上 下
3 / 10

3.儀式

しおりを挟む
1人海で立っている。
何もしないでただただ立っている。

そんな夢から目を覚ますと、


やはり昨日のことは夢じゃなかったと確定させる天井が目に入る。


体を起こして、
ラピスに起きたら押してくださいと言われた紐を押すと……。


「おはようございます。お嬢様。」

「……おはよ?」


なんで??と思っていると
ラピスは不思議そうにしていたのが面白かったのか少し笑って説明してくれた。


「そのボタンに着いている宝石によって通信機となっているのです。

基本は私と執事長のハリスさんが通信石を持っています。」

「なるほどね。でも、音が鳴らないよ?」

「音が鳴らないのに分かるのは振動によって分かるようになっているからです。」



あ~振動か。

確かに音で知らせるとなると不便なこともありそうだもんね。


「では、お嬢様。
朝のご支度を致しますね。」




……貴族様の朝は時間が凄くかかるらしい。

起きて、

入浴して、
服選び、
着替え、
髪を結って、
お化粧して、
やっと完成。


平民なんて、
顔洗って、
服着替えて、
ちょっと色々整えたら全てが終わるのに……。



朝だけでももう疲れた。


「お嬢様、朝食のご準備が出来ているのでお部屋まで案内致しますね。」

「うん。」


長い廊下を歩いて、突き当たり部屋の前で止まった。


「ここが朝食、晩餐を基本的に行う部屋です。希望によっては庭園のガゼボなどで御用にすることも可能です。

では、旦那様がお待ちですので……。」



え、お父さんがいるのか、、。
部屋に戻りたいなと思っていると目の前の大きな扉が開いた。



「おはよう、フィルシィー。」

「おはようございます。」



お父さんと対面の席に座ると、
朝食が運ばれてきた。


「ありがとうございます。」


持ってきてくれた人にお礼を言う



「今日はフィルシィーの鑑定の儀式に行く。」

「鑑定の儀式とは何ですか?」



そういうと少し驚いたようなやっぱりなと思っているような顔をお父さんはしていた。

鑑定の儀式……。



「やはりしていなかったか、」

「しないといけないものですか?」

「あぁ通常は7歳になった頃に貴族、平民問わずに神殿に行き行われる。

その結果は国民の住民権のために使われている。ただ、君の情報はなかったからな。」

「……そうですか、」



7歳か、
その時はお母さんが働き過ぎて倒れるといいことが頻繁に起きていた時。

ただ忘れていたのか、

覚えていたけど連れて行けなかったのか

私が知られては行けない子だったのか、

そんなことが頭の中によぎる。

そんなこと思ってももうお母さんはいないから遅いのに……。

「鑑定の儀式は自分の宝石を主に鑑定する。
宝力が強いとコントロールが難しい。
宝力が暴走してしまうと、暴走してしまった本人も周りも死んでしまう可能性が高い。

その可能性を無くすために宝力を扱う勉強をする学院がある、鑑定の儀式はその選別も兼ねているから、必ず儀式はしないといけない。」

「……。」

「…神殿は13時まで解放しているからそれまでに準備を済まして広間に来てくれ。」



そういうとお父さんは部屋から出て行った。







「ラピス。」

「はい。」

「鑑定の儀式に行きたくない。」


ラピスは困った顔をした。


「すみません。鑑定は必要なことですから」

「なんで?今まで14歳になるまでしてなかったのに……。、」

「お嬢様は公爵家の一員になりました。
平民は力が弱い人が多いから鑑定をしない人も本当に極わずかですがいます。

ですが、貴族の方は力が強いので鑑定は義務になっているのです……。」

「……わかっ、た。」



私は貴族らしい綺麗な色の髪も
宝石が宿っている瞳も持っていない。

なんなら宝石を宿していない。

そんな私が鑑定の儀式に行くなんて宝力がないのをちゃんと認めないといけないということ。


ずっと目を逸らしてきた。

いつか、いつかきっと私にも……って思っていたのに。



「お嬢様…。旦那様が広間でお待ちです。」

「うん、ありがとう。」



広間に行くと朝食の時とはちょっと違った服を着ていた。



「……では、行くか」



神殿までは馬車を使うらしい。
馬車に乗ったのは今が初めてだけど、
少し慣れなくて気分が悪い。



「あの、儀式はどんなことをするのですか?」

「……フィルシィー。」

「はい?」



真剣な顔で名前を呼ばれる。



「……親子なんだから敬語はやめないか?」

「え?」



もっと重要なことを言われるのかと思ったからなんだか拍子抜けだ。

敬語……。

そういえばあの家に着いてからはずっと敬語だった。、



「……わかった」

「……。」



お父さんの笑った顔を今初めて見た。
昨日であった時から今の今まではずっと無表情が困った顔、とか複雑な顔をしていたから…。



「そ、それで儀式はどんなことするの?」

「あぁ、ただ儀式の間というところにある、鑑定石に手を置くだけだ。」

「え、それだけ??」



なんだ、もっと複雑だったり痛いことするのか思ってた。

手を置くだけか、



「着いたか、」



お父さんがそう言うから
外を見ると家ぐらい、いやそれより大きな真っ白な建物が目の前にあった。



「お待ちしておりました。サファルス公爵家の皆様。」



そういうのは真っ白の服に金の刺繍が入った服を着た女の人だ。



「では、鑑定の儀式のため、儀式の間にご案内致します。」



儀式の間に着くとひとつの何にも書いていないカードを貰った。



「こちらのカードをお持ちのまま、儀式の間中央にある鑑定石の前に手を置いてください。」



そう言われ、私は鑑定石に手を置いた。


その時鑑定石が音を鳴らした。


「申し訳ございません。
何か反発するものを身につけていませんか?
例えば、変化石とか……。」

「……分かりません。」

