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プロローグ

反省会 その3

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「でも、ゴウキはもう少し綺麗な戦い方は出来なかったのかしら。今日は取材があるからイメージ作りのためにもその辺は考えましょうってことで皆で話合ったじゃない」


おっとりした口調でミリアが言うと、加勢が来たと思ってリフトが僅かに調子づいた。


「そうだ。皆でそうしようと決めたじゃないか。それを君は・・・」


ゴウキは「はぁ?」と呆れたように返事をすると、グラスに入っているワインをくいっと一気に飲み干した。


「話聞いてたか?いつものハイオークじゃない、変異種だったんだぞ。首尾良く倒せたから良いものの、実力は未知数でちょっとした油断が命取りに繋がりかねない相手なんだぞ。見た目にこだわって戦う余裕なんて本当はないんだっての。それでも俺なりに見栄え良くやったつもりなんだがな」


「く、クレアさんとマリスにフォローを頼めば良かったじゃないか!」


「見栄え良くも強力な勇者パーティーというのをイメージづけよう!ってリフトが言い出したんだろ。最低一人一体は倒しているあの状況で、俺だけが仲間に手助けしてもらいながら魔物を倒してたらちぐはぐになっちまうんじゃねぇのか?それは問題ないのか?」


「・・・ぐっ・・・」



「もういい!」


リフトが言い淀んでいると、黙って聞いていたクレアがピシャリと遮った。


「今回はイレギュラーが起きた。その中でゴウキはベストではないけれどベターを尽くした。取材については確かに微妙な結果になってしまったけど、それは私達仲間のフォローが行き届かなかったところせいでもある。もう今回はそれでいいじゃない」


クレアがそう言うと、ゴウキは無言のまま、リフトは渋々頷いた。


「ゴウキも、戦いともなればあれこれ気にしていられないのは確かだけど、今回みたいに取材が入っているような時だけは少しだけ見栄えも気にして」


「取材ね・・・はいはい、わかったよ」


ゴウキは何か言いたげだが、それでもこれ以上言い争いを加熱させるのも億劫だと思ったのか、とりあえずその場では言葉を飲み込んだようだった。

この勇者パーティーの打ち上げでは、そこそこの確率でゴウキとリフトの衝突が始まる。
リフトが言い包められることもあれば、ゴウキが窘められて終わることもある。犬猿の仲とでも言おうか、どうにも相性が悪いのか衝突がよく起きるのが、リーダーであるクレアの悩みの一つだった。
そして酒場の店員も他の客も、そんな彼らを良く見かけるためにパーティー内の不仲説が噂として出回っている。これがまたクレアの頭を痛めていた。
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