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第六章 運命
第六章 運命 10
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翌日、東村――
晴れた昼間、街の中心部では多くの人々が通りを行き交い、賑わいを見せていた。
そんな中、英典と守善、美嘉、守優の4人は、アグーと呼ばれる黒豚四頭をそれぞれ縄に繋ぎ、道を連れ歩いている。
「ありがとうございます、お三方。手伝っていただけて、本当に助かりますよ」
「いえ、こちらこそいつもお世話になってますし、このぐらいなら……」
「一気に4頭も出荷なんて、英典だけじゃ大変よね」
「アグーは体重が重いし力も強ぇから、連れて歩くだけでもいい鍛練になるぜ」
しばらくすると、守優たちは石垣に囲まれた食肉処理場にやって来た。男たちが様々な色の着物と細帯を身に着け、アグーの解体や取引、豚肉の切り分けなどをしている。
英典たちは食肉処理場の門をくぐり、敷地内に足を踏み入れた。
「確か、この辺で引き取りをしてくれるはずなんですが……」
英典が辺りを見回していると、そこへ食肉処理作業員の男たちがやって来る。
「こんにちは、ご苦労様です。アグーの引き取りはこちらで承りますよ」
「ああ、どうも。ありがとうございます」
英典は守優と守善、美嘉の3人から縄を受け取りながら、アグーたちに話し掛ける。
「さあ、お前たち。うまい肉になるんだぞ」
『ブヒッ!?』
アグーたちが青ざめる中、英典は作業員たちに縄を手渡した。
「では、よろしくお願いいたします」
「かしこまりました。あとはこちらでやっておきますので、お次は事務手続きへお進みください」
「わかりました。失礼いたします」
英典たち4人が歩き去っていくと、作業員たちもアグーたちを連れて歩き出す。
「ほら、行くぞ」
『ブヒ~……』
アグーたちはとぼとぼと歩きながら、作業員たちと共に去っていった。
しばらくの後、守優と守善、英典、美嘉の四人は食肉処理場の門をくぐり、目の前を横切る道を右へ曲がって歩き出す。
「それにしても、結局昨日は平田家の一人娘に会えなかったな。康正もほかに情報は持ってねぇらしいし……どうします、兄上?」
「今夜、もう一度辻へ行って探してみようか。昨日は偶然来てなかっただけかもしれないし、清栄さんたちに会えたら話を聞いてみるのもいいかもね」
「平田家の一人娘っていえば、自分も噂に聞いたことがありますよ。娘の名前は志保っていうらしいんですが、辻に出てくるのはごく稀で、普段は若狭町の郊外にある草原で密かにカキダミシをしてるとかなんとか……」
「じゃあ、普段は辻でカキダミシしてないってこと? 道理で辻を探してもいないわけね」
美嘉がそう言うと、守優は口元に不敵な笑みを浮かべた。
「だったら、俺たちも若狭町に乗り込んでやるぜ。たまには、辻以外の場所でカキダミシってのも悪くねぇしな。兄上、早速今日の夜にでも行きませんか?」
「うん、そうしよう。美嘉も来るよね?」
「もちろん行きます! 英典はどうするの?」
「せっかくですが、自分はこの後もアグーの世話がありますので、遠慮いたします。どうぞ、お三方だけで楽しんできてください」
英典が苦笑いを浮かべると、守優は意気軒昂とした様子を見せる。
「っしゃあ! 待ってろよ、平田家の一人娘! 今度こそ見つけてやるぜ!」
守優たちは道の彼方へと歩き去っていった。
晴れた昼間、街の中心部では多くの人々が通りを行き交い、賑わいを見せていた。
そんな中、英典と守善、美嘉、守優の4人は、アグーと呼ばれる黒豚四頭をそれぞれ縄に繋ぎ、道を連れ歩いている。
「ありがとうございます、お三方。手伝っていただけて、本当に助かりますよ」
「いえ、こちらこそいつもお世話になってますし、このぐらいなら……」
「一気に4頭も出荷なんて、英典だけじゃ大変よね」
「アグーは体重が重いし力も強ぇから、連れて歩くだけでもいい鍛練になるぜ」
しばらくすると、守優たちは石垣に囲まれた食肉処理場にやって来た。男たちが様々な色の着物と細帯を身に着け、アグーの解体や取引、豚肉の切り分けなどをしている。
英典たちは食肉処理場の門をくぐり、敷地内に足を踏み入れた。
「確か、この辺で引き取りをしてくれるはずなんですが……」
英典が辺りを見回していると、そこへ食肉処理作業員の男たちがやって来る。
「こんにちは、ご苦労様です。アグーの引き取りはこちらで承りますよ」
「ああ、どうも。ありがとうございます」
英典は守優と守善、美嘉の3人から縄を受け取りながら、アグーたちに話し掛ける。
「さあ、お前たち。うまい肉になるんだぞ」
『ブヒッ!?』
アグーたちが青ざめる中、英典は作業員たちに縄を手渡した。
「では、よろしくお願いいたします」
「かしこまりました。あとはこちらでやっておきますので、お次は事務手続きへお進みください」
「わかりました。失礼いたします」
英典たち4人が歩き去っていくと、作業員たちもアグーたちを連れて歩き出す。
「ほら、行くぞ」
『ブヒ~……』
アグーたちはとぼとぼと歩きながら、作業員たちと共に去っていった。
しばらくの後、守優と守善、英典、美嘉の四人は食肉処理場の門をくぐり、目の前を横切る道を右へ曲がって歩き出す。
「それにしても、結局昨日は平田家の一人娘に会えなかったな。康正もほかに情報は持ってねぇらしいし……どうします、兄上?」
「今夜、もう一度辻へ行って探してみようか。昨日は偶然来てなかっただけかもしれないし、清栄さんたちに会えたら話を聞いてみるのもいいかもね」
「平田家の一人娘っていえば、自分も噂に聞いたことがありますよ。娘の名前は志保っていうらしいんですが、辻に出てくるのはごく稀で、普段は若狭町の郊外にある草原で密かにカキダミシをしてるとかなんとか……」
「じゃあ、普段は辻でカキダミシしてないってこと? 道理で辻を探してもいないわけね」
美嘉がそう言うと、守優は口元に不敵な笑みを浮かべた。
「だったら、俺たちも若狭町に乗り込んでやるぜ。たまには、辻以外の場所でカキダミシってのも悪くねぇしな。兄上、早速今日の夜にでも行きませんか?」
「うん、そうしよう。美嘉も来るよね?」
「もちろん行きます! 英典はどうするの?」
「せっかくですが、自分はこの後もアグーの世話がありますので、遠慮いたします。どうぞ、お三方だけで楽しんできてください」
英典が苦笑いを浮かべると、守優は意気軒昂とした様子を見せる。
「っしゃあ! 待ってろよ、平田家の一人娘! 今度こそ見つけてやるぜ!」
守優たちは道の彼方へと歩き去っていった。
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