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第三章 真意 後篇

第三章 真意 後篇 3

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同時刻、東村――

光永の屋敷の離れ家には、守央と世璋、光永の3人が集まっていた。

世璋と守央は光永の机の前に立ち、煙管キセルで刻み煙草たばこを吸っている。

「さて、どうしたもんかねぇ……」

「まさか、行方不明になってた長嶺さんの弟子が、松浦商会と村上商会の抗争に絡んでいたとはな」

守央がそう言う中、光永も机の前で椅子に座り、煙管で刻み煙草を吸っていた。

「だが、本当にあの少女が村上に命じられて松浦たちを襲ったのであれば、松浦たちが大して抵抗できなかったことにも合点がいく。あれほど腕の立つ武術家なら、海賊を4人まとめて相手にするなど容易いだろう。海賊と接点のない家出少女がどうやって村上に接触したかはわからんが、いずれにしろ想定より厄介な状況になったことは間違いない」

光永が煙管の火皿に残った灰を灰皿に落とすと、世璋と守央は話を続ける。

「単なる人探しのつもりが、とんでもねぇいざこざに巻き込まれちまったな」

「松浦たちと長嶺さんの弟子……どっちを探すにしろ、もう少し調査しないと解決できそうにないな。どうしますか、光永さん? とりあえず、このまま村上商会の監視を続けますか?」

「いや、そんな悠長なことをしている時間はなさそうだ。もし、本当に村上商会があの少女を使って松浦商会の人間を襲っているのだとすれば、なるべく早い段階で手を打たなければ状況が深刻化する。そうなれば、あの少女を連れ帰るのもますます難しくなるだろう」

光永は机の引き出しから紙縒りを取り出し、煙管の中を掃除し始めた。

世璋は光永と話を続ける。

「じゃあ、どうすんだよ? 俺たちが持ってる手掛かりだけじゃ、松浦たちや長嶺の旦那の弟子を探すのは無理なんだろ? どうやって情報を集めりゃいいんだよ?」

「こうなったら、やむを得ん。できればこういうやり方は避けたいと思っていたが、最後の手段に出るとしよう。今から西村の港にある村上商会の上屋まで行く。奴等から直接話を聞いて、新たな手掛かりを探すぞ」

光永が煙管と紙縒を灰皿の上に置くと、世璋と守央は額に冷や汗を浮かべた。

「はぁ!?」

「ちょ……ちょっと待ってください、光永さん! 確か、直接話を聞きに行ったところで、村上商会が本当のことを喋るとは思えないって話じゃ……」

「申し訳ないが、昨日私が言ったことは一部撤回だ。確かに、ただの聞き込みでは奴等も口を割らないだろう。だが、相手は所詮海賊だ。ならば、こちらも容赦は必要ない。適当に痛めつけて、有力な手掛かりが得られるまで尋問しよう。どんな手を使ってでも奴等から情報を聞き出すぞ」

光永は椅子から立ち上がり、背後のコートラックに掛けられた中折れ帽を被った。
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