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プロローグ

勇者からのスカウト

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ゴウキとクレアの最初の出会いから5年。
12歳になったゴウキは孤児院で暮らしつつも、4区にあるギルドで細々とした依頼を受けたり、娼館のボーイをやったりといろいろな仕事をして暮らしていた。その一方で仲間とつるみ、4区での影響力を広げつつも小遣い稼ぎの副業に精を出したりもしたが、4区の治安が治安なので目立つことをすればやはりそれなりに目をつけられたが、類稀れなゴウキの喧嘩の才能はあらゆる敵を跳ねのけた。

4区の中では同年代はおろかそこらの大人よりも実入りは良かったが、それでも王都民全体から見れば中流にも程遠い暮らしぶりだ。
喧嘩の才を売り込んで、どこかの用心棒として雇ってもらおうか・・・そのようにゴウキが漠然と将来設計を始めようとしたときだった。




「ゴウキ。勇者パーティーに入らない?」


ある日いつものように訪ねてきたクレアは、ゴウキにこのように言った。
何言ってんだコイツ?と怪訝な顔をするゴウキに、クレアは更に続ける。


「ゴウキのその力・・・私に貸して欲しいの」


真剣な顔をして言うクレアに、ゴウキは唖然とする。
あれ、本気で言っているのか?ふざけているんじゃなく?
勇者というのはこの世で魔族を支配し人間界に侵攻しようとしている空想上の存在『魔王』を倒すために、神の使命を帯びて戦う戦士のこと。子供が読む絵本や、歌劇団の舞台にたまに現れるような空想のヒーローだ。小さな子供が「勇者ごっこ」といって遊ぶ姿をたまにみかける、あの「勇者」。
ごっこ遊びをしようというのか?12歳にもなって?

ゴウキは最初クレアの珍しい悪ふざけだと思ったが、表情が真剣なので困惑していた。




ここでクレアが明かす。

勇者とは御伽噺だけの存在ではなく、実在するものだと。
自分は教団の神託により任命された勇者ということを。
王立学園を卒業する15歳から、一人の勇者として国を守り、そしてやがて復活するであろうと言われている魔王を倒す使命を帯びることになると。
そのときの仲間は国が選出することになるが、候補者を選ぶ権利はクレアにもあり、そしてその権利を行使してゴウキを候補者にしたいと。
候補者になれば学園に通えるうえに国から助成金が出て学費も生活費も不自由はしなくなると。

ゴウキは興奮した顔つきで聞いていた。


「それが本当なら有難い話だが・・・いいのか?」


「これまでに私が唯一勝てていないゴウキが仲間になれば、私だって安心して戦うことができるから」



強い強いと思っていた女だったが、まさか勇者だったとは。驚きながらもゴウキはどこか納得する。


「じゃあ頼むわ。後から冗談だって言っても聞かねぇからな」


ゴウキは王立学園に通うことが出来るなら通いたいと考えていた。学園を卒業すれば仕事を探すにも断然有利になるし好待遇が望めるからである。
だが基本的に中流以上の家庭で育つ子が入学する王立学園に入学するには、学費を払えるだけの十分な経済力も無ければ、面接をクリアできるだけの信頼できる家柄もない・・・様々な問題が立ちはだかっていた。
しかし、それをクレアの話に乗れば入学することが出来るという。

ゴウキはクレアの話に乗った。
スラムで一生を終える可能性の高かったゴウキが、大きな人生の転換期を迎える。

これから数年後。
ゴウキはクレアの望む通り、勇者パーティーの一員となることが出来た。
ゴウキはこの時のクレアへの恩を忘れたことはない。
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