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3章 珍しいスライムさんをゲット
96話 「ユズちゃん」親衛隊結成
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「――さて、今日集まってもらったのは他でもありません、先輩方。 実は柚希先輩は最近話題沸騰中の」
「ねぇ理央ちゃーん! 星野君が休学中で、毎日でもいちゃいちゃできるし配信でも一緒! これはさすがにもうくっついたでしょ!」
「………………………………」
「……あ、ごめん」
「……いいんです」
「帰り、グチ聞くよ……?」
しょっぱなから悲しい空気の立ちこめる教室内。
そこには、星野柚希の同級生たち……だけではなく、彼のことを知っていて、それでいて「ユズちゃん」のことも知っている生徒が集まっている。
それはもう、高3から高1まで。
なんならリモートで大学生や中学生までも。
なにしろここは、過疎の進む地方の公立校。
ずっと公立で来た彼の顔見知りや彼の友人は、ほぼイコールで同世代だ。
「り、理央ちゃん! それより説明!」
「どうせ私なんて……お風呂で裸の先輩でさえ襲えないヘタレですよー……」
「ダメだこりゃ」
「しょうがないよ、理央ちゃんだもん」
「お風呂に突撃するまでは良いのに、そこから先がダメだもんねぇ……」
「どう考えてもあっちから期待できないのに、あっちから手を出してほしくって誘うだけとかさぁ……」
「仕方ねぇな! ここはアイツの1番の理解者の俺が」
「あ、田中先輩に取られるくらいなら私がやります」
厳しい現実を口々に投げつけられた理央はいじけかけたが、柚希のこととあって鼻の膨らんでいる田中という男子が前に出ようとしたので立ち直った。
「あ……え?」
「……田中……お前……」
「お前のことも応援はする……応援はするが」
「女子の大半は理央ちゃん推しだから……」
「大丈夫だ田中! お前と星野の薄い本を描いている女子もそれなりに居るぞ! 読むか?」
「要らねぇ!? んなもん見せるな本人に!?」
「こほん……さて。 まずは柚希先輩のためにお集まりいただき、ありがとうございます」
「えーっと。 確かあの子狙ってる悪いやつらのことだよね?」
「居るよねぇ最近……噂の強盗たちの下見って説もあるけど」
狭い教室内。
壇上で話し出した理央の声は、よく通る。
「みなさんもあると思います。 通学路とかで柚希先輩のこと嗅ぎ回ってる人たちに話しかけられたの」
「あるな」
「ああ」
「もちろん知らないって言うけどな」
「ああ、『星野』のことは知ってるが『ユズちゃん』は直接見たことない。 嘘じゃないもんな」
「ああ、『ユズちゃん』状態の星野はな!」
「まさか星野があんなにちょうちょだとは……」
ただでさえ中学生、もしくは言動から小学生にも見えてしまう柚希。
スラックスの制服――彼のそれは、もう地球上から消え去ったが――であったとしても、年下の女子と一瞬でも見間違えたが最後、その気のない男子であっても女子と認識するしかない、同級生の「男子」。
彼とあまり話さなくとも、見ているだけで庇護欲をかき立てる――ために、彼の顔見知りの大半は「護らねば」と思わずにはいられない。
それが、星野柚希。
クラス替えのたび、他区からの合流があるたびに告白ラッシュ――男女両方からの――を経験する、本人の自意識も性格も話し方も男子なのに、なぜか女子にしか見えない「男の娘」だ。
「まー、多分配信で『ユズちゃん』観て、んで大体の場所知って手当たり次第なんだろうな」
「聞いてくる奴ら、半分くらい『カメラ良いですか』って撮りながら聞いてくるしな。 もちろん良くないって返すけどさ」
「でもなんで小学校行かないのアイツら?」
「ほら……今どきは声がけ事案あるしさ……」
「ああ……」
「い、一応『ユズちゃん』自身も高校生って言い張ってるし……」
「事実……なんだけどなぁ……」
「どう見たって中学生以下だしなぁ……」
「中学校周辺も通行人の目が厳しいらしいぜ」
「しゃあない」
はぁ、とため息をつく一同。
その中には中学時代の柚希を知っていて――彼の水着姿だったり、体育での着替えを一緒に経験した男子も含まれており。
「でも……正直分かるよな」
「分かる」
「ああ……」
「もし、星野のこと男子って知らなかったら……」
「ああ……」
「毎年恒例の告白祭りに、俺たちも……」
