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1章 僕が女装して配信することになったきっかけ
12話 いじめっこな田中君
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「それ! どこで買ったんですか! かわいい! 私もすぐにおそろ買います!」
「ううん、拾ったんだよ」
「……道に落ちてる物を拾っちゃダメって学校で教えられませんでしたか!?」
「えっと……落ちてたって言うか、懐かれたって言うか……」
「きゅい」
光宮さんが来たばっかりのさっきは、おばちゃんたちの熱烈なハグで疲れて寝てたおまんじゅう。
カウンターに置きっぱなしだった彼は、目の前に来た光宮さんをじっと眺め……ジャンプ。
「わっ。 ……か、かわいぃぃぃぃ……」
「きゅいっ」
おー。
おまんじゅう、光宮さんなら良いんだ。
おばちゃんたちになで繰り回されてたときみたいな、この世の終わりな顔付きはどっかに行って、すっごく嬉しそう。
あー、うん。
やっぱフレンドリー過ぎるのもやだよねぇ……分かるよ。
僕も普段から「女の子みたいでかわいいねぇ」とか「うちの娘に会わないかい?」とか構われ続けるし。
「! きゅい!」
「んっ……どうしたのさおまんじゅう、光宮さんの方が良いんじゃない?」
「!?!? きゅきゅきゅきゅい!」
「わっ、ごめんごめん、冗談だって」
光宮さんに抱っこされてたおまんじゅうは、僕と目が合うなり飛びかかってきて……すっぽりと腕の中へ。
んー、ひと晩で里心着いてくれてるのは嬉しいんだけど……。
「……………………………………」
「ごめんね、おまんじゅうが……光宮さん?」
おまんじゅうがひとしきり腕の中でもぞもぞするのを眺めていて、ふと忘れちゃってた光宮さんに向き直る。
「……光宮さん……鼻血」
「……ふぁい……」
あー、なるほど。
光宮さん、ちょっと熱があるっぽいし……軽いカゼでも引いてテンションおかしくなってるんだろうな。
なるべく僕が接客するようにして彼女を休ませてあげないとね。
現役高校生のバイトさんと、休学中で実質フリーターな僕とじゃ価値が違うもんね。
「大丈夫? 今日は帰る?」
「いえ、こんなに綺麗な先輩を置いて行ったらWSSしそうな気配があるので……」
「だぶりゅー……? なにそれ?」
「なんでもないです……」
他の人に任せて光宮さんを介抱……するまでもなく、イスに座ったら鼻血も止まったし、顔の赤いのも収まってきたらしい。
「でもそうですか、この子がモンスター……」
「きゅい!」
「で、何のモンスターなんですか?」
「さぁ?」
「きゅいっ!?」
「……なんかモンスターからガン見されてますよ?」
「この子、突然振り向いて凝視するクセがあるみたいなんだよ。 多分何も考えてないから気にしないでね」
ついでで、怖がらないからおまんじゅうも抱っこさせあげてモフることによるヒーリング効果も狙ってた僕。
予想通りに撫でたりモフったりして、すっかり普段通りだね。
「……白……今は柔らかいですけど、この手足は偶蹄類……鹿? ……ううん、短いけどたてがみにもなってるし、角になりそうなのはおでこに1個……」
「不思議だよねぇ。 まぁモンスターって地球の動物に似てるのが多いけど、普通にニコイチしたみたいなキメラも居るし、得体の知れないのも居るって言うし」
「確かにシカとかサイにも角が……ううん、でもやっぱり色合いと言いおでこに1個といい、何よりお化粧でごまかす必要がないどころかお化粧したら都会で女の子にさせられちゃいそうな先輩に懐いてることと言い……まさか……」
おまんじゅう、基本野菜なら何でも好きらしい。
お昼も、いつものもらい物の野菜をスティック状にして持って来たのをぺろりと食べ切ったし。
「先輩は男の娘として小学生のときからめっちゃ人気だったし、儚すぎて逆に手とか出されなかったから……私だって、いざとなったらピュアすぎて押せないし……だから、つまりは純潔ってことで……」
けど、にんじんで言えば2本くらいの量を食べたような……やっぱりモンスターだからたくさん食べるのかな。
