上 下
244 / 298
8章 「ユズワールド」脱出と、新顔2匹/人と

242話 【悲報・ユズちゃん名字住所バレ】

しおりを挟む
【表札……】
【うん……】
【あのときはそれどころじゃなかったけどさ……】

【星野、って……】
【はっきり映ってるよねぇ……】

「良かった、お家残ってた」
「良かったわねぇ」

広かった空間は、今や何十のワイバーンさんに数百の人たち……に、もっと多い数の薄着の魔族さんたちで埋め尽くされている。

あのとき戦ってたモンスターさんたちは居なくなってて――あ、お母さんのテイムモンスターたち、ワイバーンさんたちの足で掴まれてきてたんだ――敵が居なくなってるのにぎっちぎちだ。

「……柚希先輩?」

「理央ちゃん、もう大丈夫?」
「はい、全部吐ききったので」

おやびんさんから降りた僕たちのところへ、ワイバーンさんから飛び降りてきた理央ちゃん。

【草】
【この百合少女……けろりとしてやがる……!】
【つよい】

「……ちょっとダンジョン用のスマホ、いいですか?」
「あ、うん。 どうぞ」

そういえば結局、ここに閉じ込められた日は電波通じなかったから使わなかったし、昨日もおやびんさんたちと一緒に寝てたから使うこともなくって。

「電源切ってたけど……うん、着いた」
「何で電源を!?」
「いや、だって命綱だし……」

なんかびっくりしてる理央ちゃんはほっとこう、どうせ大したことじゃないだろうし。

「……今、お拭き致しますね……」
「おう……助かるわ……」

彼女の後ろでは……げろろろろって吐かれたのを拭かれてるワイバーンさん。

【かわいそう】
【かわいそう】
【サキュバスさんが健気】
【元凶の理央様は?】
【気づいてない】
【草】

【え!? ユズちゃんでさえ気づいてるのに!?】
【ユズちゃんですら見てるのに!?】
【それは大問題だな……】
【草】
【ユズちゃんが判断基準で草】

「……ゆずきちゃあああん!!」
「わっ……ひなたちゃん」

大変な状況から解放されてぼーっとしてたらぶつかってくるひなたちゃん。

「大丈夫だったぁ!? 心配したんだよー!?」
「う、うん……ごめんね? 大丈夫だから」

ぽんぽん、ぽんぽんってあっちこっちを叩いたり揉んだりして来てる……けど、うん。

心配させちゃったからね。

「柚希さん」
「あやさん」

2日ぶりくらいのあやさんも歩いてきて――。

「わぷっ」
「……ご無事で……良かったです……!」

【キマシ】
【塔】
【ユズちゃんがサンドイッチされてる】
【いい……】
【ユズちゃんの顔はあやちゃんのおっぱいに】
【それに気づいて後ろから抱きついてるひなたちゃんが……】
【ふぅ……】

【理央様は?】
【スマホに夢中】
【草】
【理央様……】
【ま、まあ、さっきコメント見てたから……】
【あー】

「柚希先ぱ――ずるいです!!」
「ぷはっ、どうしたの理央ちゃん」

あやさんのお胸で蒸れ始めたところで、なんか真っ赤な顔して怒ってる理央ちゃんに引き剥がされる。

「さぁ!!」

「?」

理央ちゃんが両手を開いてる。

「……さぁ!!」

「?」

【草】
【草】
【「さぁ!」じゃないんだよ理央様……】
【理央様?? ご自分で抱きつかれないので??】
【もしかして:それができないチキンハート】
【草】
【ああ……】

【口では好き好き言ってても、強引なことはできないのか】
【だから認識が友人止まりなのでは??】
【かわいそう】
【理央様? ユズちゃん相手だと受け身じゃダメよ??】
【ヘタレ理央様かわいい】
【かわいい】

「……柚希さん」
「あ、優さん」

振りかえると、

「……大丈夫ですか? そんなに激戦でしたか?」
「………………………………何でもないよ……」

……すっごくげっそりして、せっかくのかっこいい顔が煤けてる優さんが居た。

【かわいそう】
【かわいそう】
【月岡……】
【安置が消滅し、ことごとくに反転ファンになった月岡よ】
【完全に被害者だもんねぇ……】

「まずはご無事で何より。 で、私も同じ件です」
「あ、教官さん」

いつもよりもぼさぼさになってる教官のお姉さんが、優さんを気遣うようにしながら話しかけてくる。

「柚希さん。 ……いえ、星野さん」
「はい」

「……優さん」
「はい……配信で、聞こえてしまっていますね……」

「?」

【聞こえたねぇ……】
【なぁんでぇ……?】
【確かさ、ユズちゃんの自己紹介事故配信ではぼかされてたよな?】
【設定した個人情報以外はAIの自動処理のはずなんだよね】

