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5章 戦いの前の休息

138話 月岡さんたちが来た

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月岡さん――優さんが謝りたいって連絡があってから、数日。

「そんなのいいです」って何回言っても聞かなくって、結局来ちゃうらしい。

今朝になって「ご都合が悪くないなら今から行きます」って連絡があったもんだから……光宮さんを呼んで、しょうがなく待ってて。

あやさんたちは、用事が入っちゃってるとかで、来れなくって。

で、いざ玄関に行ってみたら優さん……と、そのパーティーの女の人たち全員が、両腕にいろんなデパートの紙袋をぶら下げて待ってた。

「まず、非礼を詫びさせてください。 俺……いえ、私が嘘をついて――」

「いえ! おかげで助かりましたし!」
「そうですよ、僕だって……なんでもないです」

大学生の大人の人たち全員が頭を下げている光景は、なんだかものすごくそわそわして困るもので。

「しかも結局役に立てず、柚希さんたちを危険に晒して」

「え、いや、あれは誰が護衛でもしょうがないんじゃないかなぁって……」
「そうですよ。 魔族?でしたっけ……僕が寝ちゃってたのを、守ってくれてたんですよね?」

ずっと頭を下げている5人。

彼女たちは、そうして光宮さんといくら言っても頭を上げてくれなくって。

「だから――」

「……ゆず?」
「あ、お母さん」

玄関先で大声出してたからか、お母さんが廊下に顔を出してくる。
決して大きな声じゃないけども、その声でしんとなった廊下には、その声がよく響く。

「ごめんなさいね、みなさん。 こんなところからで」
「え、いえ……」

多分パジャマだからか、顔しか出してないお母さん。
でも、家主の大人が出てきたからか、優さんたちはきょとんとしていて。

「今日は暑いですから。 せめて、リビングで休んで行ってくださいね」

「えっと……は、はい……」
「いい……のかなぁ……?」
「でも……」

「私は、そうしてくれると嬉しいかなぁ。 柚希の、お話相手になってくれたら……ね?」

さすがはお母さん。
最近は弱ってるとは言っても大人だ。

有無を言わさない、けども優しい言い回しで……まるで、家に来た僕の友達に話しかけるようにして。

「……ゆう。 上がらせてもらお」
「ですね。 お邪魔しまーす」
「あ、ちょ……」

それで表情を切り替えた、優さん以外の4人が――優さんを引き連れて、ようやくに上がってくれた。





「改めて……申し訳ありませ」
「優さん」

案内した先で、テーブルに着いてくれた5人。
また頭を下げそうだったから、先に僕からも言っておく。

「ありがとうございました。 僕たちを、守ってくれて」
「いえ、でも」

「僕たち、優さんが居なかったら……どうしようかって、困ったまま大変なことになってました」
「ですよねぇ。 あの廊下でも、優さんが居なかったらやばかったですし」

「で、でも」
「あのダンジョンがおかしかったのも、多分魔族のせいだってことです。 ……魔王軍幹部を、単独で撃破できたとは言っても。 柚希先輩が特効だったとしても、その柚希先輩が動けるようになるまで守ってくれた優さんです、感謝しかしてないんですよ? 私たち4人全員」

僕が特効。

……結局、どうやって倒したのか教えてもらえないんだよなぁ……。

「ですよね?」
「うん。 あ、はい、そうなんです。 とっても感謝してます」

光宮さんがそうたたみかけると、頭を下げようとしたまま困った顔つきで固まってる優さん。

「……ゆう、ここまで年下の子に言わせるのは」
「ねぇ……?」
「気にしないんだって言ってくれてるんだから。 ね?」

「……うん」
「謝りに来たのに気まずくさせるの良くない。 それに」

周りの人たちも……みんな控えめだけど大人っぽいお化粧してて綺麗……僕たちの味方らしい。

「謝るとしたら、よ?」

その中の1人が、いたずらっぽくにやりとして。

「そろそろ始まるって分かってたのに、よりにもよってダンジョン配信だってのに。 朝、寝坊して、出かける前にポーチを丸ごと忘れちゃって。 で、察してくれてたそこの子……柚希ちゃん?よね? ……に」

「あ! そーそー、脱がしてもらってつけてもらうまでした、そっちでしょ?」

「え……あっ」

がばって優さんが僕を見て――真っ赤になって、もっと縮こまった。

「………………………………」

……なんだか、そう意識すると途端に恥ずかしい。

「あはは……柚希先輩、においに敏感なので……小さい頃からずっと……」

「幼なじみの百合君が言うんじゃ、ねぇ」
「そういう子、クラスにも居たっけなぁ」

………………………………。

女の人ばっかりに囲まれて、こんな会話になるのはとっても……あ、いや、別に学校行ってたとき、女子に囲まれてたからあんまり変わらないか。

そう思うと恥ずかしさもどっかへ行っちゃう。

「きゅ、きゅひぃぃぃぃ……!」

「やー、かわいー♥」
「本当にぴくぴくしてるー!」

「ぴ?」

「……すげぇ……普通なら一瞬で逃げちゃうのに……」
「こんなにメタリックなんだねぇ」

優さんほどには気にしてないらしい他の4人は、さっさと……さっきからずっと愛でられてる2匹に夢中。

……おまんじゅう、吸わないでね?

絶対だよ?

いや、この人たちじゃ「やーん♥」とか笑って流してくれそうだけど、見境なしはダメだよ?

吸うんなら僕のだけだよ?

良いね?

最近は両方ともぷくってなっちゃってるくらい腫れてるんだ、どうせなら君が吸うのは僕のだけにしてね?
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