まぁモンスターだからね……あ、そうだ、帰り道でモンスターの飼い方の本とか……売ってないよねぇ。
しょうがない、今度テイマーさんの動画とか漁ろっと。
「……星野! お前ペットとか連れて来たんだってな! んなの俺は許可して――うぉっ!?」
「あ、田中君」
光宮さんに続いて学生服な田中君――ここのオーナーさんの息子――がバックヤードへ。
ガタイが良いし声がでっかいし、ちっちゃいころから何かといじめられたから今でも怖い、元同級生……いや、まだ留年はしてないから、ギリ同級生。
小学生までは、運動が苦手な僕を笑うためか毎日のように引っ張り出されてたっけ。
まぁ中学からも、何かあったらすぐに呼びつけられてパシリさんやらされてたんだけどね……あ、でも、「やっぱこれ要らねぇわ。 捨てとけ」ってもったいないことばっかしてたのをお昼ごはんにさせてもらってたけど。
「星野……お、お前……!」
でも、僕の家がお金ないって聞いて「一生かけて返すんだったら全部払ってやる!」とか「俺の家の手伝いをするって約束するなら全部奢ってやる!」とか意外と人情深いんだよね……小学生まではガキ大将で中学生からは学校のボス的存在だけど。
いじめっ子なのはいじめっ子だけども、田舎にしてはずいぶん優しい方だとは思う。
いじめっ子だけど。
「……誰だ!? 言え! 誰に奪われた!?」
「あー、やーっぱそういう結論になりますよねぇ……こんなに綺麗になって、なんか色気が昨日までどころじゃないですし」
「光宮! お前なんか知ってんのか!」
「いいえ? って言うか、フツーに第1容疑者は田中先輩だったんですけどね。 こう、いかがわしいお薬とか使ってって思って。 帰ったら通報しようかと」
「お前ぇ!?」
なんか焦って僕の肩を掴むや、がくがく揺すってくる田中君。
奪う?
色気?
いかがわしい?
……2人とも知ってるってことは、学校でなんかあったのかな?
有名なカップルの恋愛のもつれとか?
「……よくも俺の星野を!」
「いや、さりげなく所有権主張しないでくださいよ田中先輩、柚希先輩は17年間フリーなんです。 だからこそ熾烈な水面下での争いが、それはもう……」
「ううん、拾ったんだよ」
「……道に落ちてる物を拾っちゃダメって学校で教えられませんでしたか!?」
「えっと……落ちてたって言うか、懐かれたって言うか……」
「きゅい」
光宮さんが来たばっかりのさっきは、おばちゃんたちの熱烈なハグで疲れて寝てたおまんじゅう。
カウンターに置きっぱなしだった彼は、目の前に来た光宮さんをじっと眺め……ジャンプ。
「わっ。 ……か、かわいぃぃぃぃ……」
「きゅいっ」
おー。
おまんじゅう、光宮さんなら良いんだ。
おばちゃんたちになで繰り回されてたときみたいな、この世の終わりな顔付きはどっかに行って、すっごく嬉しそう。
あー、うん。
やっぱフレンドリー過ぎるのもやだよねぇ……分かるよ。
僕も普段から「女の子みたいでかわいいねぇ」とか「うちの娘に会わないかい?」とか構われ続けるし。
「! きゅい!」
「んっ……どうしたのさおまんじゅう、光宮さんの方が良いんじゃない?」
「!?!? きゅきゅきゅきゅい!」
「わっ、ごめんごめん、冗談だって」
光宮さんに抱っこされてたおまんじゅうは、僕と目が合うなり飛びかかってきて……すっぽりと腕の中へ。
んー、ひと晩で里心着いてくれてるのは嬉しいんだけど……。
「……………………………………」
「ごめんね、おまんじゅうが……光宮さん?」
おまんじゅうがひとしきり腕の中でもぞもぞするのを眺めていて、ふと忘れちゃってた光宮さんに向き直る。
「……光宮さん……鼻血」
「……ふぁい……」
あー、なるほど。
光宮さん、ちょっと熱があるっぽいし……軽いカゼでも引いてテンションおかしくなってるんだろうな。
なるべく僕が接客するようにして彼女を休ませてあげないとね。
現役高校生のバイトさんと、休学中で実質フリーターな僕とじゃ価値が違うもんね。
「大丈夫? 今日は帰る?」
「いえ、こんなに綺麗な先輩を置いて行ったらWSSしそうな気配があるので……」
「だぶりゅー……? なにそれ?」
「なんでもないです……」
他の人に任せて光宮さんを介抱……するまでもなく、イスに座ったら鼻血も止まったし、顔の赤いのも収まってきたらしい。
「でもそうですか、この子がモンスター……」
「きゅい!」
「で、何のモンスターなんですか?」
「さぁ?」
「きゅいっ!?」
「……なんかモンスターからガン見されてますよ?」
「この子、突然振り向いて凝視するクセがあるみたいなんだよ。 多分何も考えてないから気にしないでね」
ついでで、怖がらないからおまんじゅうも抱っこさせあげてモフることによるヒーリング効果も狙ってた僕。
予想通りに撫でたりモフったりして、すっかり普段通りだね。
「……白……今は柔らかいですけど、この手足は偶蹄類……鹿? ……ううん、短いけどたてがみにもなってるし、角になりそうなのはおでこに1個……」
「不思議だよねぇ。 まぁモンスターって地球の動物に似てるのが多いけど、普通にニコイチしたみたいなキメラも居るし、得体の知れないのも居るって言うし」
「確かにシカとかサイにも角が……ううん、でもやっぱり色合いと言いおでこに1個といい、何よりお化粧でごまかす必要がないどころかお化粧したら都会で女の子にさせられちゃいそうな先輩に懐いてることと言い……まさか……」
おまんじゅう、基本野菜なら何でも好きらしい。
お昼も、いつものもらい物の野菜をスティック状にして持って来たのをぺろりと食べ切ったし。
「先輩は男の娘として小学生のときからめっちゃ人気だったし、儚すぎて逆に手とか出されなかったから……私だって、いざとなったらピュアすぎて押せないし……だから、つまりは純潔ってことで……」
けど、にんじんで言えば2本くらいの量を食べたような……やっぱりモンスターだからたくさん食べるのかな。
まぁモンスターだからね……あ、そうだ、帰り道でモンスターの飼い方の本とか……売ってないよねぇ。
しょうがない、今度テイマーさんの動画とか漁ろっと。
「……星野! お前ペットとか連れて来たんだってな! んなの俺は許可して――うぉっ!?」
「あ、田中君」
光宮さんに続いて学生服な田中君――ここのオーナーさんの息子――がバックヤードへ。
ガタイが良いし声がでっかいし、ちっちゃいころから何かといじめられたから今でも怖い、元同級生……いや、まだ留年はしてないから、ギリ同級生。
小学生までは、運動が苦手な僕を笑うためか毎日のように引っ張り出されてたっけ。
まぁ中学からも、何かあったらすぐに呼びつけられてパシリさんやらされてたんだけどね……あ、でも、「やっぱこれ要らねぇわ。 捨てとけ」ってもったいないことばっかしてたのをお昼ごはんにさせてもらってたけど。
「星野……お、お前……!」
でも、僕の家がお金ないって聞いて「一生かけて返すんだったら全部払ってやる!」とか「俺の家の手伝いをするって約束するなら全部奢ってやる!」とか意外と人情深いんだよね……小学生まではガキ大将で中学生からは学校のボス的存在だけど。
いじめっ子なのはいじめっ子だけども、田舎にしてはずいぶん優しい方だとは思う。
いじめっ子だけど。
「……誰だ!? 言え! 誰に奪われた!?」
「あー、やーっぱそういう結論になりますよねぇ……こんなに綺麗になって、なんか色気が昨日までどころじゃないですし」
「光宮! お前なんか知ってんのか!」
「いいえ? って言うか、フツーに第1容疑者は田中先輩だったんですけどね。 こう、いかがわしいお薬とか使ってって思って。 帰ったら通報しようかと」
「お前ぇ!?」
なんか焦って僕の肩を掴むや、がくがく揺すってくる田中君。
奪う?
色気?
いかがわしい?
……2人とも知ってるってことは、学校でなんかあったのかな?
有名なカップルの恋愛のもつれとか?
「……よくも俺の星野を!」
「いや、さりげなく所有権主張しないでくださいよ田中先輩、柚希先輩は17年間フリーなんです。 だからこそ熾烈な水面下での争いが、それはもう……」
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