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8章 「ユズワールド」脱出と、新顔2匹/人と

239話 【悲報・ユズちゃん、やらかした】

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火の玉。

それにどんどん集まっていくモンスターたち。

……なんだか、綺麗だ。

【ぽけーっとしてるユズちゃん】
【自分の仕業だとすら……もう……】
【おおぅ……(顔を覆う)】
【ユズちゃん……みんなにお世話されてね……】

「あれのおかげで……モンスターの大半は無力化できているのか。 もう俺たちには見向きもしていないな」

「あれだけの魔力の塊ですので、我先に取り込もうと本能的に……まぁあまりにも巨大なので吸い込まれるのですが」

【誘蛾灯か】
【なぁにこれぇ……】
【おやびんのブレス……のはずだったんだがなぁ】
【違う……これブレス違う……】
【炎系魔法の極大魔法だって言うからな……】

「なら、俺たちがワイバーンに乗って残党を刈っていけば」

「ええ、そう遠くないうちに、殲滅できるかと。 あれに吸い寄せられない個体はどれも強力ですが、逆に申せば――それだけを倒せば」

【なるほど】
【ユズちゃんすごいね!】
【問題はなにひとつ理解していないことだがな!】
【草】
【ユズちゃん……】
【ユズちゃんは何してるのかな?】

ごおおおお。

すごい音。

おかげで、隣に来てエリーさんと離してる優さんの言うことも聞こえない。

することもないし、手でも握ってよう。

なんだか分からないけども、こうやってると何かがほわんってなるんだ。

【おててにぎにぎ】
【にぎにぎ】
【ずーっとにぎにぎしてるおてて見てるぅ……】
【草】

【ユズちゃん……】
【ちょ、ちょうちょするよりはマシだから……】
【そうだね! おやびんとエリーちゃんがホールドしてくれてるからね!】
【なるほど……ユズちゃんがやらかさないためには、これくらいのフォーメーションが必要だったか……】
【草】

「……あの、モンスターたち、無限に湧き出てきてますけど……?」

「大丈夫です。 あの極大魔法のあたりにちょうど、大きな転移陣があるようですから、あれがある間は増えません」

「……柚希先輩のあれ、すごいんですか?」
「予想外かつ想定外ですが、結果的にはほぼ放置で片付きますね」

【しゅごい】
【もしかして:ユズちゃん、ファインプレー】
【ファインプレーもなにも、特大ホームランだぞ】
【モンスターの大半を無力化、さらに新規POP制限か】

反対からは理央ちゃん。

けどやっぱり聞こえない。

エリーさんの言うことなら半分くらい聞こえるけど……なんか聞き取りづらいんだよなぁ。

なんでだろう。

みんなの会話が「まるで外国語みたいに」聞こえるんだ。

【ユズちゃん、やることはすごいんだよなぁ】
【本人の意識しない形でな……】
【固有能力だからな……】
【代償は正気度か……】
【ああ、なるほど、それで……】
【草】

【ここまで来ると、無自覚で動いてもらった方が楽だから……】
【それ、まーた何かしでかしたときにもう一度言ってみろ】
【ごめんね】
【いいよ】
【草】

『――――――――――――――――』

声。

「はっきり聞こえないけども、みんなの声よりもはっきり聞き取れる音」だ。

また、この声。

これまでとは違う声。

「………………………………」

【草】
【まーたきょろきょろしてる……】
【ユズちゃん? そこにはなんにもないよ??】
【なぁんでこの子はなにもないとこ探してるのぉ……?】
【なんかこわいよー】

【ま、まあ、猫が何もないとこじっと見る感じって思えば……】
【あーあるある】
【人間には聞き取れない音を聞き取っているんだろうな】
【草】
【妖精さんだもんね!】

「? ユズ様?」
「……ううん、なんでも」

……振り返ったけども、それはエリーさんからのものでもない。

「きゅ?」
「ぴ?」

2匹のでもない。

……じゃあ、これは誰のなんだろう。

もうちょっとでちゃんと聞こえそうなのに、音だけが聞こえて声が聞こえない。

そんな、もやもや感。

「………………………………」

「柚希先輩、なんで手を――」

なんとなく。

なんとなくで、僕は手を延ばす。

『――――――――――――――――』

僕の手がその声に触れ――

――――――――ずぅん。

「?」

その瞬間――世界が、きしんだ。

よく分からないけども――決定的な何かが、崩れた瞬間。
あり得ないことが起こったっていうのが、なんとなく分かるんだ。

「――退避します! ユズ様! 皆様! 眷属並びに人間様全てに通告します! 全力退避です!」

「へ?」

「今し方のものは、ワイバーンのブレスが最高までバフされての炎系極大魔法――止まりのはずだったのですが、本当にどうしてか闇系極大魔法になっています!」

【闇系極大魔法?】
【……なんかものすごくヤな予感するんだけど】
【奇遇だな、俺たちもだ】

【安心して? みんなだよ】
【ユズちゃん以外のな!】
【あとおやびんもな!】
【草】

「いえ、これは同時展開……!? 極大魔法の、二重展開……そんな、まさか……!?」

あわてた声。

だけども、あまり集中できないんだ。

【もしかして:魔王が女神に放った、あの魔法】
【ふぁっ!?】
【えぇ……】
【ブラックホールかよ!?】

【確かにビジュアルはそっくりだが……】
【魔王Gが女神を倒そうとしての自爆魔法と同じのをユズちゃんが!?】

「……ええと?」

振りかえると……汗だくになってるエリーさん。

……こんなに涼しい場所で、こんなに風吹いてる場所で、さらには紐しか身に付けてないのに、何が暑いんだろ。

「――吸い込まれます! あれは、魔力を吸い込んで世界ごとを瓦解させる極大魔法なので! ですから全力で、全力であの太陽から離れてくださいぃぃぃぃー!」

【は?】
【えぇ……】
【さすがユズちゃんだぜ!】
【ことごとくを固有能力でかき乱す精霊さんだもんな!】
【ああ、これでますます人外の可能性が高くなったもんな!】
【草】
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