「男子だって知ってても……知ってても……!」
「……お前ら、俺と言ってること同じじゃねぇか!」
「いや、だって田中は……」
「田中はなぁ……」
「なんだよ!!!」
「だってキモいもん」
「うん、キモい」
「だからなんでだよ!?」
「いや、田中×星野きゅんは人気だけどさ……男のツンデレをリアルで見ると……おぇっ」
「お前らなぁ……!」
「どう見ても地元のヤンキー、コワモテなのに行動の中心が柚希だとか……」
「お前らの友情って想像できないって言うか……」
「まぁまぁ、田中君が受けのも描いたげるから……げへへ」
「ナマモノはやめろって言ってんだろ!!」
「田中……そういう反応するから描かれるんだぞ……?」
「田中は星野とは別の意味でちょろいから……」
◇
「……というわけで、今後は部活ない人中心に柚希先輩の警護をお願いします」
「分かった。 適当に見回って、変なの居たら通報祭りね?」
「例の強盗で警察も神経尖らせてるだろうし、『女子』を捜して歩いてる奴らなんて不審者でいいしな」
「しかも『ユズちゃん』なら小学生とか言われてるレベルだから、ロリコン確定だしな」
「まぁ問答無用だわな、特に社会人相手なら」
田中がいじられているあいだに各生徒の持ち場と時間帯で、それなりのエリアと場所がカバーされることになったらしい。
「柚希先輩のバイト先は田中先輩の担当なので、例え先輩がガチ恋勢に刺されたとしても守りきってください」
「そうよー、そうすれば星野君もちょっとは意識し……ごめん、しないとは思うけどがんばって」
「星野はなぁ……」
「星野はねぇ……」
「授業中も窓の外見てるしなぁ……」
「そのくせ先生の言うことは聞いてるし……」
「でもうわの空だからなぁ……」
「男子どころか女子からの告白も、告られてることすら分からずに断ってるしなぁ……」
「告った奴らかわいそう」
「俺、断られたけどなんかぞくぞくしたぞ」
「戻って来い……いや、あっち行け」
「新しいネタはここ?」
「やめろぉ!?」
「……なんかさ? クラスの会話とか……『ユズちゃん』の待機所とかのコメントっぽくなってきてない?」
「うちのクラスの9割がメンバーシップに入ってるからな……理央ちゃん含めて、4人全員の……」
「星野……ついにうちのクラスまで沼らせたか……」
「大丈夫、担任から保健教師まで沼ってるから」
「星野……いずれは何かしらやるとは思ったが」
「まさかアイドル方向とはな……」
「ねぇ理央ちゃーん! 星野君が休学中で、毎日でもいちゃいちゃできるし配信でも一緒! これはさすがにもうくっついたでしょ!」
「………………………………」
「……あ、ごめん」
「……いいんです」
「帰り、グチ聞くよ……?」
しょっぱなから悲しい空気の立ちこめる教室内。
そこには、星野柚希の同級生たち……だけではなく、彼のことを知っていて、それでいて「ユズちゃん」のことも知っている生徒が集まっている。
それはもう、高3から高1まで。
なんならリモートで大学生や中学生までも。
なにしろここは、過疎の進む地方の公立校。
ずっと公立で来た彼の顔見知りや彼の友人は、ほぼイコールで同世代だ。
「り、理央ちゃん! それより説明!」
「どうせ私なんて……お風呂で裸の先輩でさえ襲えないヘタレですよー……」
「ダメだこりゃ」
「しょうがないよ、理央ちゃんだもん」
「お風呂に突撃するまでは良いのに、そこから先がダメだもんねぇ……」
「どう考えてもあっちから期待できないのに、あっちから手を出してほしくって誘うだけとかさぁ……」
「仕方ねぇな! ここはアイツの1番の理解者の俺が」
「あ、田中先輩に取られるくらいなら私がやります」
厳しい現実を口々に投げつけられた理央はいじけかけたが、柚希のこととあって鼻の膨らんでいる田中という男子が前に出ようとしたので立ち直った。
「あ……え?」
「……田中……お前……」
「お前のことも応援はする……応援はするが」
「女子の大半は理央ちゃん推しだから……」
「大丈夫だ田中! お前と星野の薄い本を描いている女子もそれなりに居るぞ! 読むか?」
「要らねぇ!? んなもん見せるな本人に!?」
「こほん……さて。 まずは柚希先輩のためにお集まりいただき、ありがとうございます」
「えーっと。 確かあの子狙ってる悪いやつらのことだよね?」
「居るよねぇ最近……噂の強盗たちの下見って説もあるけど」
狭い教室内。
壇上で話し出した理央の声は、よく通る。
