62 / 504
追放後
オレやっちゃいました
しおりを挟む
「待ってたぜェ!!この瞬間をよォ!!」
ゴウキ達が酒場を出た瞬間のことだった。外で彼らを待ち受けていた男が、ゴウキの顔を見るなりそう叫んだ。
「あ?」
咥え煙草したまま怪訝な顔をするゴウキ。
見ると、そこには柄の悪い冒険者風の男が二人と、彼らの後ろに10人を超えるこれまた同じ冒険者風の連中が並んでいた。
「俺達の顔を見忘れたとは言わせねぇぞ?」
前に立つ男の一人が自分の顔を親指で指してそう言う。しかしゴウキにはさっぱり誰の事だかわからない。なんだぁ?この馬鹿みてぇな三下は・・・としか思っていなかった。
「ゴウキあれだよ・・・ちょっと前にこの酒場で酔って喧嘩してた男二人を止めたじゃん。あの二人だよ」
頭に「?」を三つくらい浮かべていたゴウキにスミレが教える。
「あぁ、そういやそんなこともあったな。そんな男の顔まで良く覚えてたなスミレ」
「ま、忍者だから」
スミレの瞬間記憶能力の賜物である。
「てめぇ、あんだけのことしといて忘れるとはふざけんなよ!」
絡む男が激昂する。
しかしわざわざ躓いた足元の小石の形を覚えているような者はそうそういない。酔客の喧嘩の仲裁などゴウキにしてみれば争いのうちにも入らないような小事であった。
「てめぇが勇者パーティーのゴウキだと知ってて報復に出るのはリスクがあると思ったけどよぉ、噂によっちゃてめーはもうクビになったって言うじゃねぇか。だからこうしてお礼参りに来てやったぜ!」
「ほぉ」
ゴウキは煙草の煙を吐き出すと、吸いかけの煙草を地面に落とし踏み消す。
なるほど仲間を連れてお礼参りね。それならわかりやすい。
4区で生きていたときにはたびたびあったイベントごとに、少しばかり懐かしい気持ちになるゴウキ。これまでは勇者パーティーの一員という立場が、彼からこういう荒事をいくらか遠ざけていた一面があった。
ゴウキは立ち並ぶ冒険者風の男達を見渡す。どれもB級程度の冒険者。A級に届きそうなのもいるが、いずれにせよ今のゴウキとは比べるまでもなく平凡たる存在の冒険者に見えた。
「そんな仲間で大丈夫か?」
ポケットに突っ込んでいた手を出し、拳を握りこむゴウキ。瞬間湧いてくるそのオーラに、向かい合う男達は全員ビクッと肩を震わせた。
「び、ビビるな!勇者パーティーってのは、王家がバックボーンについているだけで実力的には大したことねーって言われてんだよ!つまりパーティーを抜けたコイツはただのハッタリ野郎でしかねぇのさ!!」
前に立つ男の一人がそう言って仲間を奮い立たせる。
あぁなるほど、勇者パーティーをそんな風に考えるやつらもいるのか。まぁ、最近は宣伝活動ばっかでまともに強敵とも戦って無かったしなとゴウキは思い、納得したように頷く。
「詫びても遅せぇぜ!お前らやっちまいな!!」
先頭の男が叫び、仲間達が一斉にゴウキに向かって動きだす。その瞬間だった。
メキョッ
何かが潰れる音がしたかと思うと、戦闘にいた男二人の体が地面に打ち付けられ、激しくバウンドしていた。
「「「!?」」」
それがゴウキの鉄拳の一撃によって起こったことだと気付いたのは、後ろにいた仲間達のうちの一人が同じように殴り叩きつけられてからだった。一瞬にして3人がゴウキの拳によって沈んだのだ。
「なっ・・・」
男達がやられた仲間の様子を把握しようとする前に、次々へとゴウキはその腕を振るい同じように叩き伏せていく。誰もが一撃でのされ、結局一方的にゴウキが蹂躙する形となり一瞬で騒動は決着した。
実にゴウキが動きだしてから10秒に満たない時間であった。
死~~~ん
騒いでいた野次馬達が言葉を無くし、辺りは一瞬にして静寂に包まれる。
「す、すげぇ・・・」
打ちのめされた男達の見て見物人が感嘆する。やられた男達はこの辺りでも有名な荒くれ冒険者だったが、ランク的にはB級といえど並より遥か上の部類に入る冒険者達であり、憲兵も彼らの蛮行を見て見ぬふりをすることが多いほどであった。そんな彼らはそれぞれたった一撃で顔を変形させ、歯を砕け散らせて意識を完全に手放していた。
失禁している者までいる。
「拳鬼っていうだけはあるぜ・・・なんで勇者パーティーはあんなのを手放しちまったんだ・・・」
