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4章 初心者ダンジョン卒業、中級者ダンジョンへ

124話 地上に戻って

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「……と、このようなことが起きたんです」
「そっかぁ」

僕が気持ちいい眠りから覚めると、そこは見たことのある部屋。

ゲート前の休憩室。
そこには……抱きついて寝てた理央ちゃ……光宮さんに、みんなが。

で、起きたのが分かったら飛び起きた光宮さんがわんわん泣いちゃって、なだめるのに大変で。

それで、何が起きたのかさっぱりだった僕はいろいろ聞かされたんだ。

「……ほんとに起きたの? そんなこと」

「ぐすっ……信じられない気持ちは分かりますけど柚希先輩が危うくNTRれそうになって……」
「なにそれ?」

「ゆずきちゃん、ずっと寝てたもんねぇ。 寝起きってよく分かんないよね!」

「ええ、魔族との場でも寝ているか寝ぼけていましたし……魔力切れと疲れなら仕方ありませんね。 ……ところで寝取られ?とは……?」

「んー……何かぼんやりしてる……」

なんかみんな神妙な顔してるし、さっきまで付き添ってくれてた救護班の人も落ち込んだ顔してたし。

だから嘘じゃないとは思うんだけども……いまいち実感がなぁ。

「僕が、魔族?を倒しただなんて……本当なの?」

「……あれを倒したというのは……」
「でも実際、あれから出てきませんし……」

なんか僕が何かをして倒したらしい。

その何かっての、何回聞いてもごまかされるんだけどね。
なんでだろうね。

「きゅっ」
「ぴっ」

「あ……2人とも、さっきはありがとね」

ぴょんと乗っかってきた2匹。
おまんじゅうもチョコも……うん、元気そうだね。

「あ、そういえばなんですけど……先輩?」
「んぅ?」
「あ、違います違います……いえ、モフるのは大歓迎ですけど」

声をかけてきたからおまんじゅうたちを渡すと、なんか困った顔しながら受け取ってくれる光宮さん。

「で、です。 その……」
「柚希先輩が倒した魔族が、魔王軍のお偉いさんかもって。 だから報復あるかもってことで、今から総動員かけるんだって」

「そ、総動員……」
「各ダンジョンは数時間前をもって全て閉鎖……以降は、安全が確保されるまでは冒険も不可能とのことです」

「え」

ダンジョンに……潜れない?

「……じゃあ、初心者ダンジョンの攻略は」
「レベル的にはもうとっくに中級者ダンジョンで良いって月岡さんも言ってましたけどね……でも」

「当分は入れないって。 あと、ひなたたちダンジョン潜りさんたちはできる限り、パーティーごとに近い場所で待機しててって。 学校とかは臨時休校。 ……地上にあふれるかもしれないからって」

「……そっか」

魔族。
魔王軍。
ダンジョンの閉鎖。
招集。

「……なんだか大事になっちゃってるね」
「でも、この程度で済んでいるのはきっと、柚希さんのおかげですよ」

「そうですよ! 魔族の推定幹部を撃退したんですから!」
「だからそれはどうやって」
「だからとにかくしばらく休みましょう! どうせ潜れないんですし」

「ひなたちゃん? 僕はどうやって」
「ひなたはよく分からなかった……けど、とにかくゆずきちゃんは強いんだって!」

「そっか……あやさん?」
「わっ……私は……そ、そうです、報酬! せっかくですから、柚希さんが起きたらみんなでって!」

「………………………………」

……なーんかはぐらかされてる気がする。

僕、そんな変な倒し方したのかな。
でもぜんっぜん覚えてないし……。

「ほら、途中でダンジョンの生え替わりに遭遇して、そこからすごい数のモンスターたちだったじゃないですか! それで討伐数がすごいことになってるんですよ」

「ひなたたちのレベルも上がってるかなぁ」
「最後、大部屋ですごかったのは柚希さんですが……ええ、きっと私たちも」

んー?

……まぁいいや、みんなが言いたくないならそれで。
あんまり気にしてもしょうがないし。

「あれ? そういえば月岡さんは?」
「治療は終わったんですけど、すぐに協会に呼ばれちゃって……あ、後日会いたいって言ってたので、そのときに話せますよ? 護衛は継続みたいですし」

「そっか……お礼は言いたかったんだけど」

「……柚希さんが寝ぼけていたあれのために、後日はパーティーメンバーの方全員がいらっしゃると……」
「人に話すつもりはないけど、どうしても説明したいって言うことだそうですねぇ」

あれ?

そういえば僕、月岡さんになにかしてあげた記憶が……ずっとしてあげたかった何かがあったはずなのに……。

「?」

「きゅっきゅっ」
「ぴっ」

その「何か」を思いだしかけたって思った瞬間に2匹が飛び移ってきて、また忘れた僕。

ま、いいや、大切なことなら思い出すよね。

「んしょ……あ、体が楽になってる」
「よかった、治癒魔法は結構かけてもらってたんですけど、魔力切れ直後は大変だって聞いてたので」

「僕、2回目だからね。 ちょっと慣れたのかも」

起き上がって、脱がされてた靴を履いて。
ちょっと歩いてみても特段にだるかったりしないし、多分ちゃんと寝たからなんだろう。

「……?」

なんか、すっごく体が調子良い感じ……なんでだろ。
なんていうか、普段が50だとしたら80くらいになってる感じ。

「救助隊の人たちが、廊下や大広間でのドロップ品などを回収してくれていたみたいです。 私たちにって保管してくれていましたので……ありがたく受け取りましょう」

あやさんが、ちょっといたずらっぽい笑みを浮かべる。

「私たちの、戦利品ですから。 ね?」
「結構強かったもんね! どのくらいあるんだろー」

「そうね、生え替わりからは中級者ダンジョンくらいの強さはあったし……最高記録更新かもね!」

僕が普通に歩けるって分かったからか、露骨に安心した様子で3人の顔が明るくなる。

……また、心配かけちゃったな。

「もっと、強くならないと」

「きゅ?」
「ぴ?」

ぎゅっ。
おまんじゅうとチョコを抱きしめながら、僕は思う。

いざってときに……次こそは、眠くならずにみんなを助けられるようになりたいって。

だって、僕は男だもん。

決してリーダーでも最年長でもないけども、それでも僕がみんなを守らなくちゃって。

もっと、もっと。

男として、この子たちを守れるようにならないと。
……まずは、途中で寝ちゃったりしないようにしないと。
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