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プロローグ

バカ女(クレア)との決闘

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「なんだ?あのバカみてぇな女は」


ゴウキが最初に抱いたクレアに対する感想はこれだった。
孤児院で皆で掃除をしている最中、突然にクレアは木造刀を片手に乗りこみ、名指しでゴウキを「成敗する」と言い放ったのだ。服装は子供用の訓練用アーマーを身に着けており、歌劇団か何かにかぶれた女の子がやってきたのだと思った。

同い年のようだが、その顔に覚えがないなとゴウキは首を捻った。
だが間違いなく初見であるはずの乱入者は、明らかにゴウキに対し敵意を抱いていた。


「誰だか知らねーがゴウキ、やっちまえ!」


「負けるなゴウキ!」


孤児院の他の子供達はゴウキに声援を送る。いつの間にか円を描くように人だかりができ、ゴウキとクレアの決闘場が出来ていた。


「いや待てよ。俺はお前のこと知らねーぞ」


じっとクレアの顔を睨みつけ、それでもやはり思い出せなかったゴウキは言った。
ゴウキの中でそのときのクレアはただの頭のおかしい女だった。


「私はお前に傷つけられたビクスとウェージの友人です。二人の無念を晴らしに来ました!」


「はぁ?」


クレアが激昂すると、ゴウキは少し考える。そこでようやく一つだけティンと来た。


「・・・もしかして、あの貴族の二人組の奴らか?」


数日前、自分が打ちのめした貴族の同年代の男二人のことを思い出す。
その二人の恨みを晴らすために来たのかとゴウキは思い当たった。


「そうです!その二人のことです。ここに迷いついた無抵抗なあの二人を、あなたが話も聞かずに何度も殴りつけたと聞きました!」


「おいおい、ちょっと誤解してるが・・・」


「問答無用!」


クレアの怒気を含めた一喝により、ゴウキはそれ以上言葉を発することを咎められた。
完全に頭に血が上っている。今の彼女には恐らく何を言っても通じないだろうとゴウキは判断した。


「しゃあねえ。じゃあやっちまうか」



ようやくやる気を出して拳を構えるゴウキ。
孤児院の院長はおろおろするだけで止めることが出来なかった。例え止められたとしても、ゴウキもクレアも素直に止まったりはしなかっただろう。クレアは言わずもがな、ゴウキも消極的に見えつつも、殺気に当てられてしっかりとスイッチが入ってしまっていたのだ。


「ゴウキ!」


そこへミリアが必死の形相でゴウキの腕にしがみついてきた。


「止めるな!」


止めに入ったと思ったゴウキはミリアにそう叫ぶが


「ううん、違う」


彼女は首を横に振った。


「怪我だけはしないで。その上で勝って。ぶちのめして!」


無茶な注文をするミリアに一瞬唖然としつつも


「任せとけ!」


ゴウキはそう応じ、改めてクレアと向き直った。

当時7歳だったゴウキとクレアの運命の決闘が始まった。
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