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第四章 求道

第四章 求道 41

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1894年、泉崎村――

夜、世璋と守央、康裕の3人は、人通りのない住宅街の道を歩き続ける。

「あの時食った猪汁、マジで旨かったよな~」

「ああ。牧志親雲上と安里親雲上の縁があったおかげで、俺たちも有意義な経験ができたな。王府が解体されてから、沖縄の社会や俺たちの生活も随分と変わったが、変わらないものもある。俺と世璋はまたこうして一緒に仕事ができるようになったし、康裕にもまた会えたしな。俺たち3人の友情は、時代が変わっても健在だ」

「今や琉球の政は完全に大和人のものだが、それでも俺たちが琉球の民であることに変わりはない。たとえこの先何があろうとも、俺たちは琉球人として生き、そして死ぬだけだ」

康裕たちが道の彼方へと歩き去っていく中、夜空には星々が輝いていた。
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