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第四章 求道

第四章 求道 3

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先ほど六尺棒を手にして襲い掛かってきた若い盗賊は、他の盗賊たちと共に馬方たちの前に立ち塞がった。

「ヘッヘッヘッヘッヘ、こんな夜更けに泡盛の配達とはご苦労なこったなぁ。早く帰ってぐっすり寝たいだろぉ~? そこの泡盛は俺たちがいただいてやるから、とっとと失せなぁ!」

若い盗賊が不気味な笑みを浮かべると、馬方たちは怯えた様子で後退りする。

「ひぃいいっ! と、盗賊だ!」

「こんな所にまで出るなんて……き、聞いてねぇぞ!」

「お、おおお落ち着け! こ……こういう時のために、武術家たちを用心棒として雇っておいたんだろうが! お……おい、護衛隊!! で、出番だぞ!!」

馬方の1人が声を震わせながら叫ぶと、用心棒たちは馬方たちを守るように立ち、盗賊たちと対峙した。

「ここは俺たちに任せろ!」

「お前らは先に行け! あとで必ず合流する!」

用心棒たちが盗賊たちに鋭い眼差しを向けると、盗賊たちは口元に不気味な笑みを浮かべる。

「おいおい、誰が先に行かせてやるって言ったんだよ!?」

「護衛だかなんだか知らねぇが、数はこっちの方が上なんだぜ!? 全員ぶちのめしてやらぁ!!」

盗賊たちが一斉に用心棒たちへ襲い掛かると、用心棒たちは様々な軌道の突きや蹴り、あるいは多彩な投げ技や関節技を繰り出して次々と盗賊たちを倒し始めた。

盗賊の1人は左足を1歩前に踏み込み、用心棒の1人の左側頭部目掛けて六尺棒を右から横一線に振り回す。

用心棒は腰を落として盗賊の攻撃をかわすと、両腕で盗賊の胴体を抱えて抱分だきわかれを繰り出した。

盗賊がうつ伏せに投げ倒されると、さらに用心棒は両手で盗賊の右手首を逆手に掴み、左脇に盗賊の右上腕を抱えて腕挫腋固うでひしぎわきがためを繰り出す。

盗賊が右肘関節を極められて断末魔を挙げる中、用心棒は馬方たちに向かって叫んだ。

「早く行け!! 立ち止まるな!! 走り続けろ!!」

『は、はひ!!』

馬方たちは恐怖に駆られながら、3頭の馬と共に急いで走り出した。

盗賊たちはそれに気づくと、走り去る馬方たちと3頭の馬を追おうとする。

「おい、奴等が逃げたぞ!!」

「さっさと追え!! 酒は俺たちのもんだ!!」

その瞬間、用心棒たちは盗賊たちを背後から組み伏せると、左右の下段突きや踏み蹴りを連続で盗賊たちに浴びせた。

激しい乱闘が続く中、馬方たちは3頭の馬と共に道の彼方へと走り去っていった。
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