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第一章 初戦

第一章 初戦 28

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泉崎村――

カキダミシが終了した後、守優と守善、美嘉、守央、世璋の5人は、人通りの無い住宅街の夜道を歩いていた。

守優と守善、美嘉の3人は、歩きながら楽しそうに会話している。

「いや~、カキダミシって最高に面白おもしれぇな! ティーの修業にこんな楽しいもんがあるなんて知らなかったぜ!」

「得るものが多くて有意義だったね」

「次にカキダミシするときも勝ちたいし、明日からもっと修業頑張らないと……」

美嘉がそう言うと、守優はさらに話を続ける。

「なあ、美嘉。俺にもお前の技教えてくれよ。今日の美嘉の動き、すげぇかっこよかったぜ。俺もお前みたいにかっこいい技やってみてぇからさ、今度教えてくれよ」

「しょ、しょうがないわね。そこまで言うなら、教えてあげてもいいけど……」

美嘉が頬を赤らめて視線を逸らす中、守優たち3人の後ろを歩く世璋と守央も話をしている。

「美嘉とお前の息子2人もカキダミシが気に入ったみたいだな。お前の提案に乗って正解だったぜ」

「俺も久々に清栄たちと会えて良かった。美那古と幸允の近況も聞けたしな」

「今度カキダミシするときは、俺も一暴れさせてもらうぜ。立会人ばっかやってても、なんとなく物足りねぇしな」

「ああ。俺も久々に誰かとカキダミシがしたいところだ」

「なら、手始めに俺とやるのはどうだ? 17年前の決着、そろそろつけてくれてもいいんじゃねぇか?」

「今度にしてくれ。お前とはいつでもできるだろう?」

「おいおい、また“今度”かよ。この前もそう言ってたぜ?」

「そうだったか?」

「まったく……お前の言う今度ってのは、いったいいつなんだよ?」

世璋が呆れたような笑みを浮かべると、彼らは道の彼方まで歩き去っていった。
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