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6章 庭のダンジョンと衝撃

167話 またまた生えてたから、クラスの子と

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「で……また、生えたのか」
「生えたんだなぁ」
「生えたんだろうね」

「星野だからな」
「星野君だし……」
「田中君、ちょっと星野きゅんと抱き合ってくれない?」
「ふざけんな、カメラ向けんな、ナマモノやめろ」

翌日。

そう、翌日。
1日掛かりで、みんなで野菜を収穫して回った、次の日。

……生えてた。

庭一面に、びっしりと、整列した野菜の葉っぱが。

……なんでぇ……?

朝早くに来てくれた光宮さん。

「これはもうダメですね。 応援呼びます」って言った彼女をぼんやり見てたら、気が付いたらクラスのみんなが家に来てた。

みんなジャージで。
用意がいいね。

「しっかしまぁ、昨日の配信で見てたのがなぁ」
「ひと晩で復活するとか……怖くね?」
「こわい」

「でもまあ、ユ……星野の家だしなぁ」
「な」
「ユズ……レモンっておいしいよね!」
「お前、気をつけろって」

なんでもみんなヒマだったそうで、クラスのほぼ全員がそろってる。

もちろん田中君も来てる。

……なぜか、一部の女子に囲まれてるけども。

田中君、いつの間にモテるようになったんだろうね。
顔、真っ赤にして怒ってる風だけども、きっと嬉しいんだ。

「でも良いの? 星野君、私たちにバイト代なんか」
「あ、うん。 こういうのは全部光宮さんに任せてるから」

「昨日帰ってから、オークションサイトで夜なべして1つ1つ丁寧にページを作ったんです」って言ってたし。

で、今朝申し訳なく電話したらため息ついてたもん。

そんな彼女が「オークションの利益から出しますからね」って言ってたんだ、僕が口挟むのはマズいよね。

1年中、ほとんど上機嫌な彼女が疲れとかでご機嫌ななめなときは怖いんだ。

「しっかし星野の家広いな」
「古い家だからね」
「あー、昔の家ってお庭までセットで広いよね」

「俺んちもこうだぞ」
「私、駅前に引っ越してきた組だからなぁ」
「昔はこの辺、田んぼしかなかったらしいし」

田舎特有の、土地は広くってもその土地に値段がほとんど付いてないやつ。

古い家だから廊下もぎしぎし言うし、あっちこっち穴開いてるし、大雨だと水漏れするし、雑草むしりで何日もかかると良いことはひとつも無いけどね。

「しかし……」
「ああ……」
「あらためて、今の星野は……」
「うむ」
「気をつけろ、星野だから大丈夫だが、バレるんじゃないぞ」
「分かってる」

「あー、あれがちょうちょってやつか」
「ぶふっ」
「だから止めろって!!」
「バレたら気まずいなんてもんじゃ……いや、星野だから案外何ともないかも」
「だろうな」

少し会ってないあいだに、なんだかみんなは共通の話題で盛り上がるようになったらしい。

こういうのを見てると、ちょっと悲しくなる。

「けど良かったな星野、退学も留年もしなくって」
「あ、そうだね。 来年も君たちと一緒なら嬉しいなぁ」

「う゛っ」
「うっ……」
「?」

なぜかみんなを警戒して僕の腕に収まってるおまんじゅうとチョコ。

2匹のぬくもりをもふもふ感じながら適当に返事を返すけど、みんなはやっぱりなにか楽しい話題で盛り上がっているらしい。

「……星野君? なんでそんなに髪の毛長いの……?」
「前髪も、かわいいヘアピンしてないと両方、前見えなくない?」

「うん……おまんじゅうが怒るから」
「あー」
「ユニコーンなんだっけ? ……あっ」

「そ、そう! 理央ちゃんから! 理央ちゃんから聞いたの!」
「あ、うん、そうだろうね?」

久しぶりに会っても、みんなの見た目はそんなに変わってない気がする。
そういう意味じゃ、僕の方が変わったのかな。

「……なんでそんなにかわいい服着てるの?」
「光宮さんが、今日はこれ着ろって」

僕は、おまんじゅうたちよりも下に目線を落とす。

ふかふかな感じのスカート、ひらひらしてるのがたくさん付いてるシャツ、膝の上までの靴下……ニーソってやつ。

よく分からないけど、ゴスロリってやつなんだって。
マンガとかでたまに見るやつなのは知ってる。

「……うん。 かわいいわこれ」
「画面なんかとは比べものにならないわね」
「ああ……」
「しかも、俺たちだけが星野をちゃんと知ってるんだ……」
「ああ……!」

みんなに見られるのはちょっと恥ずかしいけども、よく考えたら光宮さんにひん剥かれて女の子な格好して学校行ってたこともあるし、スカートだったときもそれなりにある。

配信じゃ、みんなの何重何百倍の人に見られてきたんだし……今さらだよね。

「なぁ星野」
「あ、田中君」

そっとおまんじゅうを撫でようとして、「ぎゅへぇ」って鳴かれながら絶妙に体を凹ませてその手を回避されて凹んでたらしい田中君が、いつもの怖い顔でにらんでくる。

「……背ぇ、縮んだりしてないよな……?」
「そんなことあるわけないじゃん。 どしたの」

「いや、なんだかお前が小さく見えてな」
「……これでも、前より良いもの食べてたくさん寝てるから、体重増えたくらいなのに」

そういえば、羽が生えたときはおっぱいも出現してたけども、身長も伸びてたんだよなぁ。

あれ、背の高さだけならないかなぁ。

そうしたら、田中君の顔が高いとこから降ってくるのがちょっとはマシになるのに。

「はーい! じゃあみなさん、お願いしまーす! あ、引っこ抜いた野菜、あえて土とか着いたまま持って来てくださいね! で、柚希先輩は拭く係です!」

「「はーい!」」
「なんで?」

「柚希先輩が丁寧に拭くのもお値段に入るからです! もちろん動画で!」
「なんで?」

それから結局、何でかは教えてくれなくって、僕はただみんなを眺めながら渡された野菜を拭いて回る仕事を撮られるだけだった。

……けど、なんか嬉しかった。

だって、久しぶりにみんなに会えて――僕が、まだ高校生で居られてるんだって、実感できたから。

「星野君が1本1本丁寧に……」
「おいやめろ実況するな、やばいから」
「大丈夫、またちょうちょになってるから」
「ああ……」
「前からこうだったけど、ちょうちょって言われるとさらに……」
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