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第二章 真意 前篇

第二章 真意 前篇 15

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「とはいえ、長嶺さんの言い分も理解はできる。琉球では昔から型ばかり稽古する武術家が多いが、型を通して基礎的な体の使い方を学ぶことは重要だ。まあ、それを初心者が納得できるように説明するのが難しいわけだが……さて、問題は娘がどこへ行ったかだな。型稽古ばかりやるのが嫌で組手がしたいっていうなら、別の武術家の所へ行ってる可能性も高い。組手の指導に定評のある武術家なら、俺も何人か心当たりがあるが……」

「そんなめんどくせぇやり方するか? 武術家の中には人を選り好んで、本当に信用できる弟子にしかティーを教えねぇ奴だっているんだぜ? 第一、娘が報酬を払えるほどの金を持って家出したとは考えにくいし、武術家だってタダで指導するとは思えねぇ」

「娘の両親の話では、親戚や友人の家に立ち寄った様子も見られない。少女が1人で野宿なんてしようものなら、目立って警察に保護されるんじゃないか?」

「確かに、普通の街中や田舎だったら、女1人で夜の外出はちょっと変かもしれねぇな。要するに、娘は誰かと組手がやりたくて家を飛び出したんだろ? 単に自分の腕を試してぇんだったら、辻で相手探してカキダミシするのが一番手っ取り早いぜ」

「カキダミシか。あり得るな」

「夜の辻なら、女が一人で歩いてたってさほど目立たねぇ。店に住み込みで雇ってもらえれば、寝床も確保できるしな。娘は今夜もカキダミシするかもしれねぇし、俺たちも夕方頃に辻へ行ってみようぜ」

「目星が付いたとはいえ、俺たち2人だけであの街を調べるのは時間がかかりそうだな。とりあえず、光永さんと長嶺さんには話をしておこう。長嶺さんも武術家なら、辻でカキダミシが盛んなことは知ってるかもしれない」
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