上 下
85 / 152
第四章 求道

第四章 求道 9

しおりを挟む
「康正! お前、私塾休んで何やってんだよ?」

「ちょうど僕たちも君の話をしてたところなんだ」

「なんで馬と一緒なの? また仕事?」

「今日は泡盛の輸送隊で用心棒やってんだ。ここ最近、輸送隊が盗賊に襲われることが増えてるらしくてな。手配師のおっちゃんに紹介されたんだ。泡盛の輸送隊を守る用心棒っていえば、昔から武術家の仕事の1つとして有名だし、俺も実戦経験積むために一仕事してやろうってわけよ」

康正と呼ばれた少年が得意げな様子を見せると、守優は目を輝かせた。

「用心棒!? 面白そうじゃねぇか! なあ、康正! 俺にも今度その仕事紹介してくれよ! 強ぇ奴と戦えるんだろ!?」

「ああ。今朝も松川村まつがわむらの辺りで盗賊に出くわしたんだけどよ、全員ぶっ倒せて気分最高だぜ。今度、俺がいつも世話になってる手配師と話すときがあったら、お前のことも紹介しといてやるよ。守善さんも、よかったら一緒にどうですか? ティーの修業にもなるし、給料もよくて一石二鳥ですよ?」

「あ……ああ、うん。考えとくよ」

守善が苦笑いを浮かべると、美嘉は再び康正と話し始める。

「用心棒もいいけど、私塾にもちゃんと来なさいよ? あんたに何かあったんじゃないかって、心配したんだから……」

「大丈夫だって。寛惇先生にも話はしてあるし、この仕事も今日1日で終わりだしな。何もなけりゃ夜には帰れるから安心しろよ」

康正が笑顔を浮かべると、そこへ馬方たちや用心棒たちが現れ、用心棒の1人が康正に声を掛ける。

「康正、そろそろ出発だとさ。さっさと終わらせて、俺たちも早く帰ろうぜ」

「はい、わかりました」

康正はそう言うと、再び美嘉たちと話し始めた。

「じゃあ、そろそろ行くわ」

「明日はちゃんと私塾来なさいよ?」

「わかってるって。じゃあな」

康正は背を向けると、3頭の馬を引く馬方たちや用心棒たちと共に道の彼方へと歩き去っていく。

守善と守優、美嘉の3人は、康正たちを見送った。

「泡盛の輸送隊の用心棒か。武術家が雇われるぐらいだから、本当に危ない仕事なんだろうね」

「兄上、今度俺たちも用心棒やりましょうよ! すげぇ面白そうじゃないですか!」

「やめなって、本当に危なそうな仕事なんだから……けど、康正も元気そうだったし、ちょっと安心したかな」

美嘉が安堵したような表情を浮かべると、守善と美嘉、守優の3人は踵を返す。

「あとは明日康正が私塾に来てくれれば、僕たちの杞憂に終わりそうだね」

「そうだといいんですけど……」

「康正なら大丈夫だろ。あいつは盗賊なんかよりずっと強ぇぜ」

守優たちは再び帰路に就き、道の彼方へと歩き去っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

バーチャル女子高生

廣瀬純一
大衆娯楽
バーチャルの世界で女子高生になるサラリーマンの話

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

浅井長政は織田信長に忠誠を誓う

ピコサイクス
歴史・時代
1570年5月24日、織田信長は朝倉義景を攻めるため越後に侵攻した。その時浅井長政は婚姻関係の織田家か古くから関係ある朝倉家どちらの味方をするか迷っていた。

処理中です...