上 下
14 / 45

賢者、温泉に泊まるwith勇者パーティー

しおりを挟む
 ラナの力によって中級ダンジョンでの依頼をなんとかクリアした勇者パーティーは、祝杯を上げる為に酒場に来ていた。
「それにしてもラナちゃんはすごいな!」
 そうね!と口々に残りのパーティーメンバー達もラナを褒める。ラナとしては正直どうでもいい。
「前にいたという患者についてのお話を伺いたいのですが」
「あーあの役立たずのことか」
「あんなゴミラナさんが気にしても仕方ありませんことよ」
「......」
 一気に勇者パーティーの空気が悪くなる。賢者というのはそこまで役立たずだったのだろうか?
 ラナは聞き方を変えることにした。

「賢者は貴方達からみてどれくらい役立たずだったのですか?」
 質問を聞いた勇者と聖騎士は嬉々として賢者を貶める。他人とはいえ、よくここまで言われて賢者は我慢できたものだと感心した。
 やはり早めに処分するのが正解なのかも知れない。そう思ったラナは酒場でパーティーメンバーと別れた後、聖女を自分の部屋に呼んだ。
 

「マギ、レッドドラゴンから貰った鑑定眼はどこまで見えるんですか?」
「そうですね。名前や置かれている地位、そして数秒後の未来を頑張れば見れると言った感じです。ただ未来見るのは疲れるのであんまり使えませんが」
「師匠、未来を見れるようになったのか?すごい!」
「本当に数秒だけだけどね」
「いえ、それでも素晴らしいと思いますよ。数秒先を見れれば失う命を救える可能性もありますし」
 確かにそうだ。ノアさんに限ってあり得ないとは思うが、ノアさんがピンチの時は積極的に使っていこう。

「ところでマギとエルさん温泉は気になりませんか?」
「気にはなりますが今からですと泊まりがけになってしまいますよ?」
「エルも気になる!」
「そこはもうお父様から許可はとってあります。護衛にマギがいると説明したらすぐでしたよ」
「皇帝陛下に信頼されてるのはいいことですが寝る部屋は別ですしノアさんを守るには些か......」
「あら、同じ部屋で寝たらいいではありませんか。私は気にしませんよ」
「師匠と一緒に寝れるの!?」
 ノアさんの悪ふざけとエルが合わさると俺には断れない独特の雰囲気なる。
 ただあり得るかも知れない一縷の望みにかけて俺は意見してみる。
「ノアさん、結婚前のましてや婚約前の女性がそんなことをしたと知られたら大騒ぎになりますよ?」
「マギこそご存知ないのですか?私はこの力のせいで生涯私が気に入った人以外と結ばれないのですよ。なので婚約なんてものは私にはありません」
 俺は負けを悟る。やっぱりこの人には敵わない......。
「はぁ、わかりましたよ。ただ俺は離れたところで寝ますからね」
「ええ。それで大丈夫です」

 俺達はノアさんが予約していた温泉宿まで来ていた。
「嵌められた......」
 俺は膝から崩れ落ちる。なんと宿に温泉は各部屋に1つしかない。これでは好きな時に入ることができない。
「マギ?どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたもこれじゃ俺好きな時に入れません」
「いいではないですか。一緒に入りますか?」
「それだけは勘弁してください。皇帝陛下に首を刎ねられます」
「ふふ、お父様はそんなことしませんよ」
 それはわからない。あれだけ娘を溺愛している陛下のことだ。俺の首が1つや2つ飛んだところで気にしないだろう。
「エルは師匠とノアと一緒に入りたかったけどなー」
 エルの悪魔みたいな言葉が聞こえた気がするが気のせいだろう。

「マギ、温泉というものはとても気持ち良かったですよ」
「次は師匠と入る!」
「そうなんですね。エル頼むから大人しくしててくれないか......」
 俺は1人で温泉に浸かりに行った。
 ちなみに温泉はとてもいいものだったし過ちは起こらなかったと報告しておこう。

「今頃マギとノアは温泉か」
「陛下あの2人に限ってはないと思いますが、過ちが起こった場合はどうしますか?」
「宰相、お互いに気持ちがあるなら認めてしまえば良いではないか。マギは帝国への貢献度も高いしな」
「流石陛下御心が広いですね」
 ひっそりと外堀から埋められていっている賢者に果たして逃げ場はあるのだろうか?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

転生賢者の異世界無双〜勇者じゃないと追放されましたが、世界最強の賢者でした〜

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人は異世界へと召喚される。勇者としてこの国を救ってほしいと頼まれるが、直人の職業は賢者であったため、一方的に追放されてしまう。 だが、王は知らなかった。賢者は勇者をも超える世界最強の職業であることを、自分の力に気づいた直人はその力を使って自由気ままに生きるのであった。 一方、王は直人が最強だと知って、戻ってくるように土下座して懇願するが、全ては手遅れであった。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...