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2章 ダンジョン配信、始めます
32話 女の子としてパーティー登録することに
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「……こほんっ! とにかく!」
怒ると怖い光宮さんの声で、思わず正座。
普段は優しい彼女も、無視とかすると普通に怒るんだ。
「先輩は、そんな……世界でも数例しか目撃例がなくって、さらに言えばテイムされた記録どころか討伐記録すらゼロのユニコーンをテイムしたんです。 どうやったって注目されちゃうんですよ……分かります?」
「そんなに……?」
「きゅい」
あいかわらずにぬいぐるみみたいな見た目のおまんじゅうが、不思議そうな声を上げる。
どうやらおまんじゅう自身もよく分かってないらしい……まぁモンスターだからね。
僕もいまいちなぁ……。
「ダンジョンから……産まれてからすぐに他のモンスターに襲われて逃げてきて、たまたま僕の前に出てきただけの子だよ?」
「……普通の人なら、それでまとめて倒しちゃうんでしょうね。 いくらレアだからと言って、ダンジョンが発生してから10年もテイム記録がないなんておかしいですもん。 かわいいと言ったって、モンスターはモンスターですし」
今朝は珍しくメガネ……でも多分伊達、だってメガネかけてる人みたいに輪郭がちっちゃくなったりしてないから……してる光宮さんが言う。
「だからこそ、今後は行政とかダンジョン協会からもいろいろ聞かれるはずです。 『どうやってテイムしたんですか?』って」
「え、別に普通に」
「いえいえそんなもったいないことしちゃダメですよ柚希先輩、だからいつも人に利用されるだけされてぽいなんです」
「ぽい……?」
「きゅいきゅいっ」
ぴとっ。
僕の唇に、彼女の細い指が栓をする。
「――そういうのも、こっちが条件出さないと損するだけなんです。 だからです、先輩」
光宮さんの、普段はいたずらっぽい顔つきが、いつにもない感じになっている。
「良い人過ぎる先輩と義母様だからこそ。 良いように使われないためにも、私がひと肌脱ぐんです」
ん?
「おかあさま」?
なんか発音が……気のせいかな。
「柚希先輩……えっと、確か先週返した小説のあらすじは覚えてますよね?」
「え? うん。 事情があってお金がないシングルマザーとその子供の貧乏生活。 2人とも良い人なんだけど、ただ唯一の欠点は良い人過ぎることで、本当なら受けられる支援とか制度とか、あとは住む場所を変えて紹介された基金とかを活用すれば無理なく人並みの生活にまで行けるのに、それができない。 無駄な意地だとは思うけど、それを貫く2人の心に打たれた近所の人たちができる範囲の手助けをしてて。 で、そんな彼の元に幼馴染みの女の子が」
「あー、はいはいそこまでー。 ……そこまでピンポイントなの探してきて読ませて分かってくれて、そこでどーして分からないんだか……」
「きゅいー……」
「分かるー? だから君も懐いたんだよねぇ……」
「きゅいぃー……」
「?」
僕の自慢は、記憶力と理解力の悪さだ。
だからおんなじ本でも何回か読み直すし、読み直したのを歩いてるときとかに何回も思い出して「あーでもないこーでもない」って考えて……1冊の本で何日も楽しめるんだ。
だから国語と英語だけは得意。
だって、ただ読めばいいんだもん。
数学?
理科?
みんなが行ってる学習塾は……その、高いから……ね?
そもそもそのお金があったら、バイト減らして高校行ってるし。
「……その小説、感想言い合ったときなんて言ってました?」
「えっと、主人公の子がちゃんと、プライドとか気にしないで大人に相談してたらって」
「そういうわけです」
どういうわけ?
