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第一章 初戦

第一章 初戦 9

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少女が口元に笑みを浮かべると、英典と呼ばれた男は息を切らしながら立ち上がる。

「ま、待ってください。美嘉殿、少し休憩の時間をいただけませんか? 自分、もうへとへとでして……」

「しょうがないわね。まあ、あんたはまだ動きに慣れてなさそうだし、少しは配慮してあげるわ」

美嘉と呼ばれた少女が両手を腰に当てると、そこへ世璋達四人がやって来た。

「美嘉、英典、帰ったぞ」

「おかえりなさい、父上様!」

「世璋先生、おかえりなさいませ! ちょうど今、美嘉殿と組手をしていたところです」

「2人共、頑張ってるみてぇだな。明日は俺が新しい技教えてやるから、楽しみにしとけよ」

世璋が口元に小さく笑みを浮かべると、美嘉と英典は嬉々とした様子を見せた。

「やったぁ! 父上様、ありがとうございます!」

「明日もご指導のほど、よろしくお願いいたします!」

英典と美嘉が世璋に頭を下げると、守央と世璋は再び話し始める。

「弟子を取ったのか?」

「まあな。美嘉にとっては年上の弟弟子だ。俺がいねぇ時も美嘉の相手してくれるし、英典も姉弟子から技を習えてちょうどいいぜ」

世璋がそう言うと、英典は守央の方を振り向いた。

「守央様、挨拶が遅れて申し訳ございません。自分、許田きょだ英典と申します。湧田村わくたむらから参りました。守央様のことは、世璋先生から常々聞いております。どうぞ、よろしくお願いいたします」
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