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9章 ユニコーンロリと女神の邂逅

268話 地上侵攻

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「……ふぅ、ごちそうさま」

「お、お粗末様でしたぁ……」

「しばらく……何日かだるーくなるだろうけど、生活に支障ないくらいは残したからね」
「ひ、ひゃい……」

1分くらい抱きしめ合ってちゅーし合ってた2人。

「        」

「ぴぴっ」

おまんじゅうも、まーたヘンなことになってるし……まぁこの子は最初からこうだったからどうでも良いけども。

【ふぅ……】
【¥30000】
【ご馳走様でした】
【ロリとロリの長時間キスとか……】

【実に素晴らしいものでしたわ】
【家宝にしますわ】
【お嬢様!】
【草】
【最近静かだと思ってたら……】
【いやいや今こんなので楽しんでる場合じゃ】

「このままにしといても数十分でこの空間ごと瓦解して通常空間になるはず。 だけど……ちょっとまずいんだよね」

なんだかつやつやしてる女神さまは、じぃっと上を見上げている。

「まずいんですか?」

「うん。 魔王たちが予備の肉体――残機使って、さっきのを直接地上でやらかそうとしてる」

「……まずいですね」

「不味すぎるんだ。 ダンジョンならどんな攻撃でもダンジョン内で完結するからこそのダンジョンシステムなのにさ」

【ダンジョンシステム?】
【なにそれ】
【わからん……】
【この女神、説明する気なさそうだしなぁ……】

【ユズちゃんが聞けば答えてくれそうだけど、そこまで頭回るならちょうちょ言われてないしなぁ……】

【草】
【ひどくない??】
【だって、女神様直々に人間じゃないって断言されたし……】
【確かに】
【ちょうちょはちょうちょだもんな!】
【草】

「あの、僕たち、リストバンドっていうものつけてて、それ使えばすぐ地上に」

「――ううん、それは1階層あたりものすごい低確率だけど位置がずれる。 上に出てすぐに動けなかったりしたら困るんだ」

しゅいんっ。

女神さまから魔力が溢れ出す。

【えっ】
【うそぉ!?】
【リストバンド転送事故って深度に関係あったの!?】

「どうしても魔力の揺らぎでね。 だから――」

きりりと両手で引き延ばした矢を――真上に向ける。

「――ちょーっと、直通通路、作っちゃうね」

――ひゅんっ。

「チ、チョコ様! お二人を!」
「ぴぴっ!」

がばっと抱きついてきたエリーさん。

「ごめんね、そっちはお願い。 手が回らないんだ」

「姉ちゃんもこっちだ」
「あら、おやびんさん……ハンサムね」
「へへっ……照れるぜ」

荒れ狂う風、荒れ狂う音――荒れ狂う光。

僕たちは、また――女神さまのすごい力に取り込まれた。





【悲報・上空、見渡す限りヘビさんたち】
【やばい】
【こわいよー】
【ダンジョンの中でもやばかったが、上空とは】
【不意打ちすぎて追いつけてない】

『矮小なる種族よ』

無数のワープホールから出現した竜――ミズチ。

それらはまたたく間にダンジョン化した周辺の空を覆い尽くす。

『我は不快だ。 故に汝らを滅ぼす』

【そこをなんとか】
【へへっ……足でも何でも舐めますぜミズチ様……】
【botのマネはやめとこ?】
【草】

【あの、冗談言ってる場合じゃ】
【だってもう逃げられないし】
【出てきちゃった以上はなぁ……】

【あー、もうみんなのリストバンドとスマホに来てると思うけど、全国各地のダンジョン周辺、モンスターいきなり現れてる】

【もしかして:全世界のダンジョンシステムってのが】
【壊された】
【えぇ……】
【やばくない?】
【11年前の再現だよ?】

【もうおしまいだ……】
【冗談じゃないのがなぁ】
【ま、まあ、11年前より戦える人の数自体多いから……】
【でも、この魔王軍だよ?】

地上で展開しつつある上級者を中心としたパーティーに軍属の兵士たち。

しかし――それらの展開速度は異常で。

『……既に我らの支配領域たる空にも飛び回るか。 不快だ――嗚呼、不快だ』

魔王軍の上空を偵察機や戦闘機がかすめるも、その体格の差はあまりにも大きく。

【こいつら何メートルあるんだ】
【小さい個体で……100メートルくらい?】
【ひぇっ】
【戦闘機が豆粒みたいだ……】
【こわいよー】
【でかい】

『我は、矮小だからこそ特に飛び抜けた進化をする可能性のある、汝らの脅威を知っている。 故に、初めから全力で滅ぼす。 交渉は不要、結論有るのみ』

【交渉できないとか】
【人間のこと見下しつつも人間の脅威知ってるとか、魔王様ガチすぎない?】
【油断しない魔王とか人類の敵すぎる】
【最初から全力出す系魔王とか流行じゃないってぇ……】

海から、陸から、空から――全速で駆け付けている戦力は、間に合わない。

『冥土の土産は渡した。 ――――去ね』

ミズチたちの口へ、一斉に光がほとばしる。

【あっ】
【終わった】

それらの光は、数秒で臨界に達して一斉に周囲をなぎ払おうと――――したが。

『!?』

彼らの中心――ダンジョン化している空間の中心から天に向け、金色の光が貫く。

「あーあー、せっかくのシステム壊しちゃって」

ぽっかりと空いた空間から、金の女神が姿を現す。

「これ、作るの大変だったのに」

【わぁぁぁん女神さまぁぁぁ】
【めっちゃ強引に出てきた!】
【めっちゃ物理的だった】
【わぁ……女神様、大胆】
【草】
【まさかダンジョンごとぶち抜くとは……】
【あれ、何十階層もあったんですけど……】

『……神族……汝……!』

【え  あの、ユズちゃんたち救出のために潜ってた理央様たち……】
【あっ】
【あっ】
【え】

【悲報・理央様たち、じゅっ】
【いやいや……いやいや】
【女神様だからそんなこと……ない……よな……?】
【いや、でもこの女神様、うっかりだから……】
【まぁ理央様だけなら案外満足しそうだし……】
【ひでぇ】

「君たちは大丈夫?」

「けほっけほっ……は、はい……」
「な、なんとか……?」

そこから続いてきたのは――サキュバスに抱きかかえられた柚希と、ワイバーンに咥えられている彼の母親。

【ユズちゃん!】
【ユズねぇも】

「ねぇ、テイマーの君」
「は、はい?」

「――私が周りの倒すからさ。 その魔王さん、君が倒しといてね」

「はい。 ……はい?」

「じゃ、こいつらのブレス、引き受けてるから」

照準が一斉に向いた女神が、一気に上空へと飛翔し――何百という光が女神を追っていく。

「………………………………」

ぱちくり。

彼は――言われたことを理解するのに、少しばかり時間を要した。
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