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第二章 真意 前篇

第二章 真意 前篇 24

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「わからないけど、カキダミシっていうよりは喧嘩になってるみたいだ! とにかく、父上と世璋さんを呼ばないと……!」

守善がそう答えると、守優は驚喜しながら意気込んだ。

「すげぇ! あいつ、1人で5人も相手にしてるぞ! 自分達だけ楽しみやがって、ずるい奴等だぜ! 俺も混ぜろぉおおおおっ!!」

守優が全速力で草地の斜面を駆け下りると、美嘉と守善はそれに気づいた。

「えっ!? ちょっと、守優!?」

「守優、1人じゃ危険だ! 行かない方が――」

守善がそう言い欠ける中、守優は男達と少女へ向かって全速力で砂浜を走り出す。

守善は守優の背中に目を向けながら、険しい表情を浮かべた。

「くそっ、このままじゃまずい……! 美嘉、僕は父上と世璋さんを呼んで来る! それまで守優のこと見といて!」

「わ、わかりました!」

美嘉がそう答えると、守善は踵を返して小さな林の中へと走り去っていった。

少女があっという間に4人の男達を蹴り倒すと、最後に1人残った男は少女の顔面目掛けて右拳を振り下ろす。

「このくそったれがぁあああああっ!!」

その瞬間、少女は左手で男の右拳を左斜め上へ受け流しながら掴むと、右正拳上段逆突きを男の顔面に食らわせた。

男が頭を仰け反らせると、少女は続けて左中段廻し蹴りを男の腹に食らわせる。

男の体がくの字に曲がると、少女は右上段廻し蹴りを男の左側頭部に食らわせ、男達全員を蹴り倒した。

守優はそこへ現れると、走る勢いを利用して地面を蹴り、少女目掛けて右飛び横蹴りを繰り出す。

少女はそれに気づくと、咄嗟に後ろへ飛び退いて守優の蹴りをかわし、着地して守優を見据えた。

守優は波打ち際近くに着地し、口元に不敵な笑みを浮かべた。
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