そう思った僕の前に、彼女が紙を差し出してくる。
「ダンジョン関係ではかなりいろんな補助が出るみたいなんです。 特に柚希先輩みたいに、まだ1回も潜る前だとたくさん」
「……あの、10枚くらいあるんだけど……どれ?」
「全部です」
「えっ」
「この全部。 ……ふつーに市役所に置いてあったんですよ? あと、聞いたらふつーに教えてくれました」
ずらっと並べられた書類には……なんとか申請書とかばっかり。
「でも、こういうのって聞かなきゃ教えてくれませんし、調べなきゃないのと同じなんです」
「……でも、何かそういうのって」
「申し訳ないとかは聞き飽きましたので今はダメです」
「あぅ」
うぅ……今日の光宮さん、厳しい……。
「これで、初期投資と支度金くらいはもらえます。 ……そうですね、初期装備に加えて……私たちのバイト代、半年分くらい?」
「?」
半年?
なにそれ?
「そもそも、ちゃんと聞いたらありましたよ? めっちゃレアで難しいテイマー専用の補助とか。 テイマーって数が少ないですし、初期は戦いに貢献できないので厳しいからって、普通よりもたくさん。 まぁ報告とかめんどくさいっぽいですけど、それでもふつーにバイトするよりずっと良いはずですし」
なんか情報が多すぎて追いつけない僕。
「きゅい」
「……あー、とにかく国の制度として『初心者、しかもテイマーとか言う上級者向けなのが間違って大ケガでもしたらマスコミにぼっこぼこにされるのが怖い!』って理由でのがあるんですよ。 で、ほら、ダンジョンの装備とかってふつーに高いんです。 それを買って揃えて、で、『一人前になるんなら返さなくても良いよ』って制度です」
「あ、なるほど」
「ですから、これらをフル活用して……柚希先輩と私のダンジョンライフの基盤を固めます」
「? 日向さんと夢月さんも一緒だよね?」
「………………そうですね……」
「きゅい……」
「君、ほんっとうに良い子ね……なのになんで柚希先輩は、もう何年も何年も……」
「きゅいきゅい……」
とにかく光宮さんは、この制度ってのを使えば僕みたいな余裕のない人でもダンジョンに潜る準備ができるって言ってるんだよね。
なぜかおまんじゅうが光宮さんを慰めてる気がするけども、きっと気のせいだろう。
怒ると怖い光宮さんの声で、思わず正座。
普段は優しい彼女も、無視とかすると普通に怒るんだ。
「先輩は、そんな……世界でも数例しか目撃例がなくって、さらに言えばテイムされた記録どころか討伐記録すらゼロのユニコーンをテイムしたんです。 どうやったって注目されちゃうんですよ……分かります?」
「そんなに……?」
「きゅい」
あいかわらずにぬいぐるみみたいな見た目のおまんじゅうが、不思議そうな声を上げる。
どうやらおまんじゅう自身もよく分かってないらしい……まぁモンスターだからね。
僕もいまいちなぁ……。
「ダンジョンから……産まれてからすぐに他のモンスターに襲われて逃げてきて、たまたま僕の前に出てきただけの子だよ?」
「……普通の人なら、それでまとめて倒しちゃうんでしょうね。 いくらレアだからと言って、ダンジョンが発生してから10年もテイム記録がないなんておかしいですもん。 かわいいと言ったって、モンスターはモンスターですし」
今朝は珍しくメガネ……でも多分伊達、だってメガネかけてる人みたいに輪郭がちっちゃくなったりしてないから……してる光宮さんが言う。
「だからこそ、今後は行政とかダンジョン協会からもいろいろ聞かれるはずです。 『どうやってテイムしたんですか?』って」
「え、別に普通に」
「いえいえそんなもったいないことしちゃダメですよ柚希先輩、だからいつも人に利用されるだけされてぽいなんです」
「ぽい……?」
「きゅいきゅいっ」
ぴとっ。
僕の唇に、彼女の細い指が栓をする。
「――そういうのも、こっちが条件出さないと損するだけなんです。 だからです、先輩」
光宮さんの、普段はいたずらっぽい顔つきが、いつにもない感じになっている。
「良い人過ぎる先輩と義母様だからこそ。 良いように使われないためにも、私がひと肌脱ぐんです」
ん?
