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プロローグ

迫害ゴウキの憂鬱

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ゴウキは理不尽と言える理由ではあったが、謹慎処分を受け入れた。ゴウキはその日はすぐさまパーティーの拠点から引き返し、どうせ空いた時間だと思いカフェでぼーっと物思いにふけった。

勿論、考えることはパーティーのことだ。


(もう限界なんだろうか・・・)


ゴウキは当然の疑問を抱く。
勇者パーティーは実質リフトが掌握しつつある。優柔不断なクレアではもう多数派であるリフトの意向に逆らうことは出来ないだろう。そしてリフトとゴウキはそりが合わない。
これではゴウキにはもはや居場所はない。


ふと、スミレ達の魅力的な提案が頭を過ぎる。
さっさと今のパーティーを辞めて、新しく彼らと組んだ方がどれだけ楽しいか。誰でも簡単に靡きそうなこの誘惑にゴウキは抗っていた。


「あぁ、やめやめ!」


ゴウキは頭を振って考えることをやめる。
勇者パーティーは辞めない。例え自分がそれだけ惨めになろうとも、クレアの力になるのだと決めたではないかーー
理由はそれだけで十分だ。ゴウキは誘惑を振り切った。






そしてゴウキが向かったのは、第1区から遠く離れた第4区である。第2区は中流階級、第3区が下流階級で、第4区はいわば「ゴミ箱」と言える場所であった。表立って生きていけない訳あり者、破産者、犯罪者、あらゆる社会の脱落者が集まるスラムが第4区だ。
ここはゴウキの出身地であった。


「おい、ゴウキじゃないか?久しぶりだな墓参りか」


第4区内にある墓場にゴウキが向かうと、そこにいる霊園の管理人の老人に声をかけられる。ゴウキの昔からの馴染みの人であった。


「ちょっと時間が出来たんでな。久しぶりに顔を出しに来たわ」


ゴウキの手には道中花屋で買った花束があった。
彼が鼻を添えたのは木でつくられた粗末な十字架で出来た墓である。ここにはゴウキの世話になった者が眠っている。
膝を折って祈り終えると、管理人が言った。


「実の娘のほうはまるで顔を出さないが、ゴウキがたまに来てくれて喜んでくれていると思うよ」


「だといいが」


墓に眠っているのはゴウキの幼馴染ミリアの両親の墓であった。
ゴウキがまだ幼い頃、ミリアの両親には少なからずお世話になっていたゴウキは、今でも時間があるときに墓参りに来ている。
だが、ミリアはある時を境に墓参りに来てはいない。少なくとも、ゴウキは来ていることを知らない。

ゴウキとミリアは第4区の出身で、二人は幼馴染でありゴウキはミリアの両親とも交流があった。


「大きくなったらお嫁さんになってあげる、なんて言ってたこともあったっけ」


ミリアとの楽しい頃の記憶。そのことを思い出してゴウキはフッと口元を緩める。
恐らくその頃がミリアとの最後の楽しい思い出があるときだ。

ある日、ゴウキとミリアの関係が変わった。それと同時にこまめに来ていた両親の墓にミリアは訪れなくなったのだ。
そのことを思い出し、ゴウキははぁと溜め息をついた。
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