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第四章 求道
第四章 求道 40
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守央がそう言い欠けると、突然康裕は右足を1歩前に踏み込みながら右手で抜刀し、猪の顔面を左から横一線に斬りつける。
猪は顔面の深い切り傷から血を噴き出し、怯んで頭を仰け反らせた。
猪が足を止めると、安里は馬を走らせながら和弓を引く。
「よくやったぞ、康裕!」
安里が猪に向かって矢を放つと、猪は体に矢を突き立てられて踵を返し、安里に向かって走り出した。
さらに、牧志も馬を走らせながら和弓を引き、猪に向かって矢を放った。
しかし、猪は体に矢を突き立てられても怯むことなく、全速力で走り続ける。
安里は馬を走らせながら右手で刀を抜き、すれ違い様に猪を斬りつけた。
猪は体の深い切り傷から血を噴き出し、倒れ込んで力尽きる。
牧志はそこへやって来ると、馬を止めて地面に降り立った。
「ほぉ~、こいつはやはり相当な大物じゃな。さすがは安里殿、示現流で鍛えた太刀筋も見事なものじゃ」
牧志が猪に目を向けていると、安里もそこへやって来て馬を止め、地面に降り立つ。
「いえいえ。今回は運がよかっただけで、私もまだまだ修業不足です。牧志殿こそ見事な弓のお手前、大変感服いたしました」
「ホッホッホッ! 儂もお主と一緒でなければ、これほどの大物は仕留められんかったとも……それにしても、今日は実によい狩りじゃった。どれ、早速新鮮なうちに捌いて、猪汁でもいただくとするかのう」
「いいですなぁ。ぜひ、そういたしましょう」
安里と牧志がそう話している中、守央は2本の釵を腰の後ろに差し、康裕の方を振り向いた。
「すまん、助かった」
「礼を言われる筋合いはない。獲物を仕留めるために剣を抜いただけだ」
康裕は上衣の内側から懐紙を取り出し、刀身に付着した血を拭う。
すると、今度は世璋が2本のトンファーを腰の後ろに差しながら、康裕と話し始めた。
「そういうときは素直に礼を受け取っとくもんだぜ」
「お前たちを助けるつもりでなかったのは事実だ。嘘は言っていない」
「ホントに素直じゃねぇな」
世璋が少し呆れたような笑みを浮かべると、守央は再び口を開く。
「そういえば、自己紹介がまだだったな。俺は新垣筑登之親雲上守央、牧志親雲上の与力だ」
守央がそう言うと、世璋と康裕も互いに自己紹介し合った。
「同じく、平良筑登之親雲上世璋だ。よろしくな」
「摩文仁筑登之親雲上康裕、安里様の与力として湧田から参上した」
「湧田!? マジかよ、俺と守央も湧田に住んでるぜ! なあ、守央?」
「ああ。まさか、康裕も湧田に住んでるとは驚いたな。康裕、これからも俺たち三人で親しくやっていこう。同じ村の住人同士、何かあれば助け合える方がいい」
守央と世璋が嬉々とした表情を浮かべると、康裕は懐紙を上衣の内側に仕舞い、刀を鞘に納める。
「協力の利点に関しては同意するが、今後もお前たちの手を借りるような事態にならないことを祈るばかりだな」
「まあまあ、そんなこと言うなって。困ったときはお互い様だろ?」
世璋が康裕と肩を組むと、遠くから牧志の声が聞こえてきた。
「お~い、お主たち! すまんが、獲物の解体を手伝ってくれんか!?」
それに気づいた守央と世璋、康裕の3人は、牧志たちの方を振り向く。
「わかりました! 今、行きます!」
「よっしゃあ、猪肉だ! 今日の昼飯は豪勢だぜ!」
「フン、悪くはないな」
康裕たち3人は、牧志と安里の方へと歩き出した。
猪は顔面の深い切り傷から血を噴き出し、怯んで頭を仰け反らせた。
猪が足を止めると、安里は馬を走らせながら和弓を引く。
「よくやったぞ、康裕!」
安里が猪に向かって矢を放つと、猪は体に矢を突き立てられて踵を返し、安里に向かって走り出した。
さらに、牧志も馬を走らせながら和弓を引き、猪に向かって矢を放った。
しかし、猪は体に矢を突き立てられても怯むことなく、全速力で走り続ける。
安里は馬を走らせながら右手で刀を抜き、すれ違い様に猪を斬りつけた。
猪は体の深い切り傷から血を噴き出し、倒れ込んで力尽きる。
牧志はそこへやって来ると、馬を止めて地面に降り立った。
「ほぉ~、こいつはやはり相当な大物じゃな。さすがは安里殿、示現流で鍛えた太刀筋も見事なものじゃ」
牧志が猪に目を向けていると、安里もそこへやって来て馬を止め、地面に降り立つ。
「いえいえ。今回は運がよかっただけで、私もまだまだ修業不足です。牧志殿こそ見事な弓のお手前、大変感服いたしました」
「ホッホッホッ! 儂もお主と一緒でなければ、これほどの大物は仕留められんかったとも……それにしても、今日は実によい狩りじゃった。どれ、早速新鮮なうちに捌いて、猪汁でもいただくとするかのう」
「いいですなぁ。ぜひ、そういたしましょう」
安里と牧志がそう話している中、守央は2本の釵を腰の後ろに差し、康裕の方を振り向いた。
「すまん、助かった」
「礼を言われる筋合いはない。獲物を仕留めるために剣を抜いただけだ」
康裕は上衣の内側から懐紙を取り出し、刀身に付着した血を拭う。
すると、今度は世璋が2本のトンファーを腰の後ろに差しながら、康裕と話し始めた。
「そういうときは素直に礼を受け取っとくもんだぜ」
「お前たちを助けるつもりでなかったのは事実だ。嘘は言っていない」
「ホントに素直じゃねぇな」
世璋が少し呆れたような笑みを浮かべると、守央は再び口を開く。
「そういえば、自己紹介がまだだったな。俺は新垣筑登之親雲上守央、牧志親雲上の与力だ」
守央がそう言うと、世璋と康裕も互いに自己紹介し合った。
「同じく、平良筑登之親雲上世璋だ。よろしくな」
「摩文仁筑登之親雲上康裕、安里様の与力として湧田から参上した」
「湧田!? マジかよ、俺と守央も湧田に住んでるぜ! なあ、守央?」
「ああ。まさか、康裕も湧田に住んでるとは驚いたな。康裕、これからも俺たち三人で親しくやっていこう。同じ村の住人同士、何かあれば助け合える方がいい」
守央と世璋が嬉々とした表情を浮かべると、康裕は懐紙を上衣の内側に仕舞い、刀を鞘に納める。
「協力の利点に関しては同意するが、今後もお前たちの手を借りるような事態にならないことを祈るばかりだな」
「まあまあ、そんなこと言うなって。困ったときはお互い様だろ?」
世璋が康裕と肩を組むと、遠くから牧志の声が聞こえてきた。
「お~い、お主たち! すまんが、獲物の解体を手伝ってくれんか!?」
それに気づいた守央と世璋、康裕の3人は、牧志たちの方を振り向く。
「わかりました! 今、行きます!」
「よっしゃあ、猪肉だ! 今日の昼飯は豪勢だぜ!」
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