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3章 珍しいスライムさんをゲット

76話 また会った、教官のお姉さん

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「……最後に、テイムしていたシルバースライムが。 それで間違いはなさそうでしょうか、星野さん」

「え……えっと……眠くって覚えてませんけど、多分……?」

僕の頭がすっきりして、それからみんなにいろいろ教えられて。

僕が寝ちゃった後、怒り状態になったボスモンスターが僕にターゲット変えて突撃して来て。

ひなたさんが間に合わなさそうで、大変になって。

「……しかし、リストバンドが作動しないなんて……」

「1年前にありました……リストバンドが壊れて危険な目に遭った方が居た、あの事故からすべてのリストバンドを改修したので、事故という事故は起きていなかったのですがねぇ……」

そこになぜか板みたいなのが出現して、イノシシさんは衝突のエネルギーそのまま1人で受けて、勝手に討伐されて。

「命の保証をする緊急脱出装置が。 ダンジョン事業の根幹を揺るがす一大事です。 ……回収したこれらを分析して、調査を……」

「原因究明のためにこのダンジョンを閉鎖するのは仕方がないにしても、リストバンドシステムそのものの不調だった場合……また、全国全てのダンジョンを閉鎖しなければ……」

……って思ったらそれは、僕がテイムしてたシルバースライムのおかげで。

「……はぁ……今月は缶詰か……」
「1年ぶりの悪夢か……」
「まぁ、あれよりはマシだろう……」
「どうか全部回収しての改修とか言うデスマはやめて……」

けど僕、いつの間にテイムしてたんだろ?

「……星野さんと向日さんに治癒魔法は掛けましたし、配信も戦闘場面だけ観させていただきましたが、おふたりとも、特に激しい攻撃を受けていないようですし」

「はい! 大丈夫です!」
「あ、僕も大丈夫です。 痛いところとかは特に」

「色も元に戻ってるから大丈夫だよね」って、みんなで飛び込んだ転移陣の先にはたくさんの職員さんたちが居て。

おじさんたちに囲まれて、救護班さんたちから治癒魔法を何回もかけられて。

シルバースライムさんはずっとみんなから武器向けられてたけども、おとなしくしてくれてて……何かの機械で、僕のテイムって分かったらしくって。

「……はぁっ……よ、良かった……」

「……? あのときの教官さん?」

かっかっかっかってハイヒールで駆け込んで来たのは、初心者講習のときの人。

ハイヒールなのに、すっごく安定した走り方だなー。

「ふぅっ……たまたま、この隣のダンジョンの事務をしてまして……それで、SNSに上がっていましたあなたたちのことを……」

「あ、あのときのお姉さん!」
「先日はお世話になりました」

「……いえ。 ご無事そうで、何よりです……あ、私はこういう者でして。 彼女たちのことは私に……」

彼女は名刺か何かを他のおじさんたちに見せて……救護班さんたちごと部屋から外へ出させる。

「……はー……ちょっと大変な事態だったとは言え、女の子だけのあなたたちを取り囲むようにして……ごめんなさいね、気が利かなくて。 周りを男性ばかりで怖かったでしょう」

「いえ、特には」

そもそも僕、男だし。

おばさんよりはおじさんの方が……あんまり話しかけてこなくって撫でてこないって意味では楽だもん。

おばちゃんパワーはすごいんだ。

気を抜くとすぐに、子供さんとか親戚さんの女の子の写真見せてきて会わせようとしてくるし……。

ぱたんと閉められるドア。

……スライムさんに銃口向けてた人たちも含めて20人くらい居たのが、あのときのお姉さんだけになってちょっと安心。

「ふぅ……」
「きゅい?」

「あ、今起きたんだおまんじゅう。 おはよ」
「きゅいっ!」

僕よりもねぼすけだったおまんじゅうは、今さら起きて……つい今までずいぶん騒がしかったのに、よく寝てられるよね。

モンスターのくせに案外図太いんだ。

あ、そういえば配信はおしまいにしたらしい。

僕たちは無事だったし、そもそも今日は普通のボス倒したらおしまいの予定だったしってことで。

……けど、カメラとスマホまで取り上げられたのはちょっと納得いかない。

僕が間違って配信しちゃう?
そんなの最初だけじゃん。

ちょっと間違って2回くらい配信しちゃってただけじゃん。
それくらい、誰だって間違えることあるよね?

レジの打ち間違えとか名前の予備間違えとか、ほんのささいなことだもんね。

「……改めて、星野さんもお元気そうで何よりです。 向日さんと夢月さんも」

「ひなたたちの名前、覚えてくれてたの!? じゃない、ですか!!」
「こういうのって嬉しいよねぇ」
「うん!」

「……教官さん……ちょっと」
「ええ……少し失礼しますね」

あやさんが教官さんに何かを話しかけると……なぜか2人は部屋の隅っこに行って話し始める。

うん、やっぱり最年長のあやさんがリーダーだもんね。

実力的には光宮さんだけども、こういうときは年齢が物を言うんだ。

大学生さんだもんね。
きっと頼りになるんだ。

きっと、リーダーさんとの細かいいろいろの話なんだろう。

「けどゆずきちゃん、すごいねー。 スライムさんまでテイムしちゃうだなんて」
「あ、うん。 テイムしたつもりはなかったんだけど……君、どうして来てくれたの?」

「ぴぎ?」
「きゅい?」

おじさんたちと一緒に居た人たち……何でもダンジョン周辺の警備隊なんだって……が居なくなって、気が付いたらおまんじゅうの背中に張り付く感じで液体状になってるスライムさん。

おまんじゅうも首をぐりぐり動かしてガン見してたけども、別に嫌がるでもなく……自分の尻尾を追いかけるようにしてくるくる回ってる。

「きゅっ」
「ぴっ」
「きゅきゅ?」
「ぴぴっ」

2匹とも、なんだか楽しそうにお話ししてるし……きっとじゃれ合ってるだけなんだろう。

そうして張り付いてるの見ると……顔も何も見えないけども、なんかかわいいね。

おまんじゅうも嫌がってないし、スライムさんの方も懐いてるみたい。

これなら多頭飼いしても……って。

……スライムさんって、なに食べるんだろ。

おまんじゅうは高級野菜スティックで良いとして……あとで光宮さんに聞こうっと。
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