KAKIDAMISHI -The Ultimate Karate Battle-

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第四章 求道

第四章 求道 31

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牧志と呼ばれた仏顔の男も馬を止めると、槍を手にした男と共に森の中の様子に目を向ける。

「この先にあるのが、噂に聞いた絶好の狩場じゃ。王府の許可を得たのは無論のこと、村や間切の番所へも通達は済ましておる」

「ありがとうございます、牧志親雲上。しばしお待ちを……守央、世璋、お前達は先に森へ入って安全を確認してきてくれ。多幸山から少し離れてはいるが、この辺りにも追い剝ぎや山賊が潜んでいるかもしれん。少しでも異常を感じたら、すぐに戻ってきてくれ」

「わかりました」

「ついでに、獲物になりそうなでけぇ猪も探してやるぜ」

世璋は口元に不敵な笑みを浮かべ、守央と共に森の中へ足を踏み入れていった。

森の中は静寂に包まれ、木漏れ日に照らされている。

世璋と守央は辺りを見回しながら森路を歩いていた。

「この辺りも獣道がいくつかあるな。確かに噂通り、絶好の狩場みたいだぜ?」

「普段から人の出入りも少ないんだろうな。今のところ、追い剝ぎや山賊どころか、村の住民すら――」

守央がそう言い欠けながらハッと目を見開くと、それに気づいた世璋は守央と共に立ち止まる。

「どうした? なんかあったか?」

「見ろ、あそこに人がいる」

守央が声をひそめながら指差した先では、木々に囲まれた広い草原に康裕が立っていた。

この頃の康裕は眼鏡を掛けておらず、黒髪を頭頂部でカタカシラに結っていた。鉄紺の上衣と同色の細帯、白い長ズボン状の琉球袴を身に着け、左腰に打刀を天神差しで帯びている。

世璋と守央は茂みの陰に身を隠しながら、康裕に目を向けた。

「あいつか。一人だけみてぇだな」

「帯刀してるぞ。薩摩人か?」

「刀の差し方が違うな。今の時代、徒歩のときでも刃を下に向けて天神差しにするのは琉球人だけだ。大和人なら刃を上に向けて差すのが普通だぜ。閂差しとか鶺鴒せきれい差しとか落とし差しとか、いろいろ差し方はあるけどな」

「薩摩の奴が琉球人になりすましてる可能性は?」

「確かにそれはあり得るな。あいつらなら、そうまでして俺たちを監視しようとするかもしれねぇ」

「どうする? 一度戻って、牧志親雲上に報告するか?」

「いや、こっちは王府からちゃんと許可もらってんだ。さっさと立ち退いてもらおうぜ」

世璋と守央は茂みの陰から出ると、草原に足を踏み入れて康裕の所へやって来る。

「おい、あんた。ちょっといいか?」

「この狩場は今から俺たちが使わせてもらうことになってる。すまないが、しばらくここから離れていてくれないか? 流れ矢が来る危険性もあるからな」
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