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第四章 求道

第四章 求道 21

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「く、くそっ! なんなんだ、こいつ!?」

盗賊たちが怖気づくと、康正の父は拵袋を開け、黒い鞘に納められた打刀の柄を覗かせた。

「ほう、まだこれだけいるのか。どいつもこいつも骨のなさそうな奴ばかりだが、まあいい」

康正の父は刃を下に向けたまま右手で刀を抜くと、鞘と拵袋を彼の息子に差し出す。

「康正、これを持ってそこから動くな」

「は、はい!」

康正が鞘と拵袋を受け取ると、彼の父は刀の柄を両手で握り、盗賊たちに向かって正眼に構えた。

「全員まとめてかかってこい。1人残らずこの剣の餌食にしてやる」

康正の父が刀の切先を盗賊たちに向けると、盗賊たちはますます怖気づく。

「ひぃっ……!」

「お、おい! どうすんだよ!?」

「ば、馬鹿野郎! ここで引けるわけねぇだろ! 相手が1人増えたぐれぇでビビってんじゃねぇ! あいつの望み通り、俺たちで袋叩きにしてやりゃあいいだけだ! 行くぞ、てめぇら!! あのくそったれを地獄に送ってやれぇえええええっ!!」

盗賊たちが康正の父へ向かって一斉に襲い掛かると、康正の父は盗賊たちの攻撃を刀で防ぎ、あるいは躱しながら様々な軌道の斬撃や突きを繰り出し、次々と盗賊たちを倒し始めた。

守優と用心棒たちは、それぞれ盗賊をうつ伏せで地面に押さえつけながら、康正の父が戦う姿に目を向ける。

「す、すげぇ! あれが康正の親父さんなのか?」

「なんと見事な剣捌きだ! 剣術を修業する士族や王族は琉球にも多くいるが、まさかこれほど剣の扱いに秀でた武人がいるとは……!」

用心棒たちと守優が目を丸くする中、康正の父は刀を袈裟に振り下ろし、盗賊の1人が手にする薙刀の柄を真っ二つに叩き斬ると、すかさず逆裏袈裟に盗賊を斬りつけた。
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