『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ

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プロローグ

『濁』なる者はパーティーで孤立している

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ゴウキが歩みを進めていると、またも彼に声がかけられた。
今度はパーティーのリーダーである勇者クレアだった。


「今度は何だよ?」


先ほどのミリアのこともあるため、ゴウキの態度もつい刺々しいものになる。
だが、クレアの表情を見てゴウキは「お前も説教か?」と言おうとした口を閉ざした。クレアは何とも申し訳なさそうに表情を曇らせていた。


「ごめんなさい。今日のことは」


まさか謝られるとは思わなくて、ゴウキは軽く咳払いをして「別にクレアが悪いわけじゃねぇよ」と思わず言った。ささくれだっていたゴウキの心が気まずさでいくらか落ち着いた。


「いや、私が悪い。私がリーダーとして情けないから、仲間同士で衝突が起きる・・・」


意見の分かれる事案であっても、多数決にであれば一応形ではパーティーの半分以上の賛同があっての決定ということになる。難しい決断になったとき、クレアはこの手法に頼る癖がついてしまっていた。なぜならゴウキとリフトの衝突があまりに多いからだ。結論が出ず、険悪な雰囲気のままでいてはパーティーの崩壊を招く。
そこでクレアは積極的に多数決で決めるようになった。
例え議論が紛糾しても、リーダーであるクレアが決断を下せば問答無用でパーティーはそれに倣う。しかし、クレアはそれを良しとしなかったのだ。

最初は多数決によりその結果はまちまちだった。リフトの意見が採用されることが多かったが、それでもゴウキの意見が採用されることもあった。しかし、いつからかリフトの意見のみが採用されるようになる。ミリアとマリスが露骨にリフトを支持するようになったからだ。
今では多数決=リフトの意見採用、という構図が出来上がっている。意見が採用されなかった方の人間の気持ちは・・・そんな気遣いからクレアによるトップダウン方式を避けていたのに、いつの間にか同じことに・・・いや、それ以上に酷いことになっていた。ゴウキの意見が全く採用されない構図が出来上がってしまったのだから。

クレアはこのことを本当に悔いていた。


「もういい」


それだけ言って、ゴウキは再び歩きだす。クレアもそれについて行く。
下手は慰めはしない。クレアの優柔不断が招いたことであることは事実だからだ。

クレアはリーダーに立つ者としては優しすぎた。仲間同士の衝突は見たくないし、皆が笑顔でいられる方法を考えたい。多数決とてそのための最善だと思って採用した。しかし、それが災いして今ではゴウキ一人が割を食う状況が出来ている。

クレアは勇者であり、剣術も魔法も人並み外れた才能を持つ。しかし、リーダーとしてはやや不向きだなとゴウキは思い、それならそれで自分はクレアのそんなところをフォローできれば・・・と考えていたが、今ではすっかりリフトにこのパーティーを掌握されつつあるとゴウキは感じていた。今日とて最後は半ばリフトが場を仕切っていた。
きっとこのままリフトが実質的なリーダーになるのでは・・・そう考えている。

リフトは親に教団の高位者を持ち、自身も教団でそれなりの地位についている。そして恵まれた戦闘スキルを駆使し、勇者パーティーで華々しく活躍する彼は、パーティーの中で誰よりも人々の信頼を集めていた。
勇者パーティーの実質№2としてはこれ以上ない逸材だろう。

クレアの横で彼女を補佐するのは、自分よりは断然リフトの方が良い・・・そう考えるべきだが、どこかゴウキはリフトという男を信用できないでいた。クレアの補佐を安心して任せきれない、そんな考えがどうしても拭えなかったのだ。
そして無意識のうちにリフトを警戒し、つい衝突をしてしまう。

ゴウキは勇者パーティーにおいて孤立している。少なくとも、ゴウキ本人はそう考えていた。
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