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プロローグ
衝突 その2
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「埒が明かないね。それなら、いつも通り多数決にしないか」
リフトの提案を聞いて、ゴウキは「ちっ」と舌打ちした。
「話は聞いての通り。取材を受けるべきか今回は断るべきか、どうするべきだと思う?」
リフトが勝手に仕切っているが、クレアは何も言わなかった。この方が楽だと気付いているからだ。
「私は取材を受けてもいいと思います。やっぱりまだ国民の皆様への認知が進んでいないから・・・」
おっとりした口調でミリアがリフトに同意した。
それを聞いて「満足するまで認知されるまで何年かかんだよ」とゴウキが呆れて溜め息をつく。
「リフトさんに同意で」
マリスの淡々とした物言いを聞いてリフトは満足そうに頷く。
「・・・と、いうことだけどクレア。取材を受ける、という方向で進めてしまってもいいだろうか?」
もう流れは出来ているが、リフトは一応のお伺いを立てる。
「取材を受けるべきが多数・・・だったら、答えは決まっているわね。ゴウキ、それでいい?」
ちくりと、クレアの胸が僅かに痛む。
ここ最近はゴウキとリフトが衝突するとき、ミリアとマリスが彼に加勢するのが常であった。だから多数決を持ち出されると、まずゴウキが負けることになる。クレアはそれをわかっていた。わかっていながら流れに身を任せた。その罪悪感がクレアの胸を刺すが、そのことに気付かないふりをする。
「それでいいも何も、多数決には従うわ」
投げやりにゴウキが答える。
多数決になったところでゴウキもこの結末になるのはわかっていた。ここで反対意見をぶつけても無駄になることはわかっているので、彼はもう何も言わない。
「それなら決定だ」
リフトは満足そうににっこりと笑ってそう言った。
ーーーーーーーーーー
打ち上げが終わり、勇者パーティーは今日のところは解散した。
ブスッとしかめっ面をしながらその場を離れようとしているゴウキが呼び止められる。ゴウキを呼び止めたのはミリアだった。
「なんだよ」
「ゴウキ。あまりリフトさんを困らせないで」
もう話は終わったのに、なお咎めてくるミリアにゴウキは深く溜め息をついた。
ミリアはゴウキの一つ上の幼馴染だ。昔からお姉さんぶってゴウキに小言を言うことがたびたびある。以前はその関係とて別に悪い気はしなかったが、ここ最近はリフトに肩入ればかりしてゴウキに食ってかかる彼女にすっかり嫌気がさしていた。
ミリアからは、ゴウキはいつも個人的に気に入らないリフトに食ってかかっているように見えたからそれを咎めたつもりだった。
「そんなつもりはねぇよ」
うんざりしながらゴウキはそれだけ返事をして帰ろうとする。そんなゴウキの前にミリアは立ち塞がるようにして歩み寄った。
「いつもそう言うけど、今日だってまた喧嘩したじゃない。リフトさんが言うことが正しいことはわかるでしょう?私達は勇者パーティーだけど、ただ冒険だけしていれば良いというわけじゃないの」
「あぁ、わかってる。わかってるって」
貴族が社交界に出るのは遊ぶためだけじゃない。貴族会で生きていくために必要なことだ。夜会に出るのも仕事の一つともいえる。勇者パーティーとて同じことだ。貴族の催すパーティーに出たり、メディアの取材に応じることで、自分達の存在意義を示す必要があることくらいはわかる。そうすることで巡り巡って自分達が活動しやすい環境が整うし、逆にそれを滞らせれば思わぬところで弊害が出るだろう。
だが限度がある。
外堀を埋めることに邁進してばかりで、肝心の本丸にいつまで経っても攻め入らないような、そんなもどかしさをゴウキは感じていたのだ。
「ゴウキ!」
なおも呼び止めようとするミリアを無視し、ゴウキは歩みを止めることなく立ち去った。
まともにミリアと議論はしない。前まではしていた。だが、ミリアはリフトの肩を持つばかりでゴウキの話をまるで聞いていないのではないかと感じていた。
