KAKIDAMISHI -The Ultimate Karate Battle-

第四章 求道

第四章 求道 6

「教養？」

「そう。教養というのは、大人になったときに身に付けておくといいものの1つだ。教養は、いざというときにわたしたちを助けてくれることもあるし、何より人生を豊かにしてくれる。正しい教養を身に付ければ、偏った考えを他人に押し付けたりもしなくなるし、発想力が豊かになって世の中を面白いものにしてくれる。守優君の好きなティーの修業にたとえるなら、型を鍛錬することも武術における教養みたいなものさ。型を知っているからこそ、イリクミやカキダミシではいろんな技を駆使できる。かと言って、型の動きをそっくりそのまま使って戦おうとするのは、本当の意味で型を理解していることにはならない。武術の型は、あくまでも技と鍛錬法を表しただけの知識の寄せ集め……それをどう応用するかが一番重要なのであって、型そのものに囚われていては強くなれない。『心にこだわりがない。こだわりがないゆえに恐れもない』……」

「あっ、それって般若心経の……！」

「『心無罜礙しんむけいげ。無罜礙故むけいげこ。無有恐怖むうくふ』、これが般若心経を教養として学ぶ意義の1つだね。守優君、今日君は般若心経という人生を豊かにするための型を1つ覚えた。これから君がその型を応用してどう生きていくか、それは君次第だよ」

寛惇がそう言うと、守優は書き欠けの般若心経に目を向ける。

「心無罜礙。無罜礙故。無有恐怖……よし、これも修業だ！」

守優が小筆を手にして写経を再開すると、守善は小筆を硯の上に置き、半紙を寛惇に差し出した。

「先生、できました」

「おっ！　早いね、守善君。じゃあ、答え合わせをしよう」

寛惇は守善から半紙を受け取り、数式や文章に目を通し始める。

「うん、いいね。全問正解だ」