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4章 初心者ダンジョン卒業、中級者ダンジョンへ

128話 国家機密なんだって

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「あ、もう部屋のカギは開けてもらっても構いませんよ。 でも話が終わるまでドアは閉めておいてくださいね」

どうぞ、って手で促され、僕たちは壁に置いてあったイスを引っ張り出す。

「一応これは機密事項――後ほど詳しく説明しますけど、ダンジョン協会を飛び越して国家の機密に指定される情報ですから」

「こ、国家……」
「落ち着きましょう、先輩。 私たちが居ます」

「ひなたは秘密にするよ!」
「私もです。 ……先ほど誓約書に書きましたし」

「そうですよ! 私たちが誰にも言わないので、みんなには絶対にバレませんから安心です柚希先輩!」

「ええ、なによりも貴女たち自身の安全のための機密指定です。 しっかりと保護しますからご安心くださいね」

【生中継! 配信されて全世界おっぴろげだよ国家機密!】
【ご安心できません教官さん! まる見えです!】
【理央様! 教官さん! 節穴アイです!!】
【節穴過ぎて草】
【草】

【なぁにこれぇ……】
【まーたユズちゃんのせいだぞ】
【ああ……】
【なんでユズちゃんっていっつもこうなんだろうねぇ……】

【もしかして:固有能力の代償】
【あー】
【精神を破壊する能力……代償として常識を破壊するんだ】
【だからあんなギャグ展開に……】

【そもそもユニコーンからしてちょっとおかしいしな】
【シルバースライムも充分おかしいし】
【極めつけはユズちゃん自身……】
【テイマーは、普通なら自分自身は強くない  その常識を逆手に取られたな……】
【まさかのユズちゃんが1番やべーパターンだったとは……】

【このお姉さんも、ユズちゃんのギャグパワーを甘く見てたな……】
【天然ってこわいね】
【怖すぎて草】
【行きすぎた結果として魔族を撃退できたんだけどねぇ】
【やはり精神攻撃……時代は精神攻撃なんだ……】

【もしかして:ギャグ空間、ユズちゃんの種族的なあれ】
【えっ】
【いやいや……いやいや】
【でも、ふわふわしてつかみ所のない妖精みたいだし……マジでありそう】

【否定する要素が1個もなくて草】
【だってユズちゃんだし……】
【全世界生中継だし……】
【草】
【妖精ユズちゃん……】
【ありだな】
【むしろ違和感ゼロ】

「………………………………」

しばらくぼーっとしてたらしい僕。

そっと、両肩に触れる感覚……3人が、僕の周りに集まってたんだ。

「だいじょうぶ? ゆずきちゃん」
「ご気分が優れないようでしたら……」

「あ、ううん、大丈夫。 ただびっくりしてるっていうか、まだ実感ないっていうか」

そもそも僕、身体能力で言えばひなたさん以下だしねぇ……今日もぐっすり寝ちゃってたし。

今のも、別にショックとかそういうわけじゃなく、ただ単に実感がなかっただけだもん。

「当面のあいだは魔王軍の警戒のため、ダンジョンは全面封鎖……ですから、戦闘の機会がなくて実感はまだ先だと思いますが、とにかくあなたのレベルは飛び抜けているんです。 それが、どういった形で戦闘力になるかはこれからですけど……」

アタッシュケースみたいなのに水晶玉をしまいながら、お姉さんが言う。

「そもそもテイマーさんですからね。 あなた自身ではなく、モンスターを使役しての戦闘力が高いという理解で問題ありませんよ」

「でも僕、この歳まで適性が発現しなかったんです」
「あ、そうです、先輩、毎年の学校ので全然……だから落ち込んでて」

「そうだったの?」
「……私と同じですよね。 私も、大学に入ってから今さらで」

「ええ、通常、適性のある方は20までに発現することが……平均で13歳で。 でも、傾向としましては」

ぱたんと蓋を閉じる彼女。

「――『発現が遅いほどに潜在能力は高い』んです。 もっともただの傾向ですし、戦闘経験とかパーティーでの連携とかもありますし、肉体能力の全盛期は20歳前後ですから、成人後になりますと幼くして発現した人との大きな差はあまりありませんけどね。 特に前衛職の方は」

【へー】
【あやちゃんって大学生になってからなのか】

【ひなたちゃんみたいに早く発現してもあやちゃんみたいに遅くでも、トータルでそんなに変わらないってなんか不思議】

【え? ってことはユズちゃん、本当に高校生?】
【え、ないでしょ】
【ないな】
【ありえるはずがない】
【天文学的な確率だね】

【草】
【お前らひどくない?】
【ユズちゃんは一応本当に高校生だって言い張ってるんだから……】
【自称なら16歳か17歳……確かに遅めではあるか】
【17歳を自称する小学生ユズちゃん】

【でももし17歳とかならとっくに諦めてるよね、ダンジョンとか】
【あやちゃんも大学入ってっていうことは、18歳とか19歳でってことに……】

「……これまでの配信で、あなたはすでにかなりの知名度です。 しかも、ユニコーンというレア、かつ強力なモンスターは、他国からもかなりの関心を持たれているはず」

すっ、と書類の束をクリアケースから出している教官さんが言う。

「強制ではありません。 が、今後、強引な手段でユニコーンやシルバースライムを……あるいは」

とすっと手渡された書類には、「身辺警護」「身の安全」「政府による保護」っていう物騒な文字。

「あなた自身を、我がものにしようとする勢力が現れるでしょう。 いえ、すでに周囲に居るかもしれません」

「……あの、結構前から柚希先輩の周辺に、不審者の情報があって、それで」

「警察も、極秘に警護を始めているようですけど……そちらの返答次第によっては」

僕の前に来てしゃがんで、見上げてくれるお姉さん。

「……ご家族ごと、ご友人ごと。 心配でしたら、パーティーのみなさん、全員ごと。 このまま、保護下に入ることも……心配でしたら、可能ですよ。 この件が漏れる、その前に。 知られる前に、安全に」

「教官さん……」

【あの……もう漏れてます……】
【あの……もうだめです……】
【やらかしちゃってます……】
【盛大に漏れてます……】

【なんならコメント欄に外国語めっちゃはびこってます……】
【セルフご開帳です……】
【秘密なんてないんです……】
【全世界自己開示とかやらかしちゃってます……ユズちゃんだから……】

【草】
【草も生えない】
【これやばくない?】
【やばくないとでも??】
【もうだめだ……】

【ユズちゃんに関わったらなんでもおかしくなっちゃうからね】
【本当におかしいんだよなぁ……】
【なんなの? ユズちゃん、ほんとなんなの??】
【天然でちょうちょなロリっ子だよ】
【もはや存在がバグ】
【よ、妖精だから……】
【ユニコーンを従える妖精だもんな!】

【ちょっと、誰でも良いからユズちゃんとか理央様とかのリアルの友達とか、見てたら電話してやって……盛大に国家機密暴露し放題配信しちゃってるからさ……】

【もう手遅れでは?】
【い、一応、やばい情報はAI補正で……あれ?】
【そういや全部聞こえてる……?】
【名前以外は基本、全部聞こえてるよな……?】

【悲報・国家機密って言ってんのに全部筒抜け】
【えぇ……】
【もしかして:やっぱりちょうちょ】
【バタフライエフェクト……なるほど……】
【草】
【早く! ひなたちゃんでもあやちゃんでも知り合いは早く! マジでやばいからぁ!!】
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