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第五章 強者

第五章 強者 3

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「それまで」

老齢の男がそう言うと、清栄は立ち上がって若い男と話し始める。

「さすがですね、賢和けんわの兄貴。幸允も美那古も俺も、イリクミじゃ兄貴に敵いませんよ」

「フン、当然だ。俺はお前らの兄弟子だからな、そう簡単には負けてやらねぇぜ」

賢和と呼ばれた若い男が口元に不敵な笑みを浮かべると、そこへ美那古と幸允がやって来た。

「やっぱり、儀間門下最強は賢和兄さんで決まりですね」

「賢和の兄貴、そろそろ俺たち三人が相手じゃ物足りないでしょう? どうです? ここは思い切って、儀間先生とイリクミするってのは?」

「ああ、そうだな。確かに今の俺なら、ジジイを倒せるぐらいの実力も示せるかもしれねぇ。そうすりゃあ、俺もこの琉球全土に武名を轟かせる日は近いってもんだ。ジジイがあの世に逝っちまう前に、この勢いで決着つけてやるぜ」

賢和が自信に満ちた様子を見せると、儀間と呼ばれた老齢の男は可笑しそうに笑いながらそこへやって来た。

「カッカッカッカッカッカッ! 賢和よ、お前さんが儂に勝つなんぞ50年早いわ。儂に言わせれば、お前さんなんぞまだ相手とも呼べぬ半人前じゃからな」

「なっ……なんだと、ジジイ! 喧嘩売ってんのか!?」

「お前さんのように自らの才能にかまけて型の探求を怠るようでは、いつまで経っても強くはなれんわい。悔しければ、もっと真摯に型を学んで腕を上げるんじゃな。カッカッカッカッカッカッ!」

儀間が笑いながら背中を向け、沓脱石の上で草履を脱ぐと、賢和は舌打ちする。

「チッ……言ってろ、くそジジイが……」

賢和が苛立ちを露にする中、儀間は縁側から家の中へと足を踏み入れた。
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