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第三章 真意 後篇

第三章 真意 後篇 5

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若い男が後退ると、他の男たちも作業を中断し、光永たちの周りに集まってきた。

「なんだなんだ?」

「どうかしたのか?」

男達がざわざわと騒ぎ始める中、光永は構わず若い男と話を続ける。

「さあ、答えてもらおう。もう一度聞くが、松浦たちをどこへ拉致した?」

「だ……だから、知らねぇって!」

若い男が怒りを露にすると、周りを囲む男たちの中から一際大きな体格の男たちが3人現れた。

「おう、なんだ? 揉めごとか?」

「随分と騒がしくしてるじゃねぇか」

「用がねぇんならとっとと失せろや、てめぇら。仕事の邪魔なんだよ」

3人の男たちが光永と守央、世璋の3人にそれぞれ詰め寄ると、光永は冷静な様子で男の1人と話し始める。

「用ならある。我々は話を聞きに来た。松浦たちがどこにいるのか教えてくれ」

「松浦? ああ。昔俺たちの船を襲ってきた、あのくそ野郎共か。悪いが、俺たちも奴等がどこにいるかまでは知らねぇな」

「とぼけても無駄だ。村上久は女流武術家を使って松浦たちを拉致しただろう? 昨夜も辻村で松浦の部下たちを襲っていたな。我々も実際に現場で目撃させてもらった。松浦商会と村上商会の間では、海運業の利権を巡る抗争が長年続いている。お前たちも何か知っているだろう? 痛い目に遭いたくなければ、知っていることを話してもらおう」

光永がそう言うと、男は左手で光永の胸倉を掴み上げた。

「てめぇ、俺たちを脅すつもりか? こんなことして、てめぇらになんの得があるってんだ? さては、松浦商会に頼まれてここへ来たな? ハッ! だとしたら、随分と損な役回り押し付けられたもんだな」

男は不気味に笑い、冷徹な眼差しを浮かべる。
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