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第四章 求道

第四章 求道 29

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泉崎村――

しばらくの後、守央と世璋、康裕、守優、守善、美嘉の6人は、人通りのない住宅街の道を歩いていた。

守優と美嘉、守善の3人は、守央たちの後をついて歩く。

「いや~、楽しかったな! カキダミシもいいけど、ああいう実戦も緊張感があって最高だぜ!」

「どこが楽しかったのよ? あんたが急に盗賊と戦い始めた時は、こっちもひやひやしたんだから」

「守優は相変わらず胆が据わってるね」

守善が苦笑いを浮かべる中、世璋と康裕も歩きながら話をしていた。

「それにしても、お前が大和人のところで用心棒をやってるとは思わなかったぜ」

「お前たちこそ、大和人のもとで何やら怪しい仕事をしているそうだな?」

「ハハハッ、一応探偵っていう仕事なんだけどな」

世璋が苦笑いすると、今度は守央が康裕と話し始める。

「けど、康裕も元気そうで何よりだな。俺と世璋が泉崎に移り住んでからはめっきり会わなくなって、どうしてるかと思ってたが……」

「お前たちと違って、俺には湧田を離れる理由がない。お前たちこそ、今さらになってわざわざ湧田まで来る理由はないだろう?」

康裕が守央の方に視線を移すと、世璋は2人の会話に口を挟んだ。

「いやいや、そんなことねぇって。俺たちだって、今でも英幸の旦那んとこからちょくちょく野菜貰ったりしてるし、たまには昔を思い出したりして、別に用もねぇのに湧田まで行きたくなったりするんだよ。なあ、守央?」

「ああ。俺と世璋にとっても、湧田は思い入れのある故郷だ。当時はつらいこともあったが、それでも今の俺たちがあるのは湧田での暮らしがあったからこそだ。世話になったみんなには、今でも感謝してる」

守央がそう言うと、世璋はしみじみとした様子で両腕を組む。

「俺たちが湧田に住んでた頃っていえば、まだ廃藩置県前で王府もあった頃だ。懐かしいよなぁ、牧志まきしの旦那が俺と守央を与力(従者)にしてくれたのが17年前で……そういや、康裕と初めて顔合わしたのもそれぐらいの頃だったな」

世璋はいたずらっぽい笑みを浮かべながら、康裕の方を振り向いた。

「思えば、お前との出会い方も最悪だったな」

「フン、奇遇だな。俺もそう思っていたところだ」

康裕が世璋と目も合わせずに無表情のまま答えると、守央は無数の星々が輝く夜空を見上げる。

「康裕と初めて出会ったのは……確か、俺と世璋が牧志親雲上の狩りに付いて行った時か」

守央はそう呟きながら、かつての記憶を思い起こした。
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