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第一章 初戦

第一章 初戦 7

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「安心しろ。俺達は私立しりつ探偵だ。警察じゃない。俺達の仕事は、盗まれた壺を取り戻して依頼人に返すことだ。これから俺達は、あんたを依頼人と引き合わせる。今回の件について直接話し合ってくれ。もし依頼人と和解出来れば、あんたを警察に引き渡す必要も無い。お互いが納得して事を収められるように俺達も協力してやるから、今は大人しくしてくれないか?」

「あ、ああ」

男が目に涙を浮かべると、世璋も割れた壺が包まれた風呂敷を手にして、そこへ駆けつけた。

「守央、あの親子とは後で話つけるってことで、一旦帰ってもらったぜ。そいつと子どもがぶつかって壺が割れた件は、とりあえず依頼人との話し合いに決着がついてからの方がいいだろ?」

「ああ、そうだな。まずは、このまま依頼人の所へ行こう。守善、守優、悪いがそいつを連れて一緒に来てくれ」

「わかりました」

「おっちゃん、立てるか? 一緒に行こうぜ」

「お、おう。悪いな、坊主」

男は守優と守善から手を借りて立ち上がると、守央達の後に続いて歩き始めた。
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