もはや圧倒的な畏怖の対象とすら言えるゴウキの実力に、見物人達は勇者パーティーの判断は間違っていたのでは?と疑いをかける。しかしそれと同時に、ゴウキのその力が野放しにされている状況に対し恐怖も感じていた。
そんなゴウキを見つめる一つの目が、この後のゴウキの運命を狂わすのである。
ゴウキ達が酒場を出た瞬間のことだった。外で彼らを待ち受けていた男が、ゴウキの顔を見るなりそう叫んだ。
「あ?」
咥え煙草したまま怪訝な顔をするゴウキ。
見ると、そこには柄の悪い冒険者風の男が二人と、彼らの後ろに10人を超えるこれまた同じ冒険者風の連中が並んでいた。
「俺達の顔を見忘れたとは言わせねぇぞ?」
前に立つ男の一人が自分の顔を親指で指してそう言う。しかしゴウキにはさっぱり誰の事だかわからない。なんだぁ?この馬鹿みてぇな三下は・・・としか思っていなかった。
「ゴウキあれだよ・・・ちょっと前にこの酒場で酔って喧嘩してた男二人を止めたじゃん。あの二人だよ」
頭に「?」を三つくらい浮かべていたゴウキにスミレが教える。
「あぁ、そういやそんなこともあったな。そんな男の顔まで良く覚えてたなスミレ」
「ま、忍者だから」
スミレの瞬間記憶能力の賜物である。
「てめぇ、あんだけのことしといて忘れるとはふざけんなよ!」
絡む男が激昂する。
しかしわざわざ躓いた足元の小石の形を覚えているような者はそうそういない。酔客の喧嘩の仲裁などゴウキにしてみれば争いのうちにも入らないような小事であった。
「てめぇが勇者パーティーのゴウキだと知ってて報復に出るのはリスクがあると思ったけどよぉ、噂によっちゃてめーはもうクビになったって言うじゃねぇか。だからこうしてお礼参りに来てやったぜ!」
「ほぉ」
ゴウキは煙草の煙を吐き出すと、吸いかけの煙草を地面に落とし踏み消す。
なるほど仲間を連れてお礼参りね。それならわかりやすい。
4区で生きていたときにはたびたびあったイベントごとに、少しばかり懐かしい気持ちになるゴウキ。これまでは勇者パーティーの一員という立場が、彼からこういう荒事をいくらか遠ざけていた一面があった。
ゴウキは立ち並ぶ冒険者風の男達を見渡す。どれもB級程度の冒険者。A級に届きそうなのもいるが、いずれにせよ今のゴウキとは比べるまでもなく平凡たる存在の冒険者に見えた。
「そんな仲間で大丈夫か?」
ポケットに突っ込んでいた手を出し、拳を握りこむゴウキ。瞬間湧いてくるそのオーラに、向かい合う男達は全員ビクッと肩を震わせた。
「び、ビビるな!勇者パーティーってのは、王家がバックボーンについているだけで実力的には大したことねーって言われてんだよ!つまりパーティーを抜けたコイツはただのハッタリ野郎でしかねぇのさ!!」
前に立つ男の一人がそう言って仲間を奮い立たせる。
あぁなるほど、勇者パーティーをそんな風に考えるやつらもいるのか。まぁ、最近は宣伝活動ばっかでまともに強敵とも戦って無かったしなとゴウキは思い、納得したように頷く。
「詫びても遅せぇぜ!お前らやっちまいな!!」
先頭の男が叫び、仲間達が一斉にゴウキに向かって動きだす。その瞬間だった。
メキョッ
何かが潰れる音がしたかと思うと、戦闘にいた男二人の体が地面に打ち付けられ、激しくバウンドしていた。
「「「!?」」」
それがゴウキの鉄拳の一撃によって起こったことだと気付いたのは、後ろにいた仲間達のうちの一人が同じように殴り叩きつけられてからだった。一瞬にして3人がゴウキの拳によって沈んだのだ。
「なっ・・・」
男達がやられた仲間の様子を把握しようとする前に、次々へとゴウキはその腕を振るい同じように叩き伏せていく。誰もが一撃でのされ、結局一方的にゴウキが蹂躙する形となり一瞬で騒動は決着した。
実にゴウキが動きだしてから10秒に満たない時間であった。
死~~~ん
騒いでいた野次馬達が言葉を無くし、辺りは一瞬にして静寂に包まれる。
「す、すげぇ・・・」
打ちのめされた男達の見て見物人が感嘆する。やられた男達はこの辺りでも有名な荒くれ冒険者だったが、ランク的にはB級といえど並より遥か上の部類に入る冒険者達であり、憲兵も彼らの蛮行を見て見ぬふりをすることが多いほどであった。そんな彼らはそれぞれたった一撃で顔を変形させ、歯を砕け散らせて意識を完全に手放していた。