「ん~では、ずっと身につけているものとかありませんか?」



ずっと身につけているもの……。

そう言われてすぐに思いついたのは

お母さんから絶対に外さず持っていてと言われたネックレス。



「……それなら、これが……。」


そういい、女の神官さんというらしい人にそれを見せた。


「……それ誰に付けられましたか?」

「……お母さんです。」

「そうですか…。なら良かったです。」



どういうことだろう。

そう思いお父さんの方を見る。


「フィルシィー、それは変化石を加工したネックレスだ。

しかも通常の変化石は目の色を変えるだけとか髪の色を変えるだけのものだが。

それは全ての色を変え、醜いものにするものだ。

そしてよく奴隷商が使っている。」



え、なんでそんなものを……。



「と、とにかく!それを外してもらわないと鑑定の儀式ができないんです。」


「わかりました。」



そう言って外すと、



「「え……。」」




「な、なんですか?」


2人は信じられないとでも言う顔をしていた


「……あ、えっと。
では鑑定石の方に……。」


「はい。」


鑑定石に手を置くと

虹色に光った。



「有り得ない……。」


え、有り得ないって。


「……私何かダメなことしました?」

「い、いや、ダメというか。」

「フィルシィー、君は凄いな。」


凄い……?


「…私ちゃんと宝力ありますか?」

「あぁ誰よりも宝力を思っている。
直系王族よりもな。」


え、そっそれって。

私でもわかる。
なんだか大変なことになるって、



「ちょ、ちょっと!
ありえないです 。

そんなにはっきりとした宝石眼を持っているのもですし、全属性持ちだなんて……。

今まで隠し通されてきたのも
宝力暴走しなかったのも……!

信じられない。

それにそんな宝力、初代聖女様以来です!!」



初代聖女様……。

私の力はどうやら私が思っている以上に凄いらしい。


嬉しくてお父さんの方を見ると
真剣な顔で神官さんの方を見てこう言った。



「……神官。
この事は上にはまだ報告しないでくれ。」

「そんなことできません!」

「……サファルス公爵家に逆らうのか?」

「……い、いえ。ですが……!」

「この事は時期が来たら私の方から国王に申し上げる。」

「……か、かしこまりました。」




それから
色々手続きをして家に戻った。

家に戻る時はあのお母さんのネックレスをつけて。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

想紅(おもいくれない)

笹椰かな
恋愛
椿(つばき)は中学3年生の14歳。ある日、祖父から23歳の従兄である猛(たけし)と将来結婚するように命じられる。猛を兄のように思っていた椿とは違い、彼は椿に好意を持っていた。最初こそ戸惑う椿だったが、存外あっさりと猛に絆されていってしまう。 ※表紙の作成/かんたん表紙メーカー様 ※使用画像/かなりかな様、pixivURL:www.pixiv.net/member.php?id=572852

男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

富士とまと
恋愛
リリーは極度の男性アレルギー持ちだった。修道院に行きたいと言ったものの公爵令嬢と言う立場ゆえに父親に反対され、誰でもいいから結婚しろと迫られる。そんな中、婚約者探しに出かけた舞踏会で、アレルギーの出ない男性と出会った。いや、姿だけは男性だけれど、心は女性であるエミリオだ。 二人は友達になり、お互いの秘密を共有し、親を納得させるための偽装結婚をすることに。でも、実はエミリオには打ち明けてない秘密が一つあった。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

義弟の為に悪役令嬢になったけど何故か義弟がヒロインに会う前にヤンデレ化している件。

あの
恋愛
交通事故で死んだら、大好きな乙女ゲームの世界に転生してしまった。けど、、ヒロインじゃなくて攻略対象の義姉の悪役令嬢!? ゲームで推しキャラだったヤンデレ義弟に嫌われるのは胸が痛いけど幸せになってもらうために悪役になろう!と思ったのだけれど ヒロインに会う前にヤンデレ化してしまったのです。 ※初めて書くので設定などごちゃごちゃかもしれませんが暖かく見守ってください。

【1/1取り下げ予定】妹なのに氷属性のお義兄様からなぜか溺愛されてます(旧題 本当の妹だと言われても、お義兄様は渡したくありません!)

gacchi
恋愛
事情があって公爵家に養女として引き取られたシルフィーネ。生まれが子爵家ということで見下されることも多いが、公爵家には優しく迎え入れられている。特に義兄のジルバードがいるから公爵令嬢にふさわしくなろうと頑張ってこれた。学園に入学する日、お義兄様と一緒に馬車から降りると、実の妹だというミーナがあらわれた。「初めまして!お兄様!」その日からジルバードに大事にされるのは本当の妹の私のはずだ、どうして私の邪魔をするのと、何もしていないのにミーナに責められることになるのだが…。電子書籍化のため、1/1取り下げ予定です。1/2エンジェライト文庫より電子書籍化します。

【完結】もったいないですわ!乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢は、今日も生徒会活動に勤しむ~経済を回してる?それってただの無駄遣いですわ!~

鬼ヶ咲あちたん
恋愛
内容も知らない乙女ゲームの世界に転生してしまった悪役令嬢は、ヒロインや攻略対象者たちを放って今日も生徒会活動に勤しむ。もったいないおばけは日本人の心! まだ使える物を捨ててしまうなんて、もったいないですわ! 悪役令嬢が取り組む『もったいない革命』に、だんだん生徒会役員たちは巻き込まれていく。「このゲームのヒロインは私なのよ!?」荒れるヒロインから一方的に恨まれる悪役令嬢はどうなってしまうのか?

処理中です...