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第四章 求道

第四章 求道 9

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「康正! お前、私塾休んで何やってんだよ?」

「ちょうど僕たちも君の話をしてたところなんだ」

「なんで馬と一緒なの? また仕事?」

「今日は泡盛の輸送隊で用心棒やってんだ。ここ最近、輸送隊が盗賊に襲われることが増えてるらしくてな。手配師のおっちゃんに紹介されたんだ。泡盛の輸送隊を守る用心棒っていえば、昔から武術家の仕事の1つとして有名だし、俺も実戦経験積むために一仕事してやろうってわけよ」

康正と呼ばれた少年が得意げな様子を見せると、守優は目を輝かせた。

「用心棒!? 面白そうじゃねぇか! なあ、康正! 俺にも今度その仕事紹介してくれよ! 強ぇ奴と戦えるんだろ!?」

「ああ。今朝も松川村まつがわむらの辺りで盗賊に出くわしたんだけどよ、全員ぶっ倒せて気分最高だぜ。今度、俺がいつも世話になってる手配師と話すときがあったら、お前のことも紹介しといてやるよ。守善さんも、よかったら一緒にどうですか? ティーの修業にもなるし、給料もよくて一石二鳥ですよ?」

「あ……ああ、うん。考えとくよ」

守善が苦笑いを浮かべると、美嘉は再び康正と話し始める。

「用心棒もいいけど、私塾にもちゃんと来なさいよ? あんたに何かあったんじゃないかって、心配したんだから……」

「大丈夫だって。寛惇先生にも話はしてあるし、この仕事も今日1日で終わりだしな。何もなけりゃ夜には帰れるから安心しろよ」

康正が笑顔を浮かべると、そこへ馬方たちや用心棒たちが現れ、用心棒の1人が康正に声を掛ける。

「康正、そろそろ出発だとさ。さっさと終わらせて、俺たちも早く帰ろうぜ」

「はい、わかりました」

康正はそう言うと、再び美嘉たちと話し始めた。

「じゃあ、そろそろ行くわ」

「明日はちゃんと私塾来なさいよ?」

「わかってるって。じゃあな」

康正は背を向けると、3頭の馬を引く馬方たちや用心棒たちと共に道の彼方へと歩き去っていく。

守善と守優、美嘉の3人は、康正たちを見送った。

「泡盛の輸送隊の用心棒か。武術家が雇われるぐらいだから、本当に危ない仕事なんだろうね」

「兄上、今度俺たちも用心棒やりましょうよ! すげぇ面白そうじゃないですか!」

「やめなって、本当に危なそうな仕事なんだから……けど、康正も元気そうだったし、ちょっと安心したかな」

美嘉が安堵したような表情を浮かべると、守善と美嘉、守優の3人は踵を返す。

「あとは明日康正が私塾に来てくれれば、僕たちの杞憂に終わりそうだね」

「そうだといいんですけど……」

「康正なら大丈夫だろ。あいつは盗賊なんかよりずっと強ぇぜ」

守優たちは再び帰路に就き、道の彼方へと歩き去っていった。
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