「おかあさま」?
なんか発音が……気のせいかな。
「柚希先輩……えっと、確か先週返した小説のあらすじは覚えてますよね?」
「え? うん。 事情があってお金がないシングルマザーとその子供の貧乏生活。 2人とも良い人なんだけど、ただ唯一の欠点は良い人過ぎることで、本当なら受けられる支援とか制度とか、あとは住む場所を変えて紹介された基金とかを活用すれば無理なく人並みの生活にまで行けるのに、それができない。 無駄な意地だとは思うけど、それを貫く2人の心に打たれた近所の人たちができる範囲の手助けをしてて。 で、そんな彼の元に幼馴染みの女の子が」
「あー、はいはいそこまでー。 ……そこまでピンポイントなの探してきて読ませて分かってくれて、そこでどーして分からないんだか……」
「きゅいー……」
「分かるー? だから君も懐いたんだよねぇ……」
「きゅいぃー……」
「?」
僕の自慢は、記憶力と理解力の悪さだ。
だからおんなじ本でも何回か読み直すし、読み直したのを歩いてるときとかに何回も思い出して「あーでもないこーでもない」って考えて……1冊の本で何日も楽しめるんだ。
だから国語と英語だけは得意。
だって、ただ読めばいいんだもん。
数学?
理科?
みんなが行ってる学習塾は……その、高いから……ね?
そもそもそのお金があったら、バイト減らして高校行ってるし。
「……その小説、感想言い合ったときなんて言ってました?」
「えっと、主人公の子がちゃんと、プライドとか気にしないで大人に相談してたらって」
「そういうわけです」
どういうわけ?
そう思った僕の前に、彼女が紙を差し出してくる。
「ダンジョン関係ではかなりいろんな補助が出るみたいなんです。 特に柚希先輩みたいに、まだ1回も潜る前だとたくさん」
「……あの、10枚くらいあるんだけど……どれ?」
「全部です」
「えっ」
「この全部。 ……ふつーに市役所に置いてあったんですよ? あと、聞いたらふつーに教えてくれました」
ずらっと並べられた書類には……なんとか申請書とかばっかり。
「でも、こういうのって聞かなきゃ教えてくれませんし、調べなきゃないのと同じなんです」
「……でも、何かそういうのって」
「申し訳ないとかは聞き飽きましたので今はダメです」
「あぅ」
うぅ……今日の光宮さん、厳しい……。
「これで、初期投資と支度金くらいはもらえます。 ……そうですね、初期装備に加えて……私たちのバイト代、半年分くらい?」
「?」
半年?
なにそれ?
「そもそも、ちゃんと聞いたらありましたよ? めっちゃレアで難しいテイマー専用の補助とか。 テイマーって数が少ないですし、初期は戦いに貢献できないので厳しいからって、普通よりもたくさん。 まぁ報告とかめんどくさいっぽいですけど、それでもふつーにバイトするよりずっと良いはずですし」
なんか情報が多すぎて追いつけない僕。
「きゅい」
「……あー、とにかく国の制度として『初心者、しかもテイマーとか言う上級者向けなのが間違って大ケガでもしたらマスコミにぼっこぼこにされるのが怖い!』って理由でのがあるんですよ。 で、ほら、ダンジョンの装備とかってふつーに高いんです。 それを買って揃えて、で、『一人前になるんなら返さなくても良いよ』って制度です」
「あ、なるほど」
「ですから、これらをフル活用して……柚希先輩と私のダンジョンライフの基盤を固めます」
「? 日向さんと夢月さんも一緒だよね?」
「………………そうですね……」
「きゅい……」
「君、ほんっとうに良い子ね……なのになんで柚希先輩は、もう何年も何年も……」
「きゅいきゅい……」
とにかく光宮さんは、この制度ってのを使えば僕みたいな余裕のない人でもダンジョンに潜る準備ができるって言ってるんだよね。
なぜかおまんじゅうが光宮さんを慰めてる気がするけども、きっと気のせいだろう。
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