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第六章 運命
第六章 運命 16
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六月上旬――
晴れた昼間、志保達の家には三番裏座と呼ばれる畳敷の部屋があり、正道が姿見に自らの全身を映しながら、黒い足首丈の着物と亀甲文様の入った菫色の大帯、黄色のターバン状の冠に着替えていた。
「ふむ、こんなところか。礼服を出すのは久しいが、まだまだ着られそうじゃな」
正道がそう呟くと、そこへ志保がやって来た。
「お父様、支度が終わりました」
志保は黒髪を入髪(付け毛)や簪と合わせてイナグカラジに結っており、顔に薄く化粧を施している。赤い胴衣、白い足首丈の裙と同色の足袋を身に着け、雁桜笹模様の入った空色の打掛を羽織っていた。
「ど、どうでしょうか?」
「うむ、よく似合っておる。実に美しい出で立ちじゃ。お主が生まれてから今年で18年……決して裕福な暮らしはさせてやれなかったが、よくぞ立派に成長してくれた。志保、お主は平田家の誇りじゃ」
「ありがとうございます、お父様。これまで育てていただいたご恩、一生忘れはいたしません」
志保と正道は、互いに小さく笑みを浮かべ合った。
晴れた昼間、志保達の家には三番裏座と呼ばれる畳敷の部屋があり、正道が姿見に自らの全身を映しながら、黒い足首丈の着物と亀甲文様の入った菫色の大帯、黄色のターバン状の冠に着替えていた。
「ふむ、こんなところか。礼服を出すのは久しいが、まだまだ着られそうじゃな」
正道がそう呟くと、そこへ志保がやって来た。
「お父様、支度が終わりました」
志保は黒髪を入髪(付け毛)や簪と合わせてイナグカラジに結っており、顔に薄く化粧を施している。赤い胴衣、白い足首丈の裙と同色の足袋を身に着け、雁桜笹模様の入った空色の打掛を羽織っていた。
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