KAKIDAMISHI -The Ultimate Karate Battle-

第三章 真意 後篇

第三章 真意 後篇 23

世璋が見送る中、男は背中を向けて走り去っていった。

世璋は腰付障子を閉めて部屋の中に戻ると、棚の上に茶碗を置き、懐から封筒を取り出して光永に差し出す。

「ほい、旦那。あんた宛てだとよ」

「ああ、感謝する」

光永が封筒を受け取ると、世璋は自分の席に座り、机の上の和罫紙に小筆を走らせ始めた。

光永は小筆を硯の上に置き、封筒に書かれた差出人の名前に目を向けている。

「知り合いの弁護士からだ。先日の松浦商会と村上商会の抗争について、何か進展があったのかもしれん」

光永が封筒を開け始めると、守央と世璋は光永の方を振り向いた。

「確かこの前、光永さんからその弁護士に抗争の和解あっせんを依頼したんでしたよね？」

「ホントは弁護士の判断でさっさと仲裁しちまえばいいんだろうが、あいつらが弁護士の言うこと聞くとは思えねぇしな」

世璋がそう言うと、光永は封筒の中から折り畳まれた手紙を取り出し、横長に広げる。

「まあ、逆を言えば民事紛争の和解あっせんも、当事者同士の話し合いが円滑に進んでくれるとは限らんからな。交渉が紛糾してしまえば、どれだけ当事者に裁量を認めたとしても意味がない」

光永は手紙の内容に目を通した。

「……ふむ、なるほど。一応無事に解決はしたらしい。あの少女からの証言を元に我々が松浦たちを発見したあと、松浦商会と村上商会、少女の一家と長嶺殿が、弁護士を仲介して和解交渉を始めたそうだ。松浦商会と村上商会の間では、それぞれの損害に応じた金額を賠償し合うことで示談が成立……今後は弁護士の監督下で、双方の利権を巡る問題に関して解決を図っていくらしい。さらに、一連の抗争に関して少女の一家と長嶺殿が警察へ通報しないことを条件に、村上商会と少女の間でも雇用契約が解除されたそうだ」

光永の言葉を聞くと、世璋は呆れたような表情を浮かべる。

「なんだよ、結局こうなるのか。話し合いで解決するなら、最初からそうしろってんだよな。まあけど、これであの娘や長嶺の旦那が報復されることもねぇってわけだな」

世璋が安堵したように小さく笑みを浮かべると、守央は光永に問いかけた。

「では、彼女はもう元の生活に……？」

「ああ。今頃はまた、ご両親や長嶺殿と共にいつも通りの暮らしを送っているだろう」

光永は手紙を机の上に置くと、椅子に深く腰掛け直し、背もたれに体を預けた。