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第五章 強者
第五章 強者 15
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翌日、首里・山川村――
晴れた昼間、儀間の家の庭では、賢和がクーシャンクーの型を稽古していた。
儀間が縁側に腰掛けて見守る中、賢和は足を前後左右に踏み出しながら体捌きと呼吸を一致させ、左右の手刀受けや正拳突き、外受け、裏拳打ち、横蹴り、中段貫手突き、手刀打ち、上段前蹴り、下段払い、肘打ち、上段裏突き、鉄槌打ち、諸手十字受け、飛び二段蹴りなどを繰り出していく。
幸允と美那古、清栄の3人も庭に立ち、賢和の様子に目を向けていた。
「賢和の兄貴、今日は随分と気合い入れて型稽古してるよな」
「本気出せばあんなにいい動きできるなんて、さすがは賢和兄さんね」
「きっと、兄貴も何か答えを得たんだ。これも守優とカキダミシしたおかげだな」
清栄がそう言うと、賢和は型の最終動作として足を左右へ肩幅に開き、両拳を自然に下ろして構える。
賢和が自然な立ち方に戻ると、儀間は縁側から立ち上がって賢和と話し始めた。
「ふむ……動きがよくなったな、賢和よ。昔はただ漫然と動いていただけであったが、今は型の理解に努めようとしておる。もう少し丹田を意識すれば、さらに動きがよくなるじゃろう。それにしても、お前さんが自分から型を稽古したがるとは……」
「俺は昨夜、守優とのカキダミシに負けて気づいたんだ。型を通して技を身に付けることが最強への近道だと……ジジイ、あんたの言うことが正しいとわかったんだ」
「フン、ようやくお前さんも理解できたようじゃな。とはいえ、若いもんが型の重要性に気づかないことは世の常、かくいう儂も幼き頃に経験しておる。型の重要性を理解できたことは、武人としての成長の証じゃ。ところで賢和よ、他の武人にも教えを乞いたいと申しておったが、具体的な修業先は決めておるのか?」
「いや、これから考える。いきなり出向いても追い返されるかもしれねぇが、信用を得られるまでは諦めねぇつもりだ。ほかの武術家からも型や変手を教われば、今より多くの技と戦術を習得できる。自分がまだ未熟だってことは百も承知だが、何年掛かろうと俺の覚悟は変わらねぇってことを証明してやるぜ」
「そうか。では、ちょうどよい。これをお前さんに渡しておこう」
儀間は懐から書状を取り出し、賢和に手渡した。
「儂の武術仲間に中山筑登之親雲上義豪という者がおる。元々は儂と共に首里手を修業しておったのじゃが、今は泊に住んでおるそうじゃ。この紹介状を持ってゆけば、きっとお前さんを受け入れてくれるじゃろう。義豪は儂以上に型を熱心に研究しておる。もし、お前さんが本気で型と向き合うつもりならば訪ねてみよ」
「ああ、そうさせてもらうぜ」
「さて、今日の修業はここまでじゃ。皆、よく成長しておる。今後も稽古に励むがよい」
『ありがとうございました!』
賢和たちが儀間に向かって頭を下げると、美那古と幸允、清栄の3人は庭から立ち去っていく。
「先生、明日もよろしくお願いいたします!」
「今日も疲れたな」
「足腰が限界だぜ」
清栄たちが門をくぐって歩き去っていく中、賢和は儀間に背中を向けたまま、突然門の前で立ち止まった。
「ジジイ……いや、師匠。俺は必ず型を極めて、本部の猿を倒してみせる。俺が琉球一の武人になる時まで、達者でいろよ」
賢和が門をくぐって歩き去っていくと、儀間はそれを見送りながら可笑しそうに笑う。
「ホッホッホッ、その意思だけは変わっとらんのう。じゃが、今なら戯れ言には聞こえぬ。楽しみにしておるぞ、我が一番弟子よ」