失禁している者までいる。
「拳鬼っていうだけはあるぜ・・・なんで勇者パーティーはあんなのを手放しちまったんだ・・・」
もはや圧倒的な畏怖の対象とすら言えるゴウキの実力に、見物人達は勇者パーティーの判断は間違っていたのでは?と疑いをかける。しかしそれと同時に、ゴウキのその力が野放しにされている状況に対し恐怖も感じていた。
そんなゴウキを見つめる一つの目が、この後のゴウキの運命を狂わすのである。
0
お気に入りに追加
301
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る
はにわ
ファンタジー
ランドール王国最東端のルード地方。そこは敵国や魔族領と隣接する危険区域。
そのルードを治めるルーデル辺境伯家の嫡男ショウは、一年後に成人を迎えるとともに先立った父の跡を継ぎ、辺境伯の椅子に就くことが決定していた。幼い頃からランドール最強とされる『黒の騎士団』こと辺境騎士団に混ざり生活し、団員からの支持も厚く、若大将として武勇を轟かせるショウは、若くして国の英雄扱いであった。
幼馴染の婚約者もおり、将来は約束された身だった。
だが、ショウと不仲だった王太子と実兄達の謀略により冤罪をかけられ、彼は廃嫡と婚約者との婚約破棄、そして国外追放を余儀なくされてしまう。彼の将来は真っ暗になった。
はずだったが、2年後・・・ショウは隣国で得意の剣術で日銭を稼ぎ、自由気ままに暮らしていた。だが、そんな彼はひょんなことから、旅をしている聖女と呼ばれる世界的要人である少女の命を助けることになる。
彼女の目的地は祖国のランドール王国であり、またその命を狙ったのもランドールの手の者であることを悟ったショウ。
いつの間にか彼は聖女の護衛をさせられることになり、それについて思うこともあったが、祖国の現状について気になることもあり、再び祖国ランドールの地に足を踏み入れることを決意した。
【短編】追放した仲間が行方不明!?
mimiaizu
ファンタジー
Aランク冒険者パーティー『強欲の翼』。そこで支援術師として仲間たちを支援し続けていたアリクは、リーダーのウーバの悪意で追補された。だが、その追放は間違っていた。これをきっかけとしてウーバと『強欲の翼』は失敗が続き、落ちぶれていくのであった。
※「行方不明」の「追放系」を思いついて投稿しました。短編で終わらせるつもりなのでよろしくお願いします。
冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
これが私の兄です
よどら文鳥
恋愛
「リーレル=ローラよ、婚約破棄させてもらい慰謝料も請求する!!」
私には婚約破棄されるほどの過失をした覚えがなかった。
理由を尋ねると、私が他の男と外を歩いていたこと、道中でその男が私の顔に触れたことで不倫だと主張してきた。
だが、あれは私の実の兄で、顔に触れた理由も目についたゴミをとってくれていただけだ。
何度も説明をしようとするが、話を聞こうとしてくれない。
周りの使用人たちも私を睨み、弁明を許されるような空気ではなかった。
婚約破棄を宣言されてしまったことを報告するために、急ぎ家へと帰る。
クラスまるごと異世界転移
八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。
ソレは突然訪れた。
『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』
そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。
…そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。
どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。
…大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても…
そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる