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46.X6話 教訓:女性を怒らせてはならない その2
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少女たちの姦しい、彼についての会話は続く。
「でも、安心したなぁ」
「なにがよ?」
ちゅーっと紙パックのジュースを……同時にすすったあとに話し出すふたり。
「だって、しんゆー同士でひとりの男の子取り合うってゆード定番中のド定番なドロドローな展開にならなくってよかったなーって。 私の苦手な恋愛要素オンリーな少女マンガみたいにならなくってよかったなーってさ。 や、ほんと、あーいうのマジ勘弁ってやつだもん」
「いや普通、一目惚れなんてのはないでしょ、現実じゃ。 少なくとも私はないし、それ以前によく知りもしない相手を見た目だけで好きになる気持ち理解できないからね? 私。 前にも言ったかもだけどさ」
辛うじて耐えていた最後の男子が力尽き、声の届かないところへとぼとぼと歩いて行くのを……友人の真後ろで起きていた悲劇を見ていたゆりかは、そっと目を逸らす。
「わー、りさりん正直過ぎー」
「大体私もあんたに勧められるゲームとかしても……恋愛シミュレーションとかはやらないの。 知ってるでしょ? つまらなくて投げちゃうのよ」
「それはもー。 だからラヴ系のマンガの布教とかも諦めたんだもんね。 もったいないけど、こればっかりはなー」
ぽい、と空になった紙パックを狙いを定めてから投げようとしたゆりかの手が、がしっ、と掴まれ……むしり取り、しぶしぶといった様子で自分のそれと一緒に、きちんとごみ箱へ捨てに行くりさ。
「ご苦労。 うむ」
「ご苦労って、何様のつもりよ……ったく。 ……けど、まさかねぇ? そういうのといっちばんに縁が遠そうだったゆりかが……ねぇ? そうなるとはねぇ……」
「まあね!」
ふんす、と、無い胸を張って……恋心、というよりは好奇心で輝く瞳をりさに向けるゆりか。
「だーってさ、あんの超ミステリアスーな存在だよ? 見た目も1回目も2回目もゲーム通り……春休みに徹夜だったし、もーけっこう忘れてるけど『そうだった』ってゆーのはよーく覚えてるし。 だからさ、ゲームってゆー……どっかのチームの人たちが作った創作上の世界が、どこまで現実に再現されているのかっての、私がなぞってみることで試してみたくって。 あ、もち、響……現実のね? 自身にもすんごくキョーミあるけど」
「違うわよ」
「へ?」
「普段はさ、あんまり外に出さないようにしているみたいだけど……ゲームとかアニメとかマンガとか、そういう世界にだけ興味あるって感じのあんたが。 それもまさか私よりも先にそこまで気になる男子を見つけたって言うのによ。 しかもキャラクターとかじゃなくって……きっかけはそれだったとしても、現実の男の子に興味持つっていうのが、すっっっごく新鮮だからよ」
「………………………………あのー? りさりん??」
「なあに?」
「……私さー、響のこと、そりゃー気になってはいるよ? 気になっては。 だけどりさりんが思ってるのとかじゃなくって、その、えと……好きとかそういう話じゃ。 さっきのだって冗談だし。 あ、なんならりさりんも」
「……。 照れ隠しなあんたもまた新鮮ね。 あのさ? ゆりか、あんた、響さんの話するときの顔……自分で、鏡で見たことある?」
「わっつ?」
ずい、と迫るりさと、すすすと引こうとして……背もたれに阻まれ、いつもの逆の格好になったふたり。
……なお、その光景にクラスの男子諸君と一部の女子たちが注目していたわけだが、話に夢中な彼女たちは知るよしもない。
「……へーい。 その、か・お♥ あんたが『攻略したぞ!』ってスパムみたいに送ってくる写真とか、勧めてくるマンガとかのヒロインたちの顔ってやつ。 わーたーしー、ゆーりーかーのー、そーゆー顔と、とーっても似てるなぁーって思うんだけどなー? へー、ほんっとにそーなるんだー、私初めて見たなーいいものねー実にいいわー! 恋バナ好きな子の気持ち、ちょっとだけ分かるわねー!」
「ぬ、ぐ、ぐ……」
「……………………」
「……………………」
「……ぷっ。 あっははははっ! ……あー、いつものしかえししてやってとっても気分がいいわー」
「……はっ!? お、おのれりさりん! 私を惑わしおって!! くんの! くんの!! 最近調子に乗りおってからに、くんのっ」
ぽかぽかとりさの胸を軽く叩いているその光景に、さらにクラスの注目が集まっている。
それは揺れていた。
揺らしている方のそれらは揺れる余地もなかった。
「……はー、嬉しかったから今までのはチャラにしてあげるわ。 だけど、どっちだったってしても私は応援するわよ? だって、いくらゆりかがちんちくりんだったってしても……告られたりしても当たり障りない感じに断ってたあんただもん、てっきりそのままだぁれとも付き合わないで華の中学生活、いえ、学生生活ってのを華のない画面の向こうとか紙に費やしそうだったんだもの。 いえ、もしかしたらこのままずーっと趣味に生きて……」
「りさりんひっどーい……私、傷ついちゃった」
「嘘ばっか」
「およよ」
「感情が籠もっていないわね。 あと、ソレは古いわ」
「ちっ」
「……けど、気をつけなさいよ?」
「なにをさ?」
「もっと仲良くなるんだったら、距離感には、ね? 響さん……私はまだ1回しか会っていないし、ろくに話もしていないけどさ。 あの子、会話の節々で……なんていうのかしらね、こう、言いたいけど言えない? みたいな、そんな表情してすっごく慎重に言葉選んでる印象だったもの。 もちろん下条さんはまったく気がついていなさそうだったし、友池さんは……気が付いているかもしれなかったけど、でも、よーく見てないと分からないような」
「わーかってるって、そんぐらいは私にだって」
もういちど、鼻息荒く宣言するゆりか。
「だいじょうぶだいじょーぶ。 私、地雷回避しながら、あ、だけどゼッタイに必要なとこだけはうまく聞き出しつつ好感度上げるの、得意だからっ」
「それはゲームの話で……しかも画面の向こうの相手は女の子でしょ? 現実の男の子の好感度の上げ方、知ってるの? 現実でだーれとも付き合ったことないあんたが」
「あ」
「そもそもそうやって威張るなら……なんだっけ? 乙女ゲー? そっちで男の子攻略しなきゃ行けないんじゃない?」
「……!!」
「でしょ?」
「……私、乙女ゲーやる。 とりま帰りに本屋で売れてるそれ系のマンガとかも。 あ、またワゴンも漁って」
「冗談に決まってるでしょ……素直に恋愛ものとか読みなさいって」
もう1回ゆりかの頭上にりさの……今度はわりと手加減のない手刀が、ごつん、と振り下ろされた。
……なお、後日にこの場面のことを聞かれたゆりかが適当な言い訳をしたせいで、さらに脳天にもういちど落とされて身長が縮みそうになったとか。
◇◇◇◇◇
「……ってことがあったのよねぇ。 懐かしいわ。 ねぇー?」
それが、話のターゲットになっていた僕が夏休み、彼女たち4人と遭遇して少しの時機で起きた会話。
らしい。
けどもそれは、この病室で再びに繰り返されていた。
しかも女子特有に会話の全てをほぼ完璧に再現してまでのそれが。
つまりは拷問だ。
うん、さすがにかわいそう……。
「もー、これだけいろいろあった今からしてみれば、とぉーっても些細で平和でかわいらしい場面だったわねー。 あ、そういえば縮んでた? 背。 なーんて冗談よ」
ひととおり……たびたびに止めにかかるゆりかをリーチの差で軽くいなしてずっと話し続け、ようやくに話を終えて……しまったりさは、ぐっと伸びをしている。
で、その話をされてしまったゆりかはと言うと席に突っ伏してなにやらうめき声のようなものを発している。
「ぬぅぅぅぅぅん……ぬぐ」
「ふぅ、すっきりしたわっ」
そして僕はというと……いきなりこんな話をされて、すごく、ものすごく困っている。
だって、いつもみたいな何でもない会話するんだってばっかり思っていたからさ……なんでこんなことになってるの?
それになんで僕を巻き込んだんだ、りさりんは。
「おお……お〝お〝お〝お〝お〝……あがぁぁぁぁ……」
ゆりかは、女の子が出しちゃいけない声というものを上げ続けている。
うん、たしかに出さないほうがよさそうなものだな、これは。
そしてりさりんは、優雅に……冷めた紅茶を飲んでいる。
優雅じゃなかった。
それで僕は困惑している。
「……りさ」
「なんですか?」
そう言えばりさって僕に対してはですますで話すよね……別に良いけど。
「……どうしてそれを、今、この場で、僕を巻き込んで話す必要があったんだ?」
「僕を巻き込んで」ってとこを強調したつもり。
だって変なことに巻き込まれたくはなかったのに。
りさって、秘密なんて文字が脳内に存在しないかがりとは違って、常識的だったはずなのに。
だから言っちゃいけないようなことはしっかりと分かっている子で、だからこそ……こうして他人が悶えるような話は漏らさない、はずなんだって思っていたんだけれども。
「ぬお〝お〝お〝お〝――……りさりんからのふれんどりーふぁいぁ……」
「……それも、当人の前でするなんて」
僕は疑問を投げかけた。
――けれども返ってきたのは「ん?」って感じの、この上ない笑顔だった。
きっと同級生どころか学年の男子を虜にするようなそれなんだろうけれど……僕にとっては、その。
背筋がぞくぞくってする感じの、とっても恐いものに感じるものだった。
うん。
僕は、聞いていた。
「りさりん、怖いんだ」って。
「煽り加減を間違えちゃうと恐ろしいんだ」って。
当の……未だにうめいているゆりかっていう、被害者から。
「でも、安心したなぁ」
「なにがよ?」
ちゅーっと紙パックのジュースを……同時にすすったあとに話し出すふたり。
「だって、しんゆー同士でひとりの男の子取り合うってゆード定番中のド定番なドロドローな展開にならなくってよかったなーって。 私の苦手な恋愛要素オンリーな少女マンガみたいにならなくってよかったなーってさ。 や、ほんと、あーいうのマジ勘弁ってやつだもん」
「いや普通、一目惚れなんてのはないでしょ、現実じゃ。 少なくとも私はないし、それ以前によく知りもしない相手を見た目だけで好きになる気持ち理解できないからね? 私。 前にも言ったかもだけどさ」
辛うじて耐えていた最後の男子が力尽き、声の届かないところへとぼとぼと歩いて行くのを……友人の真後ろで起きていた悲劇を見ていたゆりかは、そっと目を逸らす。
「わー、りさりん正直過ぎー」
「大体私もあんたに勧められるゲームとかしても……恋愛シミュレーションとかはやらないの。 知ってるでしょ? つまらなくて投げちゃうのよ」
「それはもー。 だからラヴ系のマンガの布教とかも諦めたんだもんね。 もったいないけど、こればっかりはなー」
ぽい、と空になった紙パックを狙いを定めてから投げようとしたゆりかの手が、がしっ、と掴まれ……むしり取り、しぶしぶといった様子で自分のそれと一緒に、きちんとごみ箱へ捨てに行くりさ。
「ご苦労。 うむ」
「ご苦労って、何様のつもりよ……ったく。 ……けど、まさかねぇ? そういうのといっちばんに縁が遠そうだったゆりかが……ねぇ? そうなるとはねぇ……」
「まあね!」
ふんす、と、無い胸を張って……恋心、というよりは好奇心で輝く瞳をりさに向けるゆりか。
「だーってさ、あんの超ミステリアスーな存在だよ? 見た目も1回目も2回目もゲーム通り……春休みに徹夜だったし、もーけっこう忘れてるけど『そうだった』ってゆーのはよーく覚えてるし。 だからさ、ゲームってゆー……どっかのチームの人たちが作った創作上の世界が、どこまで現実に再現されているのかっての、私がなぞってみることで試してみたくって。 あ、もち、響……現実のね? 自身にもすんごくキョーミあるけど」
「違うわよ」
「へ?」
「普段はさ、あんまり外に出さないようにしているみたいだけど……ゲームとかアニメとかマンガとか、そういう世界にだけ興味あるって感じのあんたが。 それもまさか私よりも先にそこまで気になる男子を見つけたって言うのによ。 しかもキャラクターとかじゃなくって……きっかけはそれだったとしても、現実の男の子に興味持つっていうのが、すっっっごく新鮮だからよ」
「………………………………あのー? りさりん??」
「なあに?」
「……私さー、響のこと、そりゃー気になってはいるよ? 気になっては。 だけどりさりんが思ってるのとかじゃなくって、その、えと……好きとかそういう話じゃ。 さっきのだって冗談だし。 あ、なんならりさりんも」
「……。 照れ隠しなあんたもまた新鮮ね。 あのさ? ゆりか、あんた、響さんの話するときの顔……自分で、鏡で見たことある?」
「わっつ?」
ずい、と迫るりさと、すすすと引こうとして……背もたれに阻まれ、いつもの逆の格好になったふたり。
……なお、その光景にクラスの男子諸君と一部の女子たちが注目していたわけだが、話に夢中な彼女たちは知るよしもない。
「……へーい。 その、か・お♥ あんたが『攻略したぞ!』ってスパムみたいに送ってくる写真とか、勧めてくるマンガとかのヒロインたちの顔ってやつ。 わーたーしー、ゆーりーかーのー、そーゆー顔と、とーっても似てるなぁーって思うんだけどなー? へー、ほんっとにそーなるんだー、私初めて見たなーいいものねー実にいいわー! 恋バナ好きな子の気持ち、ちょっとだけ分かるわねー!」
「ぬ、ぐ、ぐ……」
「……………………」
「……………………」
「……ぷっ。 あっははははっ! ……あー、いつものしかえししてやってとっても気分がいいわー」
「……はっ!? お、おのれりさりん! 私を惑わしおって!! くんの! くんの!! 最近調子に乗りおってからに、くんのっ」
ぽかぽかとりさの胸を軽く叩いているその光景に、さらにクラスの注目が集まっている。
それは揺れていた。
揺らしている方のそれらは揺れる余地もなかった。
「……はー、嬉しかったから今までのはチャラにしてあげるわ。 だけど、どっちだったってしても私は応援するわよ? だって、いくらゆりかがちんちくりんだったってしても……告られたりしても当たり障りない感じに断ってたあんただもん、てっきりそのままだぁれとも付き合わないで華の中学生活、いえ、学生生活ってのを華のない画面の向こうとか紙に費やしそうだったんだもの。 いえ、もしかしたらこのままずーっと趣味に生きて……」
「りさりんひっどーい……私、傷ついちゃった」
「嘘ばっか」
「およよ」
「感情が籠もっていないわね。 あと、ソレは古いわ」
「ちっ」
「……けど、気をつけなさいよ?」
「なにをさ?」
「もっと仲良くなるんだったら、距離感には、ね? 響さん……私はまだ1回しか会っていないし、ろくに話もしていないけどさ。 あの子、会話の節々で……なんていうのかしらね、こう、言いたいけど言えない? みたいな、そんな表情してすっごく慎重に言葉選んでる印象だったもの。 もちろん下条さんはまったく気がついていなさそうだったし、友池さんは……気が付いているかもしれなかったけど、でも、よーく見てないと分からないような」
「わーかってるって、そんぐらいは私にだって」
もういちど、鼻息荒く宣言するゆりか。
「だいじょうぶだいじょーぶ。 私、地雷回避しながら、あ、だけどゼッタイに必要なとこだけはうまく聞き出しつつ好感度上げるの、得意だからっ」
「それはゲームの話で……しかも画面の向こうの相手は女の子でしょ? 現実の男の子の好感度の上げ方、知ってるの? 現実でだーれとも付き合ったことないあんたが」
「あ」
「そもそもそうやって威張るなら……なんだっけ? 乙女ゲー? そっちで男の子攻略しなきゃ行けないんじゃない?」
「……!!」
「でしょ?」
「……私、乙女ゲーやる。 とりま帰りに本屋で売れてるそれ系のマンガとかも。 あ、またワゴンも漁って」
「冗談に決まってるでしょ……素直に恋愛ものとか読みなさいって」
もう1回ゆりかの頭上にりさの……今度はわりと手加減のない手刀が、ごつん、と振り下ろされた。
……なお、後日にこの場面のことを聞かれたゆりかが適当な言い訳をしたせいで、さらに脳天にもういちど落とされて身長が縮みそうになったとか。
◇◇◇◇◇
「……ってことがあったのよねぇ。 懐かしいわ。 ねぇー?」
それが、話のターゲットになっていた僕が夏休み、彼女たち4人と遭遇して少しの時機で起きた会話。
らしい。
けどもそれは、この病室で再びに繰り返されていた。
しかも女子特有に会話の全てをほぼ完璧に再現してまでのそれが。
つまりは拷問だ。
うん、さすがにかわいそう……。
「もー、これだけいろいろあった今からしてみれば、とぉーっても些細で平和でかわいらしい場面だったわねー。 あ、そういえば縮んでた? 背。 なーんて冗談よ」
ひととおり……たびたびに止めにかかるゆりかをリーチの差で軽くいなしてずっと話し続け、ようやくに話を終えて……しまったりさは、ぐっと伸びをしている。
で、その話をされてしまったゆりかはと言うと席に突っ伏してなにやらうめき声のようなものを発している。
「ぬぅぅぅぅぅん……ぬぐ」
「ふぅ、すっきりしたわっ」
そして僕はというと……いきなりこんな話をされて、すごく、ものすごく困っている。
だって、いつもみたいな何でもない会話するんだってばっかり思っていたからさ……なんでこんなことになってるの?
それになんで僕を巻き込んだんだ、りさりんは。
「おお……お〝お〝お〝お〝お〝……あがぁぁぁぁ……」
ゆりかは、女の子が出しちゃいけない声というものを上げ続けている。
うん、たしかに出さないほうがよさそうなものだな、これは。
そしてりさりんは、優雅に……冷めた紅茶を飲んでいる。
優雅じゃなかった。
それで僕は困惑している。
「……りさ」
「なんですか?」
そう言えばりさって僕に対してはですますで話すよね……別に良いけど。
「……どうしてそれを、今、この場で、僕を巻き込んで話す必要があったんだ?」
「僕を巻き込んで」ってとこを強調したつもり。
だって変なことに巻き込まれたくはなかったのに。
りさって、秘密なんて文字が脳内に存在しないかがりとは違って、常識的だったはずなのに。
だから言っちゃいけないようなことはしっかりと分かっている子で、だからこそ……こうして他人が悶えるような話は漏らさない、はずなんだって思っていたんだけれども。
「ぬお〝お〝お〝お〝――……りさりんからのふれんどりーふぁいぁ……」
「……それも、当人の前でするなんて」
僕は疑問を投げかけた。
――けれども返ってきたのは「ん?」って感じの、この上ない笑顔だった。
きっと同級生どころか学年の男子を虜にするようなそれなんだろうけれど……僕にとっては、その。
背筋がぞくぞくってする感じの、とっても恐いものに感じるものだった。
うん。
僕は、聞いていた。
「りさりん、怖いんだ」って。
「煽り加減を間違えちゃうと恐ろしいんだ」って。
当の……未だにうめいているゆりかっていう、被害者から。
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