「みなさんもあると思います。 通学路とかで柚希先輩のこと嗅ぎ回ってる人たちに話しかけられたの」
「あるな」
「ああ」
「もちろん知らないって言うけどな」
「ああ、『星野』のことは知ってるが『ユズちゃん』は直接見たことない。 嘘じゃないもんな」
「ああ、『ユズちゃん』状態の星野はな!」
「まさか星野があんなにちょうちょだとは……」
ただでさえ中学生、もしくは言動から小学生にも見えてしまう柚希。
スラックスの制服――彼のそれは、もう地球上から消え去ったが――であったとしても、年下の女子と一瞬でも見間違えたが最後、その気のない男子であっても女子と認識するしかない、同級生の「男子」。
彼とあまり話さなくとも、見ているだけで庇護欲をかき立てる――ために、彼の顔見知りの大半は「護らねば」と思わずにはいられない。
それが、星野柚希。
クラス替えのたび、他区からの合流があるたびに告白ラッシュ――男女両方からの――を経験する、本人の自意識も性格も話し方も男子なのに、なぜか女子にしか見えない「男の娘」だ。
「まー、多分配信で『ユズちゃん』観て、んで大体の場所知って手当たり次第なんだろうな」
「聞いてくる奴ら、半分くらい『カメラ良いですか』って撮りながら聞いてくるしな。 もちろん良くないって返すけどさ」
「でもなんで小学校行かないのアイツら?」
「ほら……今どきは声がけ事案あるしさ……」
「ああ……」
「い、一応『ユズちゃん』自身も高校生って言い張ってるし……」
「事実……なんだけどなぁ……」
「どう見たって中学生以下だしなぁ……」
「中学校周辺も通行人の目が厳しいらしいぜ」
「しゃあない」
はぁ、とため息をつく一同。
その中には中学時代の柚希を知っていて――彼の水着姿だったり、体育での着替えを一緒に経験した男子も含まれており。
「でも……正直分かるよな」
「分かる」
「ああ……」
「もし、星野のこと男子って知らなかったら……」
「ああ……」
「毎年恒例の告白祭りに、俺たちも……」
「男子だって知ってても……知ってても……!」
「……お前ら、俺と言ってること同じじゃねぇか!」
「いや、だって田中は……」
「田中はなぁ……」
「なんだよ!!!」
「だってキモいもん」
「うん、キモい」
「だからなんでだよ!?」
「いや、田中×星野きゅんは人気だけどさ……男のツンデレをリアルで見ると……おぇっ」
「お前らなぁ……!」
「どう見ても地元のヤンキー、コワモテなのに行動の中心が柚希だとか……」
「お前らの友情って想像できないって言うか……」
「まぁまぁ、田中君が受けのも描いたげるから……げへへ」
「ナマモノはやめろって言ってんだろ!!」
「田中……そういう反応するから描かれるんだぞ……?」
「田中は星野とは別の意味でちょろいから……」
◇
「……というわけで、今後は部活ない人中心に柚希先輩の警護をお願いします」
「分かった。 適当に見回って、変なの居たら通報祭りね?」
「例の強盗で警察も神経尖らせてるだろうし、『女子』を捜して歩いてる奴らなんて不審者でいいしな」
「しかも『ユズちゃん』なら小学生とか言われてるレベルだから、ロリコン確定だしな」
「まぁ問答無用だわな、特に社会人相手なら」
田中がいじられているあいだに各生徒の持ち場と時間帯で、それなりのエリアと場所がカバーされることになったらしい。
「柚希先輩のバイト先は田中先輩の担当なので、例え先輩がガチ恋勢に刺されたとしても守りきってください」
「そうよー、そうすれば星野君もちょっとは意識し……ごめん、しないとは思うけどがんばって」
「星野はなぁ……」
「星野はねぇ……」
「授業中も窓の外見てるしなぁ……」
「そのくせ先生の言うことは聞いてるし……」
「でもうわの空だからなぁ……」
「男子どころか女子からの告白も、告られてることすら分からずに断ってるしなぁ……」
「告った奴らかわいそう」
「俺、断られたけどなんかぞくぞくしたぞ」
「戻って来い……いや、あっち行け」
「新しいネタはここ?」
「やめろぉ!?」
「……なんかさ? クラスの会話とか……『ユズちゃん』の待機所とかのコメントっぽくなってきてない?」
「うちのクラスの9割がメンバーシップに入ってるからな……理央ちゃん含めて、4人全員の……」
「星野……ついにうちのクラスまで沼らせたか……」
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