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第四章 求道

第四章 求道 28

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「単なる商談のつもりが、相手方と話が弾んでしまってね。ついこんな時間まで長話をしてしまったよ。ところで光永君、夕食はもう済ませたかね?」

「いえ、まだですが……」

「では、これからわたしと一杯どうかね? 久し振りの再会を記念して、2人で酒を酌み交わそうじゃないか。もちろん、あまり時間は取らせないから安心してくれたまえ。明日は君も仕事だろう? わたしも明日は朝早くから商品の取引があるのでね。今夜の酒はほどほどに楽しもうと思っているところだが、君さえよければ少しわたしに付き合ってくれないかね?」

「ええ、お供いたします」

「よし、決まりだな。ちょうどこの辺りにいい店があるんだ。早速行くとしよう」

鮫島は嬉々とした表情を浮かべると、康裕の方を振り返る。

「ああ、そうだ。摩文仁君、今日の仕事はここまでとしよう。また明日からよろしく頼む」

「わかりました。失礼いたします、代表」

「うむ、ご苦労だった」

鮫島がそう言うと、光永は守央と世璋の方を振り向いた。

「守央、世璋。我々もここで解散にしよう。明日は状況整理の後、時雨酒造へ報告に行く。事務所にはいつも通りの時間に来てくれ」

「わかりました」

「この後行く店、旨かったら俺たちにも紹介してくれよ?」

「ああ、明日の感想を楽しみにしていてくれ」

光永が口元に小さく笑みを浮かべると、鮫島は光永と肩を組んで歩き出す。

「さあ、光永君。今宵の酒は私の奢りだ。好きなだけ飲んで楽しんでくれたまえよ」

「ありがとうございます、鮫島殿。ご馳走になります」

光永と鮫島は道の彼方へと歩き去っていく中、守央と世璋は光永たちを見送った。

「さて、俺たちも帰ろう」

「そうだな。腹も減ったし……」

世璋は康裕の方を振り向く。

「康裕、お前も帰るだろ?」

「そうさせてもらう」

「じゃあ、途中まで一緒に帰ろうぜ?」

「フン、好きにしろ」

康裕たちが歩き出す中、守善と守優、美嘉、康正の4人は話をしていた。

「僕たちもそろそろ帰ろうか」

「はい、兄上」

「康正はまだここに残るの?」

「ああ、無事に商品を届けるまでが仕事だからな。さっさと終わらせて、俺もなるべく早く帰りたいぜ。それより、今日は加勢してくれてありがとよ。お前らが来てくれてなかったら、俺たちもやられてたかもしれねぇしな。ホントに助かったぜ。とりあえず、あとのことは俺たちに任しとけ。また明日、私塾でな」

康正がそう言うと、守善と守優、美嘉の3人は口元に小さく笑みを浮かべる。

「うん。また明日」

「じゃあな、康正」

「また明日ね」

美嘉と守優、守善の3人が背中を向けて歩き去っていく中、康正は美嘉たちを見送った。
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