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追放後

カリスマ!    *リフト目線

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僕、リフト・アウナスには生まれ持ったスキルがあった。
それは僕ともう一人以外の誰も知らない秘密。絶対に知られてはいけない秘密。

それは『カリスマ』だ。



ーーーーー



「そこの君、面白いスキルを持っているね」


僕が王立学園に入学して一年目、町を歩いていると唐突に露天商の怪しい男が声をかけてきた。
彼は占いやそれにまつわるアクセサリ、書物を取り扱っている露天商のようだった。


「失礼。存在こそ知っているが、実際には初めて見るスキル持ちみたいだから、ついいてもたってもいられなくて声をかけてしまった」


「初めて見るスキル・・・?」


僕は司教を父に持つが故に、世間体には気を付けていた。
誰に会っても挨拶をし、決して軽んじない。
相手が誰で何者であるかわかりきっていない以上は、それがどういう縁になるかわからないからだ。だから僕は怪しい露天商とて話かけてきた以上は無視をせず相手にすることにしていた。
もちろん、彼の言葉に興味がわいたということもあるが。


「実は俺には少しばかり相手のスキルを読み取る能力があってね。君が持つスキルはレア過ぎて、普通の人間じゃまず気付かないし存在すら知らないものなのさ」


ははぁ読めたぞ。この露天商は上手いことを言って自分に何か買わせようとしているのだと僕はそのとき思った。
相手をスキルを読み取る能力というのはそれだけで高位の能力者だ。あらゆる人材を育成する学園、訓練所、冒険者ギルド、果ては宮廷に仕える道もある稀有な才能だ。何か訳ありにしたって市井を相手に露天商をする立場にまで成り下がるとは思えない。
スキルを読み取る能力など実際は無く、ただそれは話のきっかけなのだと僕は察した。


「なるほど、それで僕のスキルはどういうものなんですか?」


話が面白かったらとりあえず何か一つくらい縁が買ってあげても良いと僕は考え、露天商に訊ねてみた。


「君のスキルは『カリスマ』だ」


「カリスマ・・・?」


聞いたこともないスキルに、僕は首を傾げた。自分は将来勇者パーティーに属して名の上げるという目標がある。故に冒険者に関わるスキルというものはある程度勉強して知識を詰めておいたはずだった。だが露天商の彼が言ったそれは聞いたこともないものだった。


「そうだ『カリスマ』だ。何者も君の行動、発言、果ては外見や声色までも、君に関わる全ての要素に乗せて君のプラス印象を底上げすることができるのさ。わかりやすくいえば、『人に好かれ、崇められやすくなるスキル』といったところだ」


「それは・・・『魅了』系の類のスキルということか!?」


露天商の言葉を聞き、僕は慌てた。『魅了』とは相手を虜にするスキルだ。人を惑わし、自分の虜にさせ、身も心を捧げさせてしまう恐ろしい精神干渉のスキル。傾国のきっかけにもなりかねないこのスキルは、このバルジ王国では立場や理由の如何に問わず、使用した者は極刑である。


「『魅了』とは少し違う。あれほど直接的に作用するわけではないし、効き目もじっくりだ。だが、それ故にスキルの痕跡も残らないし、時間によって効果が薄まることもない。癖はあるスキルだが、それでも『カリスマ』のスキルを持つ者は、いずれ誰よりも上に登り詰める可能性を持っている」


僕は露天商の話を夢中で聞いていた。それによるとこうだ。

・『カリスマ』は能力者への肯定的感情を上乗せする効果を持つ。例えば善行を行い、肯定的感情がプラス5したとなるとプラス2を能力で上乗せする、その程度の上乗せ量であり、すぐに相手を自分に心酔させるほどの力はない。
だが上乗せされた肯定的感情、好感度は永続的なもので時間の経過とともに消えることはない。ただし元となっている感情が失われたときは消滅する。

・基本的には無差別に誰にでも作用する。

・例外は自分に対して否定感情を抱いている者。ただし行動によりその相手から肯定的感情を引き出せれば能力の効果が作用するようになる。





「つまり直接的に相手の感情を動かせるのではなく、君が好かれるための行動をする必要があるが、それによる好感度の上がりしろが通常の人間より多いということさ。上乗せされた感情は君に対する抵抗心を抑制することにもなるだろうし、皆が君の言うことを聞くようにすることも出来る。その気になれば、君は国王にも、英雄にもなれる・・・君が持つ『カリスマ』とはそんなスキルなのだ」







ーーーーー



『カリスマ』というスキルを持っていると自覚して以来、僕はそれまでより一層勉学、剣術、人脈作りを頑張るようになった。すぐにはわからなかったが、確かに同じことをしても他の人間よりも人を惹きつけやすい体質なのかと気付いたのはそれから2年後のことだった。
そして勇者パーティーの属している今、スキルのお陰なのか、勇者でありリーダーであるはずのクレアを差し置いて、僕はこのパーティーを実質的に支配している立場にある。
やがて違和感なく僕がリーダーを務めることが出来るようにすらなるだろうという確信もある。

唯一効かなかった邪魔なゴウキは既に排除した。
僕を怪しんでいたようだが、この『カリスマ』スキルの前では無力だった。
メディアに頭を下げてまで僕がパーティーの認知度と信頼度を向上に徹してきたのは、こうした「力」を手に入れるためだが、馬鹿である奴にはわからなかったのだ。だが奴は僕の「力」によって排除された。

人の信頼は「力」だ。それを容易く得られる僕は「最強」ということになる。
邪魔なゴウキがいなくなった今、僕はこの「最強の力」でもって成り上がる。

全ては「あの人」に認めてもらうためにーーー。
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