儀間が口元に小さく笑みを浮かべる中、賢和たち4人は楽しそうに会話しながら道を歩き出した。
晴れた昼間、儀間の家の庭では、賢和がクーシャンクーの型を稽古していた。
儀間が縁側に腰掛けて見守る中、賢和は足を前後左右に踏み出しながら体捌きと呼吸を一致させ、左右の手刀受けや正拳突き、外受け、裏拳打ち、横蹴り、中段貫手突き、手刀打ち、上段前蹴り、下段払い、肘打ち、上段裏突き、鉄槌打ち、諸手十字受け、飛び二段蹴りなどを繰り出していく。
幸允と美那古、清栄の3人も庭に立ち、賢和の様子に目を向けていた。
「賢和の兄貴、今日は随分と気合い入れて型稽古してるよな」
「本気出せばあんなにいい動きできるなんて、さすがは賢和兄さんね」
「きっと、兄貴も何か答えを得たんだ。これも守優とカキダミシしたおかげだな」
清栄がそう言うと、賢和は型の最終動作として足を左右へ肩幅に開き、両拳を自然に下ろして構える。
賢和が自然な立ち方に戻ると、儀間は縁側から立ち上がって賢和と話し始めた。
「ふむ……動きがよくなったな、賢和よ。昔はただ漫然と動いていただけであったが、今は型の理解に努めようとしておる。もう少し丹田を意識すれば、さらに動きがよくなるじゃろう。それにしても、お前さんが自分から型を稽古したがるとは……」
「俺は昨夜、守優とのカキダミシに負けて気づいたんだ。型を通して技を身に付けることが最強への近道だと……ジジイ、あんたの言うことが正しいとわかったんだ」
「フン、ようやくお前さんも理解できたようじゃな。とはいえ、若いもんが型の重要性に気づかないことは世の常、かくいう儂も幼き頃に経験しておる。型の重要性を理解できたことは、武人としての成長の証じゃ。ところで賢和よ、他の武人にも教えを乞いたいと申しておったが、具体的な修業先は決めておるのか?」
「いや、これから考える。いきなり出向いても追い返されるかもしれねぇが、信用を得られるまでは諦めねぇつもりだ。ほかの武術家からも型や変手を教われば、今より多くの技と戦術を習得できる。自分がまだ未熟だってことは百も承知だが、何年掛かろうと俺の覚悟は変わらねぇってことを証明してやるぜ」
「そうか。では、ちょうどよい。これをお前さんに渡しておこう」
儀間は懐から書状を取り出し、賢和に手渡した。
「儂の武術仲間に中山筑登之親雲上義豪という者がおる。元々は儂と共に首里手を修業しておったのじゃが、今は泊に住んでおるそうじゃ。この紹介状を持ってゆけば、きっとお前さんを受け入れてくれるじゃろう。義豪は儂以上に型を熱心に研究しておる。もし、お前さんが本気で型と向き合うつもりならば訪ねてみよ」
「ああ、そうさせてもらうぜ」
「さて、今日の修業はここまでじゃ。皆、よく成長しておる。今後も稽古に励むがよい」
『ありがとうございました!』
賢和たちが儀間に向かって頭を下げると、美那古と幸允、清栄の3人は庭から立ち去っていく。
「先生、明日もよろしくお願いいたします!」
「今日も疲れたな」
「足腰が限界だぜ」
清栄たちが門をくぐって歩き去っていく中、賢和は儀間に背中を向けたまま、突然門の前で立ち止まった。
「ジジイ……いや、師匠。俺は必ず型を極めて、本部の猿を倒してみせる。俺が琉球一の武人になる時まで、達者でいろよ」
賢和が門をくぐって歩き去っていくと、儀間はそれを見送りながら可笑しそうに笑う。
「ホッホッホッ、その意思だけは変わっとらんのう。じゃが、今なら戯れ言には聞こえぬ。楽しみにしておるぞ、我が一番弟子よ」
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