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9章 ユニコーンロリと女神の邂逅

267話 倒せてなかったヘビさん

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「ねぇ、来たついでにあとでウナギか串焼き食べたいんだけど、どっかお勧めある?」

魔王さんへ矢を放った女神さまが、振り返ってくる。

【草】
【????】
【草】
【なんで串焼き】
【もしかして:あの魔王の惨状】
【グロ注意】

「さ、さぁ……僕、食べたことないから……」

「ゆず、ごめんね……一応県の有名店は知っていますけど、ゆずは生まれてから、私も10年くらい食べていないのでおいしいかどうかは……」

【ぶわっ】
【闇が……闇が】
【おいしいもの食べて……】
【これ以上大きくならないから安心して食べてね!】
【草】
【ひでぇ】

魔王さんはもう動かない。

女神さまの矢で、串刺しにされているから。

光ってる矢でお口から……多分おしりの方まで。
確かにこれ、バイト先で見るような魚の串焼きみたいだね。

……ちょっとかわいそうだけど、人を滅ぼすとか言ってたし……体がいくつもあって死なないらしいからいいや。

「いやぁ、それにしても君たちはあれだねぇ」

ぷはっ、と、小さな袋から取り出した……多分お酒を1杯ごくごくって飲んだ女神さまが言う。

【草】
【草】
【あ、袋さんが綺麗だ】
【えっ】
【????】
【ロリ女神はね、あの収納袋にお酒詰め込んでるんだよ】
【酒吞み女神だもんなぁ】

「あれだよね、えーと……普通に大精霊だよね」

「大精霊……?」

「魔力の濃い場所で自然発生する魔力生命体。 君たちの純度はそんな感じ。 なんかこう、すっごくピュアだね」

「はぇー」
「はぇー」

僕たちは大精霊だったらしい。

大精霊って何だろうね。

【草】
【草】
【ああ! ユズねぇまでがちょうちょに!】
【そらそうよ……】
【ま、まあ、魔族よりはずっと印象良いから……】

【でもお口閉じようね】
【びっくりしておめめとお口が開きっぱなしのダブルユズ】
【お口は閉じようね】
【ちょうちょに無理難題押し付けないで!!!】
【草】
【ひでぇ】

「……人間なんだよね?」

「だと思います」
「そうねぇ、多分……?」

「そっか。 その魔力で現代風の服とか着てて違和感すごいけど……って、これ、配信機材?」

「え? あ、はい」

お酒の瓶をもっかい取り出して、ふと気がついたように酔ってくる女神さま。

「なるほど、ダンジョン配信だね。 良かった良かった、ダンジョンで」

【?】
【どゆこと?】

「?」
「ううん、こっちの話」

ごくりとお酒をあおる女神さま。

「……ま、あとは何回かここで迎撃すれば諦めてくれるでしょ。 ああ言ったけど、多分怒り狂って何回か突撃してくるだろうからさ。 そのあとでここ構成してる魔力もらえば私は充分」

「あ、ありがとうございます……僕たち、このダンジョンから出られなくって……だから、魔力もらってもらえると嬉しくって」

「あ、じゃあここが無くなったら地上に出る系?」
「そ、そうなる……のでしょうか?」

ちらりと見ると、ぽかんとしてるエリーさんにおやびんさん。

おまんじゅうとチョコはずっと腕の中で振動してるだけ。

「んじゃ、出たら軽くショッピングでもして――っ!?」

みしり。

嫌な感覚が、僕たちを通り過ぎる。

「……お母さん」
「ええ、ゆず」

「……このヘビめ……よりにもよって……!」

『――ふははははは! これで我らは楔から解き放たれた!』

串刺しになったままのヘビさん――魔王さんが声を発する。

『馬鹿め! 汝が仕留めたと油断している隙に術式は完成した! 我が只消滅するまで抵抗しているのだと思ったか神族よ!』

「しまった……! ごめん、これは私のミスだ……!」

ミス。

何のミスか分からないけど、女神さまが焦ってる。

『――この世界に残されし、我らを地の底へ封じ込める術式に風穴を開けた! 嘆くが良い! 我も予備の肉体となり、これよりこの世界そのものへ――』

ぱりん。

ヘビさんが、光の粒子になる。

「――ダンジョンに閉じ込めてたモンスターが、地上に、空中に溢れる……っ!」

【え?】
【!?】
【え、術式って】
【うわ、地上に居る親衛隊の配信】
【え?】

【うわぁ】
【!?】
【空のあちこちに黒い渦が】
【もしかして:魔王軍、直接地上侵攻】
【こわいよー】

【ちょ、ちょうどタイミング良く国連軍とかが到着するから、あとちょっと持てば……】

【ユズちゃんたちは助かったけど今度はこっちかよ!?】
【逃げてー!!】
【だな、上級者以外は逃げた方が良いっぽいな】
【いきなり魔王軍精鋭部隊の奇襲だからな……】

「……私は、今すぐに地上に出なきゃいけない」

すっと光ってた弓をしまう彼女。

「今すぐに、魔力、もらっても良いかな」

「え、ええ……」
「あ、でもどうやって」

「――それは、ね」

ふぁさっ。

女神さまが――お母さんに、抱きついた。

羽で軽く飛びながら、お母さんと同じ背丈になって。

【!!??】
【ガタタタッ】
【キマシ】
【ちゅーだ! ちゅー!】
【バカ、いくらなんでもそんなこと】

「――もらうね。 嫌なら抵抗して」

「……はい」

――ちゅっ。

女神さまが、お母さんの唇に――唇を、合わせた。

【ふぁぁぁぁぁぁ!?】
【やった……やった!】
【美しい……】
【え待って尊死しちゃうやめて】
【やめないで】

【速報・女神さま、ユズねぇ寝取る】
【だからユズパパは想像上の存在だっていってるだろ!!】
【そうだぞ、こんな経産婦はいないんだぞ!】
【草】
【コメントでおなかいたい】
【お前ら……】

【これが、宗教画……】
【美しい】
【本当に美しい】
【2人とも幼いけど、びっくりするほどの美幼女だから……】
【幼女だから規制とかされないよね!】

【大丈夫大丈夫、女神教徒からすればこれは聖なる接吻だから】
【草】
【あー、ロリ女神様にはすごい数の信徒がいるもんなぁ】
【そうそう、宗教的なものだから規制とかできないよ】
【されたら抗議殺到するからね】
【草】

「 ゛  ゜」

「ぴ?」

ふと、静かになった腕の中を見てみる。

……白目向いてるおまんじゅうが居て怖くなったから、そっとチョコで顔を覆ってあげた。
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