【そうじゃないと、うっかりパーティーメンバーの名前とか最寄り駅とか言っちゃって身バレになるからね】
【なのに……】
【うん……】

「教官さん……優さん……やっぱでした」

「そうですか……はぁ……」
「普通は触らない箇所なんだけどなぁ……」

「?」

理央ちゃんが僕のスマホを彼女たちに見せている。

「柚希先輩?」
「?」

「配信設定……いじりましたよね?」
「? 特に何もした覚えはないけど」

ぐいっと来てる理央ちゃん。
ちょっと怖い。

「……おまんじゅうちゃん?」
「ぎゅい」

気が付いたら近くに立ってたサキュバスさんのお胸で喜んでたおまんじゅうが、理央ちゃんのジト目で必死に抗議。

「チョコちゃん……は、そういうのはないよね」
「ぴ」

チョコもやっぱりサキュバスさんたちの手のひらから抗議。

「?」

「……エリーさん?」
「可能性としましては」

そんな2匹を抱き上げ、歩いてきて渡してくれるエリーさん。

「先ほどの戦いの最中、ユズ様は――おやびん様、そしてワタシを経由し、極大魔法に到達する規模の魔力を行使しました。 それも、炎に闇と2種類も」



極大魔法?

「そもそも、この配信システムというものは、人間様たちがダンジョンのシステムへ介入して――ハッキングをして構築したもの。 ですので、そのダンジョンそのものへ影響を及ぼすほどのユズ様でしたら」

「あり得なくはない……ですか」
「はぁ……柚希さんだからね……」

「?」

ダンジョンのシステム?

ハッキング?

「……?」

【さすがはちょうちょだ】
【これがバタフライエフェクトか……】
【草】
【うまいこと言ってんじゃねぇ!!】
【繋がってしまったな……】
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

最強のコミュ障探索者、Sランクモンスターから美少女配信者を助けてバズりたおす~でも人前で喋るとか無理なのでコラボ配信は断固お断りします!~

尾藤みそぎ
ファンタジー
陰キャのコミュ障女子高生、灰戸亜紀は人見知りが過ぎるあまりソロでのダンジョン探索をライフワークにしている変わり者。そんな彼女は、ダンジョンの出現に呼応して「プライムアビリティ」に覚醒した希少な特級探索者の1人でもあった。 ある日、亜紀はダンジョンの中層に突如現れたSランクモンスターのサラマンドラに襲われている探索者と遭遇する。 亜紀は人助けと思って、サラマンドラを一撃で撃破し探索者を救出。 ところが、襲われていたのは探索者兼インフルエンサーとして知られる水無瀬しずくで。しかも、救出の様子はすべて生配信されてしまっていた!? そして配信された動画がバズりまくる中、偶然にも同じ学校の生徒だった水無瀬しずくがお礼に現れたことで、亜紀は瞬く間に身バレしてしまう。 さらには、ダンジョン管理局に目をつけられて依頼が舞い込んだり、水無瀬しずくからコラボ配信を持ちかけられたり。 コミュ障を極めてひっそりと生活していた亜紀の日常はガラリと様相を変えて行く! はたして表舞台に立たされてしまった亜紀は安らぎのぼっちライフを守り抜くことができるのか!?

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう

果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。 名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。 日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。 ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。 この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。 しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて―― しかも、その一部始終は生放送されていて――!? 《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》 《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》 SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!? 暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する! ※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。 ※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

辻ダンジョン掃除が趣味の底辺社畜、迷惑配信者が汚したダンジョンを掃除していたらうっかり美少女アイドルの配信に映り込み神バズりしてしまう

なっくる
ファンタジー
ダンジョン攻略配信が定着した日本、迷惑配信者が世間を騒がせていた。主人公タクミはダンジョン配信視聴とダンジョン掃除が趣味の社畜。 だが美少女アイドルダンジョン配信者の生配信に映り込んだことで、彼の運命は大きく変わる。実はレアだったお掃除スキルと人間性をダンジョン庁に評価され、美少女アイドルと共にダンジョンのイメージキャラクターに抜擢される。自身を慕ってくれる美少女JKとの楽しい毎日。そして超進化したお掃除スキルで迷惑配信者を懲らしめたことで、彼女と共にダンジョン界屈指の人気者になっていく。 バラ色人生を送るタクミだが……迷惑配信者の背後に潜む陰謀がタクミたちに襲い掛かるのだった。 ※他サイトでも掲載しています

処理中です...