してスミレは幾重にも巡らされた罠を躱してパーティーを導いていく。


「すげぇな。一体どういう感覚してんだ」


ゴウキはスミレの半分ほどの進行速度でも罠を発見しきれず、時に発動させてしまうことがあった。そんなゴウキからするとスミレは化け物に近い存在だ。


「まぁ忍者だから」


スミレは何でもないように言う。
忍者は罠を仕掛ける側であると同時に見破る側でもある。同じ忍者の仕掛ける罠と違って、ダンジョンのそれは粗雑も良いところだと彼女は後に語った。

そしてスミレは索敵もきっちりこなした。


「あ、前方左右にそれぞれ1体ずつ、前方上方にも天井に1体、壁に偽装した敵がいるから」


スミレがそう言った直後、言葉に反応したかのように、突然彼女が言った通りの場所から擬態していたメタリックスライムが姿を現した。鉱物に擬態していたため、暗いダンジョンでは見た目にはすぐにはわからない状態だったが、スミレは的確にそれを見抜いていた。
ゴウキの鉄拳が左の1体を拳で粉砕し、上方の1体をデニスが抜刀術で細切れにする。
右にいた1体はどうしたのかとゴウキがスミレに目を向けると、最後の1体はスミレの持つ2本の直線的な極小剣『クナイ』によって地面に縫い付けられていた。

「それが最後の1体か。俺がーー」
「待て。今は近づくなって」


動けなくなっていたメタリックスライムをゴウキが仕留めようと足を踏み出そうとしたのをスミレが止めた。次の瞬間ーー


ドォォォン!


クナイがメタリックスライムもろとも小爆発し、敵は一瞬にしてバラバラに飛び散った。メタリックスライムを縫い付けていたクナイには爆弾が仕掛けられていたのだ。

斥候も戦闘も並以上にこなす、そんなスミレにゴウキは「異様に頼もしいやつ」と思わず呟いていた。

「そりゃまぁ、忍者だから」

「なんでもそれで済ませられると思うなよ・・・」


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