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第二章 真意 前篇

第二章 真意 前篇 13

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「ハッ! だったら、どうしてすぐに俺たちを殺さなかった!? てめぇは結局ビビって殺しも出来ねぇ、ただの甘ちゃんだろうが!」

「フン、お前は本当に頭の悪い奴だな、松浦。俺はな、お前と取引するためにわざわざお前らを生かしておいてやってるんだよ」

「取引だと?」

「簡単な話だ。お前らの命を保証する代わりに、松浦商会は俺達村上商会の傘下に入る。今後はお前らの売上金を全て俺たちが管理する代わりに、お前らも今まで通り商売が出来る。どうだ? なかなかいい話だろ?」

「てめぇらの軍門に下れってのか?」

松浦は上体を起こすと、鬼のような形相を浮かべながら村上を睨み付ける。

「ふざけんじゃねぇ、このくそ野郎が!! てめぇらにこき使われるぐれぇなら、釜茹にされて死んだ方がよっぽどましだ!! 誰がてめぇの話になんざ乗ってやるか!! どうせ今頃、俺の部下たちがてめぇらを探し回ってるはずだ!! 俺たちをここに連れてきたことがバレるのも時間の問題だぜ!! そうなりゃあ、死ぬのはてめぇらの方だ!! てめぇらの五体バラバラにして、フカの餌にしてやるからなぁ!! 覚悟しときやがれ、このくそったれが!!」

松浦が激昂すると、村上は口元に不敵な笑みを浮かべた。

「チッ、お前の馬鹿さ加減にはうんざりするぜ。それがお前の答えってわけか。話にならねぇな。まあ、いい。お前のアホな部下共が俺たちを探し回ってるなら、この際好都合だ。松浦商会の下っ端連中全員を直接懐柔してやる。抵抗しようもんなら力ずくで従わせる。そうすれば、もうお前も用済みだ。とはいえ、松浦商会の下っ端連中を懐柔させるなら、お前らを人質として利用しながら交渉するのが一番いいやり方だ。しばらくはお前らを生かしておいてやる方が、俺たちにとっても都合がいい。よかったなぁ、松浦。少なからず今日死ぬことはなくなったぜ?」

「て、てめぇ……!」

「せいぜい今の内に遺言でも考えておくんだな。もうすぐ松浦商会は、俺たち村上商会の下部組織として新たに生まれ変わる。お前らの命もそれまでだ。おっと、逃げようだなんて考えるなよ? 外には見張りを置いてあるならな。妙な真似したら、また痛い目見ることになるぜ。じゃあな、くそ野郎共。大人しくしてろよ?」

村上は男たちと共に踵を返し、部屋から立ち去っていった。
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