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プロローグ

リフトの激昂

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ゴウキとミリアが勇者パーティーの拠点に入ると、部屋では既にクレア、リフト、マリスの三人が待機していた。
クレアは昨日の一件があるからだろうか、ゴウキの方を最初にちらりと一瞥しただけで、それからは目を合わせようともしなかった。
リフトは不機嫌そうな表情を隠そうともせず、ゴウキを睨みつけている。


「謹慎中に呼び出して、一体何の話だ?」


針のむしろのままでいるつもりもない、ゴウキは自分から切り出した。


「・・・まずはこれに目を通してもらおう」


リフトはそう言って、新聞紙をゴウキに手渡した。


「なんだよ一体・・・」


記事を読めということだろう。新聞名を見ると勇者パーティーの存在に否定的な記事の目立つ新聞だった。渋々記事に目を走らせると、ゴウキは見出しの記事に自分の名前が載っていることに気付く。それは4区でゴウキがギャングのボスであるディックと酒場で話合っているときのことが目撃されたという内容の記事だった。
ディックは4区のギャングとして幅を利かせている存在だ。そんなディックと勇者パーティーの一員であるゴウキが酒を飲み交わしていた・・・世間体が悪いといえば確かに世間体の悪い話だ。
記事の内容はゴウキがギャングの接待を受け、汚職に加担しているのではないか、そんな疑惑について書かれていた。ついでに、ディックの計らいで娼館にも誘われたことについても、娼館の誘いを断った事実を抜きにして書かれている。悪質な偏向記事だった。


「これはどういうことだ?」


静かな物言いだが、リフトの声質には怒りが滲んでいた。


「古巣に行って、旧友と親睦を深めただけだ。あと酒場で飲んだのは酒じゃなくてミルクだぞ」


飲酒についてまた言われることになっても面倒なので、ゴウキは先にそこはハッキリさせておく。だがリフトはそんなことはどうでも良いと激昂した。


「ふざけるな!どうしてならず者なんかとつるんでいるんだ!こんなところをすっぱ抜かれてどうするつもりだ!!」


ピクッとゴウキの眉が動く。ディックを良く知らぬリフトに一方的に詰られることに憤りを感じたが、ここでミリアが事前に言った耐えろという言葉を思い出す。なるほど、これは確かに事前に釘を刺されてなかったら危なかったなとゴウキは納得した。
ゴウキとディックが結成したギャングは、4区の中ではかなりクリーンな部類に入る。薬は禁止し、一般人への恐喝なども禁止。暴力によって影響力を維持しているのは事実だが、犯罪をメインとした収入を得てはいない。
ただし、花の4区を外れた道を呑気にふらふらと歩いているような間抜けな貴族からは怪我をさせないという前提で多少はぶん盗っても良いという暗黙の了解はあるが。


「ディックは別に犯罪に手を染めているわけじゃないし、別にここの記事に書かれているような汚職にまつわるような付き合いもない」


「そんなことなんてどうでもいい!」


ゴウキの言葉を、リフトの叫びが遮る。いつになくヒステリックなリフトの形相に、ゴウキのみならず他のメンバーもぎょっとした。これまで何度となくゴウキとリフトは衝突してきたが、これほどまでにリフトが怒りを表したのは初めてであった。
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