元平民の公爵令嬢が王子の溺愛にあってます？！

6.入学の日

それから学院入学までは通常は3ヶ月かかるところを1ヶ月ととても早かった。

入学当日はお父さんが学園までついてきてくれて、お兄様が馬車まで迎えにきてくれた。

「フィル、入学おめでとう」

「ありがとうございます」

お兄様は入学祝いとして片耳ピアスをくれた。
これもネックレスと一緒に肌身離さずつけておいてと言われた。

お父さんとはここでお別れみたいでお父さんはお兄様にもらった片耳ピアスと対になっているもう一つの片耳ピアスをもらった。そして、お兄様から離れないようにとだけ言って帰っていた。

「じゃあ、教室に向かおうか」

お兄様は宝科の3年生。私は同じ宝科の1年生になる。
ユウェール学院は4年制の学園であり、貴族から平民まで様々な身分の人がいる。年はだいたい12歳から16歳までの人が在学している。これは宝力の発現時期が違うからである。

「フィル、教室は違うけれどお昼や帰りは迎えに来るから教室で待って居てね」

「はい、わかりました」

私が通う教室の前まで送ってくれてお兄様は自分の教室に向かった。

「皆さん、本日は転入生を紹介をしますね」

担任であるディーラ・シーファのその声で教室に入る。
教室には私と同年代であろう人たちが20人ほどいた。

「初めまして、フィルシィー・サファルスと申します。よろしくお願いします」

自己紹介を終わらせて、空いている席に座る。

「初めまして、私はレイア・サミ。よろしくね！」

「よろしくお願いします」

隣の人から挨拶された。レイアという少女はフィルより歳が上に見える。ロングのブロンドヘアでルビーのような瞳を持つ綺麗な女の子だ。

それからは初授業を受ける。100分の授業が1日に4回あり、今日の午前授業は社会学であった。
社会学が終わるお昼休みになった。

「フィルシィーさん！お昼一緒に食べない？」

レイアさんがお昼を誘ってくれた。
だがお兄様から待っているようにと言われたからどうしようか迷っている。

「……えっと、」

すみませんと言いかけた時、

「フィル、迎えにきたよ」

お兄様が宣言通りに教室まで迎えにきてくれた。

「すみません。お兄様と約束しているので、、失礼します」

そう伝えて、お兄様の方まで急いで向かう。

「お待たせしました」

「じゃあ行こうか」

学園の道がまだよくわかっていないのでお兄様におとなしく着いていく。
きたときは人がいなくてわからなかったけれど、お兄様と歩いていると人の視線がとても痛い。
ネックレスの力で容姿を隠しているからといってもお兄様の誰が見ても美男子と答えるであろう容姿の人の隣を歩くには釣り合わない。
そんな内容の話を見て来る人がヒソヒソと話しているのがよく聞こえる。

視線に刺されながらついた場所は生徒会室と書かれた教室だった。

「ここは……」

「生徒会室だよ」

それは見たらわかります、お兄様。

「じゃあはいろうか」

お兄様はそういって生徒会室の扉を開く。
その教室の中にいたのは男子生徒が3人と女子生徒2人の計5人の生徒会の人。

「副会長！どちらに……ってそちらの女子生徒は？」

お兄様が教室に入った瞬間、眼鏡のかけた男の人がきた。

「フィルを迎えに行ってたんだよ」

生徒会の人はみんな頭にハテナが浮かんでいる様子だ。
どういう関係か気になっているのだろう。

私のはネックレスの力でネズミような灰色の髪に濁った青の瞳というとてもじゃないけどお兄様の銀髪と透き通った青の瞳には似ても似つかない容姿をしている。

「フィルとはその子のこと？」

次に問いかけてきたのは黒髪ショートの女の人だ。

「あぁ、僕の妹だよ」

「「「「え！？」」」」

一人の人を除いて生徒会の四人は口を揃えて驚いた。

「フィルシィー・サファルスと申します」

本日二度目の自己紹介。
いまだに自分がサファルスを名乗るのは違和感がある。

「いやいや、イオ。君に妹がいるなんて聞いたことないぞ」

「そうよ！なんで今まで黙っていたのよ！」

「妹ねぇ……それにしては似てないね」

「レオン、それは失礼だ」

「皆んな、少し落ち着きましょ」

声を出して驚いていた4人はお兄様に疑問をぶつけていた。
お兄様がそれを無視していると残る一人の落ち着いた雰囲気の女の人が仲裁に入った。

「とりあえず、座りましょう」

そう促してくれて、ソファーに座った。

「それでイオライト様、説明していただけるかしら」

落ち着いた雰囲気の女の人はお兄様にそう問いかけた。

「そうだね、この子、フィルシィーは正真正銘僕の実の妹だよ。神殿でも鑑定してもらった正式な結果だ。経緯は省かせてもらうけれど僕たちのお母様がなくなって、お母様と過ごしていたフィルが公爵家に引き取られたんだ。まあこんな感じかな」

とても簡単に説明した。
生徒会の人たちは納得した様子。

「でも、どうして生徒会室に連れてきたんだ？」

「そうよ、フィルシィー様を生徒会に入れるの？」

確かにそこの疑問は今の説明だと残ったままだ。
私もなんでここに連れられてきたのか知りたい。

「お兄様、私入らない……」

「生徒会に入れないよ。ただお父様からお願いされたからね」

そうか、そういえばお父様がお兄様から離れるなって言っていた。
王族には近づけないとも……

「フィルは今まで平民として過ごしてきた。それに……。まぁとりあえずお父様からも頼まれたし、僕的にも賛成だからね。学院では共に行動するってことに」

「とりあえず理解はしたけど、生徒会の仕事はどうするの？」

「それはするよ。だから先にフィルをここに連れてきたんだよ」

なるほど、生徒会室にはこれからよく来ることになるみたい。
　
「じゃあ、自己紹介しなきゃだね！私はマリー・ハーレスト、宝科2年生だよ。この中では1番年下で14歳だね」

「次は私ね。アイリス・ルミラー、研究科3年。研究科は珍しいから馴染みがないと思うけれど宝力について研究している科だと思ってくれて大丈夫。16歳よ。」

「ヴァレン・オリガー。俺は騎士科の3年だ」

「オレはレオンハルト・バーレン。宝科3年だよ、ちなみにここでは最年長の18歳だね」

「最後は僕ですね。ジル・サンドラと申します。宝科2年の15歳です。よろしくお願いします」

生徒会の皆さんの紹介を受けて私も再度自己紹介をした。

「フィルシィー・サフィルスと申します。本日より宝科1年に転入しました。13歳です。よろしくお願いします」

自己紹介を終えたその日は午後の授業の時間になり、生徒会を退出した。