いつかゴウキはミリアと議論することそのものを避けるようになっていた。
こうして勇者パーティーでは少しずつ亀裂が広がっていた。
リフトの提案を聞いて、ゴウキは「ちっ」と舌打ちした。
「話は聞いての通り。取材を受けるべきか今回は断るべきか、どうするべきだと思う?」
リフトが勝手に仕切っているが、クレアは何も言わなかった。この方が楽だと気付いているからだ。
「私は取材を受けてもいいと思います。やっぱりまだ国民の皆様への認知が進んでいないから・・・」
おっとりした口調でミリアがリフトに同意した。
それを聞いて「満足するまで認知されるまで何年かかんだよ」とゴウキが呆れて溜め息をつく。
「リフトさんに同意で」
マリスの淡々とした物言いを聞いてリフトは満足そうに頷く。
「・・・と、いうことだけどクレア。取材を受ける、という方向で進めてしまってもいいだろうか?」
もう流れは出来ているが、リフトは一応のお伺いを立てる。
「取材を受けるべきが多数・・・だったら、答えは決まっているわね。ゴウキ、それでいい?」
ちくりと、クレアの胸が僅かに痛む。
ここ最近はゴウキとリフトが衝突するとき、ミリアとマリスが彼に加勢するのが常であった。だから多数決を持ち出されると、まずゴウキが負けることになる。クレアはそれをわかっていた。わかっていながら流れに身を任せた。その罪悪感がクレアの胸を刺すが、そのことに気付かないふりをする。
「それでいいも何も、多数決には従うわ」
投げやりにゴウキが答える。
多数決になったところでゴウキもこの結末になるのはわかっていた。ここで反対意見をぶつけても無駄になることはわかっているので、彼はもう何も言わない。
「それなら決定だ」
リフトは満足そうににっこりと笑ってそう言った。
ーーーーーーーーーー
打ち上げが終わり、勇者パーティーは今日のところは解散した。
ブスッとしかめっ面をしながらその場を離れようとしているゴウキが呼び止められる。ゴウキを呼び止めたのはミリアだった。
「なんだよ」
「ゴウキ。あまりリフトさんを困らせないで」
もう話は終わったのに、なお咎めてくるミリアにゴウキは深く溜め息をついた。
ミリアはゴウキの一つ上の幼馴染だ。昔からお姉さんぶってゴウキに小言を言うことがたびたびある。以前はその関係とて別に悪い気はしなかったが、ここ最近はリフトに肩入ればかりしてゴウキに食ってかかる彼女にすっかり嫌気がさしていた。
ミリアからは、ゴウキはいつも個人的に気に入らないリフトに食ってかかっているように見えたからそれを咎めたつもりだった。
「そんなつもりはねぇよ」
うんざりしながらゴウキはそれだけ返事をして帰ろうとする。そんなゴウキの前にミリアは立ち塞がるようにして歩み寄った。
「いつもそう言うけど、今日だってまた喧嘩したじゃない。リフトさんが言うことが正しいことはわかるでしょう?私達は勇者パーティーだけど、ただ冒険だけしていれば良いというわけじゃないの」
「あぁ、わかってる。わかってるって」
貴族が社交界に出るのは遊ぶためだけじゃない。貴族会で生きていくために必要なことだ。夜会に出るのも仕事の一つともいえる。勇者パーティーとて同じことだ。貴族の催すパーティーに出たり、メディアの取材に応じることで、自分達の存在意義を示す必要があることくらいはわかる。そうすることで巡り巡って自分達が活動しやすい環境が整うし、逆にそれを滞らせれば思わぬところで弊害が出るだろう。
だが限度がある。
外堀を埋めることに邁進してばかりで、肝心の本丸にいつまで経っても攻め入らないような、そんなもどかしさをゴウキは感じていたのだ。
「ゴウキ!」
なおも呼び止めようとするミリアを無視し、ゴウキは歩みを止めることなく立ち去った。
まともにミリアと議論はしない。前まではしていた。だが、ミリアはリフトの肩を持つばかりでゴウキの話をまるで聞いていないのではないかと感じていた。
いつかゴウキはミリアと議論することそのものを避けるようになっていた。
こうして勇者パーティーでは少しずつ亀裂が広がっていた。
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